かつてタクシー業界の「VIP」と呼ばれた模範タクシーが立場を失いつつある。過去には広い車両と熟練ドライバーのサービスで高級移動手段の象徴のように受け止められてきたが、プラットフォーム基盤のプレミアム黒(高級タクシー)車両が急速に増え、地位が狭まっている。一般タクシーより高いものの、高級タクシーほど明確なプレミアム体験を提供できていないとの評価も出ている。
27日ソウル市によると、今年1月末基準でソウル登録タクシー7万1615台のうち模範タクシーは573台にとどまった。全体の0.8%水準である。ソウルの模範タクシーは2023年748台、2024年707台から今年は573台へ減少した。これに対し高級タクシーは同期間に2502台から2599台、今年は3028台へ増えた。全タクシーに占める比率も4.2%まで上昇した。
◇料金は一般タクシーより高いが…プレミアムは高級タクシーに押される
模範タクシーは一般の中型タクシーより高い料金を受け取る代わりに、熟練ドライバーと安定的な運行サービスを掲げてきた。国土交通部(韓国の国土交通省)などによると、排気量1900cc以上、乗車定員5人以下の車両は模範タクシーとして運行できる。現代自動車グレンジャー、KIA K8のような準大型セダンが模範タクシーによく使われる理由である。
ソウル基準の模範タクシーの初乗りは3㎞で7000ウォンだ。一般中型タクシーの初乗り4800ウォンより約1.5倍高い。その後の料金も、一般中型タクシーは131mまたは30秒ごとに100ウォンずつ上がるが、模範タクシーは151mまたは36秒ごとに200ウォンずつ上がる。
模範タクシーが一般タクシーと最も大きく異なる点はドライバー資格である。個人タクシーを5年以上無事故で運転した経歴などがあってこそ模範タクシーを運行できる。タクシー業界では「模範タクシーの競争力は結局ドライバーの熟練度と安定感だ」と語る。
しかし消費者が体感する「プレミアム」の基準は変わった。2015年11月に高級タクシーが導入されたためだ。高級タクシーは模範タクシーのように一般タクシーより高水準の車両とサービスを提供するが、車両基準がより高い。排気量2800cc以上の車両を使わなければならない。現在はジェネシスG90、カーニバルリムジン、スターリアリムジンのような高級セダンや大型車両が主に使われている。
利用方式も異なる。模範タクシーは道で直接拾えるが、高級タクシーは呼出・予約制で運営される。プラットフォームごとに差はあるものの、初乗り距離がないか0.75㎞前後と短い場合が多く、その後の走行距離・時間に比例する料金も模範タクシーより概して高い。それでも利用者の立場では、車両の大きさや車内の快適性、予約システムなどを考慮すると、高級タクシーをより「プレミアム」に近いサービスとして受け止める場合が多い。
海外出張が多く模範タクシーをよく利用したという会社員A氏は「空港で模範タクシーに時々乗ったが、最近は一般の中型セダンのように感じられる車もあり、トランクも大型の高級タクシーより狭いと感じる」とし、「ドライバーによってサービスの差もあるので、少し前からはカカオベンティやタダプラスのような高級タクシーを利用している」と述べた。
オンラインの反応も割れる。「模範タクシーはドライバーのサービスが安定的で安心できる」という意見がある一方で、「アプリで呼ぶ高級タクシーの方が便利だ」「車両の差が大きい」「模範タクシーは一般タクシーとの体感差があまりない」という評価も少なくない。
◇ソウルの模範タクシーは573台だけ…「客が車を見て乗車を断る」
ソウル内の模範タクシーが500台余りにまで減るほど、現場で感じる危機感も大きい。模範タクシーを運営し2年前に一般の中型タクシーへ切り替えた60代のタクシードライバー、姓イの人物は「模範タクシーを運転していた時、1日に10人を超える客が車を見て乗車を断った」とし、「そのようなことを続けて経験すると運転する意欲が落ちた」と語った。続けて「周囲でも模範タクシーをやめ、一般タクシーへ戻るドライバーがいる」と述べた。
模範タクシーが直面する困難は価格とサービスの「中間地帯」にある。一般の中型タクシーより料金は高いが、高級タクシーのように車両グレードや予約の利便性で明確な差別性を与えられていないという指摘だ。過去には「模範」という名称自体が信頼と高級イメージを与えたが、今や消費者は車両グレード、アプリ呼出の利便性、予約体験まで併せて比較する。熟練ドライバーという強みだけでは利用者をつなぎ留めにくくなった格好だ。
◇マイバッハまで登場…生存のため高級化に動く模範タクシー
模範タクシー業界も変化に乗り出している。最近ではK9、ジェネシスG90のような大型セダンはもちろん、スポーツユーティリティビークル(SUV)へ車種を広げる事例が出ている。一部は高級輸入車も投入している。
オンラインコミュニティでは、3億ウォンクラスとされるメルセデス・ベンツのマイバッハS580模範タクシー乗車記が話題となった。BMW iX3、トヨタ・クラウンなど輸入車を活用した模範タクシーの目撃談も相次いでいる。
プラットフォーム連携も強化している。一部の模範タクシーは一般の予約制だけでなく、カカオモビリティーの「カカオT」アプリを通じた模範タクシー自動配車サービスとも連結されている。道で偶然つかまえるタクシーというイメージから脱し、呼出市場の内側へ入ろうとする試みだ。
タクシー業界関係者は「過去には模範タクシーという名称だけでも信頼と高級イメージがあったが、今は消費者が車両とアプリの利便性、予約体験まで全て比較する」と述べ、「単に高いタクシーという認識だけが残れば、競争力の維持は難しい」と語った。