「参政権が止まった場所を記録する。」
第9回全国同時地方選挙(6・3地方選)で発生した投票用紙不足事態を糾弾する学生の声を集めたホームページ「一票の記録」のトップ画面に記された文言である。ここでは全国212大学から出た大字報と時局宣言392件を一目で見られる。最近は高校の大字報と時局宣言文も追加されている。
「一票の記録」を作った人物は市民団体の活動家でも、政界の関係者でもなかった。開発業務をする入社3年目の会社員イ某(28)氏だ。イ氏は6・3地方選の翌日の4日夕方、ソーシャルメディア(SNS)を通じ、大学街で投票用紙不足事態を批判する声明が相次いで上がっているという事実に接した。
イ氏は「この声が散って消えてはならないと思った」と語った。イ氏はその夜すぐに作業に入った。4時間でホームページを作って公開し、週末の間ずっと睡眠を削りながら投稿機能と検索機能を補完した。学校名を検索すると、いつ、どのような内容の声明が出たのかも見られるようにした。
反応は素早く広がった。公開から1週間余りで約4万人が「一票の記録」を訪れた。イ氏は集まった声明書の要求事項も自ら分類した。392件の声明で最も多く登場した要求は再発防止策の樹立だった。全体の64%に当たる251件で関連内容が盛り込まれた。続いて選挙管理委員会・当局への糾弾が49%(191件)、真相究明が38%(150件)と集計された。再選挙・再投票の要求は6%水準だった。
イ氏がこのホームページを作った理由は「何であれしなければならないという気持ち」だとした。ただし今回の事態が特定陣営の利害や政争の素材としてのみ消費されてはならないと強調した。ホームページを白と黒などの無彩色で構成したのもそのためである。
イ氏は「今回の事態は基本権の問題であり常識の問題だ」とし「特定陣営に有利か不利かという話ではなく、有権者が一票を適切に行使できるよう選挙管理をどう正すかに力を合わせてほしい」と述べた。
イ氏に11日会った。イ氏は名前と顔が知られることは望まないとした。以下、一問一答。
─「一票の記録」を作ったきっかけは何か。
「6・3地方選の翌日にSNSで大学生が出した声明書が続けて目に入った。これを集めたアーカイブサイトがあればいいと思った。最近は情報消費の速度があまりにも速く、簡単に蒸発してしまうではないか。誰かが作ってくれるのを待たずに自分でやろうと思った。その夜すぐ作り始め、午前1時ごろまでの4時間で公開した。その後、合間を縫って補完作業をした。」
─翌日は出勤しなければならず、容易ではない作業だっただろう。
「とにかく腹が立った。投票用紙が不足して投票できないというのは話にならない。いくら理解しようとしても常識外れだった。選管は民主主義を守るためにある組織ではないのか。その民主主義のために最も重要な参政権がずさんに管理された。何であれしなければという思いが湧いた。だから週末まで睡眠を削って作った。」
─普段から政治に関心が高かったのか。
「政治に大きな関心があった方ではない。支持する政党も特にない。生きてきて友人に手を引かれて集会に一度出た程度だ。むしろ政界で互いに攻撃し合う姿ばかり見てきたので疲労感が大きく、距離を置いてきた。性格も内向的な方だ。ところが今回は政治的傾向とは別におかしいと感じた。投票をしたくてもできない状況は誰にでも起きてはならないことだと思った。」
─大字報・時局宣言の投稿は多く入っているか。
「最初に『一票の記録』を開いて5日で150件程度の声明書の投稿が入った。現在は392件を整理しておいた。大学だけでなく、いくつかの高校でも投票用紙不足の問題を批判する大字報を出したという投稿があった。
時折、大学街で大字報が消え、若年層が政治に無関心だなどと言うが、今回集まった声明書だけで392件だ。無関心だとは見難い。意見を表明する方式が変わっただけで、若者が政治や社会問題を感じ取る感覚が失われたわけではないと考える。」
─サイトのメニューを外国語でも見られるようにした。
「『一票の記録』を作って、どんな人々が入ってくるのかトラフィックを見たところ、米国や台湾、香港などからも接続があった。声明文自体を翻訳すると意味が歪曲される可能性があると見た。そこでサイトのメニューと分析内容程度だけを英語、中国語、日本語に翻訳した。より広く知られてほしいという思いがあった。」
─今回の投票用紙不足事態をどう規定するか。
「行政上の錯誤やずさんな行政程度で終わらせる事案ではないと考える。世界の民主主義国家の中で投票用紙が適切に管理されず問題になる事例がいくつあるだろうか。選管の責任者はもちろん、国民もこの問題の深刻性を正しく感じるべきだ。小さな不信が結局は石を割る亀裂へと大きくなりうる。」
─不正選挙を主張する声も大きくなった。
「多様なスローガンや解釈が出るのは自由民主主義体制では当然のことだ。ただし今回の問題が政争の道具としてだけ消耗されないことを強く望む。
『一票の記録』に集まった声明を分析すると、大学生が最も多く要求したのは再発防止策、選管改革、真相究明だ。肝心の再選挙や再投票の要求は6%水準だ。核心は『誰が勝ったのか』ではなく『なぜ有権者の一票が適切に保障されなかったのか』だと見る。」
─ホームページを白と黒を中心に作った理由もあるのか。
「今回の事態を特定陣営の色に見せたくなかった。そこで意図的に無彩色を使った。この問題はどちらかに有利か不利かという話ではなく、有権者として一票を行使できるかどうかの問題だ。基本権の問題であり、常識の問題だと考える。」
─今後、望むことはあるか。
「現在韓国の大きな問題の一つが、常識的問題でさえ陣営や世代で分かれて解釈することだと考える。正しいか誤っているかよりも先にどちらの側かで消費される場合が多い。今回の大学生の声明も政治的に消費されないか心配だ。
陣営分断ではなく、今後は個々人の生活のための言論を作ることにもっと力を注いでほしい。また、こういう時こそ各自が市民としてやるべきことをやるべきだと思う。声を上げ、また多く聞いてくれることを望むばかりだ。」