金容範青瓦台政策室長が打ち出した「国民配当金(仮称)」構想が株式市場と財界に大きな波紋を呼んでいる。人工知能(AI)時代の半導体産業で発生する「超過利益」を社会全体に還元する方案を議論すべきだという趣旨の発言が伝わると、市場では政府が企業利益を事実上追加で取り立てようとしているのではないかという解釈が広がった。
金室長が国民配当金に言及したフェイスブック投稿にはコメントが300件余り付き、賛否両論が巻き起こった。昨年6月の李在明政府の発足以降、金室長が上げた投稿の中で最も熱い反応だった。13日現在、当該投稿のコメント欄は閉じられている。空白含む7443字、A4用紙5枚分の分量に達する金室長の投稿を基に、国民配当金構想が出てきた背景と主要争点を点検した。
◇国民配当金構想に株式市場が動揺
金容範青瓦台政策室長は11日夜、フェイスブックに「AI時代の超過利益の一部を国民全体に還元すべきだ」とし、「国民配当金」構想を示した。若者の起業、農漁村のベーシックインカム、AI教育支援など活用先を議論しようと述べた。
市場はすぐに敏感に反応した。投資家は政府が半導体企業の超過利益を新たな形の分配原資として活用しようとしているのではないかと受け止めた。ブルームバーグは「市場参加者が金室長の発言意図の解釈に努める中、KOSPI指数が12日、取引時間中に急落した」とし、「その後、超過税収を活用する趣旨だという説明が出ながら下げ幅がいくぶん縮小した」と伝えた.
論争の核心は、金室長が投稿で「超過税収」と「超過利益」を混用した点である。金室長は「半導体産業が従来の景気循環型産業から脱し、構造的に超過利益を創出し得る」と主張しつつも、その結果発生する莫大な税収をどう活用するか悩むべきだと述べた。しかし市場では、これを単純な税収活用の次元を超え、企業利益そのものに対する分配議論として受け止めた。
財界と投資家は「企業の超過利益はまず株主と役職員、そして将来投資のために使用されるのが常識だ」と反発した。金室長のフェイスブックには「法人税だけでも企業は十分に社会に寄与している」「R&D投資競争が真っ只中なのに、なぜ分配の話から出るのか」というコメントが続いた。一部の利用者は「社会主義的発想ではないか」という荒い反応まで示した。
◇「半導体のスーパー好況を前提」した論争…持続可能性は不透明
金室長がこのような構想を持ち出した背景として、半導体産業の超大型好況の可能性が挙げられる。証券街ではAIサーバーと高帯域幅メモリー(HBM)の需要急増により、サムスン電子とSKハイニックスが過去と比較できない水準の利益を上げ得るとの見通しが相次いでいる。
KB証券は11日、サムスン電子の今年の営業利益を360兆ウォン、SKハイニックスを270兆ウォン水準と推定した。これに伴う両社の法人税費用は約146兆ウォンで、政府が予想した今年の法人税収全体を60兆ウォン上回る規模だ.
KB証券が予想した2027年実績基準の法人税は、サムスン電子が110兆9490億ウォン、SKハイニックスが99兆6760億ウォンで、合計は210兆ウォンを上回る。現実化すれば、国家財政全体の半分近くを両社が担う時代が開かれる。
ただし、これはAIスーパーサイクルが長期間続くという前提が込められた楽観的シナリオである点で、現実化の可否を断定しにくいとの指摘も出ている。
過去にも半導体好況期には莫大な超過税収が発生した。2021〜2022年、政府は半導体景気の好況などに支えられ、約110兆ウォンの超過税収を得た。しかし市況が鈍化すると2023年以降は大規模な税収欠損が続いた。直近3年間の累積「税収パンク」規模は約96兆ウォンに達する。
このため、半導体産業がもはや景気循環産業ではないという金室長の前提が過度に楽観的だとの批判も出ている。市況変化に応じて業績と税収が急変する産業特性を考慮すれば、超過税収を前提とした長期の分配構想自体が不安定になり得るためだ。
金室長も「超過税収が生じないなら国民配当金は荒唐無稽な話だ」としつつも、「しかしそれが当たるなら、何の原則もなくその超過利益の果実を流してしまうことこそ、より無責任な選択になり得る」と但し書きを付けた。
◇ノルウェー・モデル引用の論争…李健熙先代会長も登場
金室長が事例として挙げたノルウェーの政府系ファンド(国富ファンド)モデルも論争になった。金室長は「ノルウェーは石油収益を国富ファンドに積み立て、社会全体に還元する構造を作った」とし、韓国も構造的な超過利益を長期的な社会資産へ転換する必要があると主張した。
しかし財界では「国家資源である石油収益と、民間企業が数十年にわたる研究・開発投資と赤字を甘受して蓄積した半導体利益は性格が全く異なる」との反論が出た。とりわけサムスン電子とSKハイニックスがグローバル競争の中で莫大な先行投資とチキンゲームに耐えた結果、現在の競争力を確保した点からして、単純比較は無理だとの指摘だ。
実際、主要国は半導体覇権競争の中で企業支援を拡大している。日本政府は半導体企業ラピダスに対し5年間で25兆ウォン超の支援を決め、米国政府もTSMCの現地投資に大規模な補助金を支給することにした。このような状況で韓国政府が「分配」議論を先に持ち出すことは、市場に誤ったシグナルを与え得るとの懸念が出ている。
半導体の超過利益をめぐる分配論争は過去にも繰り返されてきた。サムスン電子の労組は最近、営業利益の15%を成果給として支給するよう要求し、ストの可能性に言及した。政界の一部では、半導体産業成長の恩恵を農漁村支援などに活用すべきだとの主張も提起された。
このような論争の中、2011年の「超過利益共有制」論争当時の李健熙サムスン電子先代会長の発言も再び取り沙汰されている。当時、李先代会長は「何の話か分からない」とし、「社会主義国家で使う言葉なのか、資本主義国家で使う言葉なのか分からない」と述べた。