ソウル江南区サムソンドンでロースタリーカフェを運営していたA氏は9日にこう語った。2012年に開業したこのカフェは、KOSPI指数に合わせてコーヒー価格を設定する独特のコンセプトで話題を集めた。KOSPI指数が今年6月に取引時間中に9300台まで突破し、異色のマーケティング事例として改めて取り沙汰された。
しかしこのカフェは今月初めに店を閉めた。原因は大きく3つだった。まず政策資金の融資元金の返済が始まり、追加で資金を調達する窓口はなかった。さらに原材料費と人件費は上がり続けた。
景気低迷で商圏内の流動人口さえ減った。こうした状況でKOSPI指数に連動してコーヒー価格を引き上げることもできなかった。このカフェは昨年末に独自の「サーキットブレーカー」を宣言し、コーヒー代を3500ウォンに固定してきた。
A氏は「KOSPI指数に合わせて際限なく引き上げることはできなかった」とし「商圏や周辺店舗のコーヒー価格を考えると3000ウォン台を維持すべきだった」と説明した。
A氏だけの話ではない。高物価と高金利、内需低迷が重なり、自営業者の廃業が相次いでいる。国税庁の国税統計によると、今年4月の全国のコーヒー飲料店は9万3551カ所である。昨年4月の9万5250カ所から1700カ所超が店を畳んだ。
とりわけ昨年は新規事業者に対する廃業者の比率が83.5%となり、2013年(84.0%)以降で最も高い水準を記録した。新規事業者は116万8273人で5年連続の減少、廃業者は97万5681人と集計された。廃業理由は「事業不振」が49万1966人で半分(50.4%)を占めた。
長期にわたり営業していた所も耐えられなかった。昨年、5年以上営業した後に廃業した事業者は31万7406人で、関連統計の作成が始まった2005年以降で最多だった。全廃業者の32.5%に当たり、店を閉めた事業者3人のうち1人は5年以上営業した自営業者だった。
自営業者の廃業が相次ぐ可能性も小さくない。韓国信用データによると、今年1四半期(1〜3月)の個人事業主の貸出延滞(利子・元金)額は14兆6000億ウォンで、前四半期より12.6%急増した。
米ドルに対するウォン相場が1500ウォンを上回り、輸入原材料を使う店は負担が大きいと吐露した。家賃や配達プラットフォーム手数料などのコストも上昇傾向だ。
人件費もさらに上がる見通しだ。最賃委員会(最終的に最低賃金を決める韓国の政府機関)が2027年に適用する最低賃金を審議するなか、労働界は前日に9次修正案として時給1万1220ウォンを提示した。今年の最低賃金(1万320ウォン)より8.7%の引き上げだ。月換算額(209時間基準)は労働者1人当たり約18万8100ウォン、年間では約225万7200ウォン増える。経営界は1万530ウォンを提示し、土壇場の交渉を続けている。
客離れを懸念して値上げも難しいなか、増えたコスト負担はそのまま自営業者にのしかかる。韓国経済人協会の「2026年自営業者の経営環境認識調査」によると、自営業者3人に1人(34.0%)の月平均所得は最低賃金(月215万6880ウォン)にも満たないことが分かった。
ソウル東大門区でサラダ店を運営する店主B氏は「サラダに必ず入る卵など基本的な原材料費が大きく上がったが、価格は容易に上げられない」とし「客も減っており、長く商いを続けてきた人たちも持ちこたえるのは容易ではない」と述べた。