冷たい風がおさまり暖かな日差しが海上に広がると、ナムヘやソヘの漁民は春の使者を思い浮かべる。禁漁期を終えて旬を迎えた「ドダリ」である。
カレイ目カレイ科に属するドダリは、両方の目が片側に寄った独特の姿をしている。海底近くに生息し、春になると身が太り味わいが深まる。
ドダリに関する記録は古くから伝わる。最初の記録は朝鮮後期の1803年にキム・リョがチネでの流刑中に執筆した『ウヘイオボ』だ。水産物百科のようなこの書には「トダルオ」という表現が現在の「ドダリ」を意味するというのが学界の解釈である。地域での呼称が固定化され、現在の「ドダリ」として定着したという学説に説得力がある。
10余年後の1814年にチョン・ヤクチョンが著した『チャサンオボ』にもドダリと見られる記録がある。チョン・ヤクチョンは「ポムガジャミ」と記したが、魚の表皮の模様を見て付けた名称と推定される。
小型のドダリはまるでヒラメの稚魚のように見えることもある。しかし両者は全く別の魚である。
いずれも「カレイ目」に属するが、ヒラメは「ヒラメ科」、ドダリは「カレイ科」に分かれる。
両者を最も簡単に見分ける方法は、いわゆる「左ヒラメ右カレイ」だ。正面から見て目が左側に寄っていればヒラメ、右側に寄っていればドダリもしくはカレイである。ある人は、左は二文字だからクァンオ(もしくはノプチ)、右は三文字だからドダリ(もしくはカレイ)と分類することもある。
ただしヒラメとカレイの中にも、両眼の位置が反対側にある変異種が出る場合もある。
外観にも違いがある。カレイは楕円形の体で扁平で小さいが、ヒラメは平たい。平均的にドダリの大きさ(頭から尾までの長さ)は30cm程度だが、ヒラメは50cmを超える。大型のヒラメは1mを超えることもある。ヒラメは口も大きく鋭い歯を持つが、ドダリを含むカレイ科の魚類は口が小さく歯が発達していない。身もヒラメは締まりがあり弾力があって刺身に適するが、ドダリは柔らかく淡白で焼き物やスープにより適している。
ドダリは高たんぱく・低脂肪の食品でダイエットに良い。ロイシンおよびリシンなどの必須アミノ酸が豊富で、体力増進にも役立つとされる。
ドダリは海洋水産部が今月(3月)の水産物に選定した魚種でもある。春に出たヨモギとともに煮込む「ドダリよもぎスープ(ドダリスックク)」はナムヘ岸の代表的な珍味だ。ヨモギの芳香とドダリの淡白な味が相まって、春の倦怠感を払う滋養食として数えられる。
ただし、食べる前に必ず知っておくべきことがある。春に旬だとして食べるドダリの中には、真の「ドダリ」ではなく「ムンチガジャミ(ムナシガレイ)」である場合が多い。とりわけドダリよもぎスープに入る魚は大半がムンチガジャミだ。より一般的で流通量が多く価格が安いため、スープの材料として多用されている。
☞ドダリよもぎスープ レシピ
① ヨモギを洗い、太い茎は取り除く。
② 長ねぎは斜め切り、唐辛子は小口切り、大根はいちょう切りにする。
③ ドダリを下処理する。ヒレははさみで切り落とす。腹の内臓と血合いをきれいに洗う。腹と背を包丁でこそげるとウロコが取れる。小麦粉をまぶして洗い、ぬめりを除く。食べやすいように3〜4切れにする。
④ 煮干しと玉ねぎ、長ねぎ、昆布を入れてだしを取る。市販のコインだしを活用してもよい。
⑤ だしが出たら大根を入れて強く沸かす。
⑥ 大根が透明になったら切り分けたドダリを入れる。
⑦ 魚醤(または国醤)と刻みにんにくで味を調える。
⑧ 10分ほどさらに煮立て、浮いてくるアクは取り除く。長ねぎと唐辛子を入れて5分さらに煮る。
⑨ きれいに洗ったヨモギを入れ、1分ほどさらに煮れば完成だ。