13日、春を迎えたソウル光化門の通り。教保文庫の壁面には「春、私たちが最もよく知る奇跡」というフレーズが掲げられている。キム・ソヨン詩人の散文集から抜粋した一文である。万物がよみがえる季節の変化を「奇跡」と表現した。
春が来ると西海の干潟にも奇跡が咲く。その中心にソチョンのジュックミがある。小柄で脚の間に水かきがあるタコ科の頭足類だ。この水かきのため英語では「webfoot octopus」と呼ばれる。
ジュックミは朝鮮半島近海に古くから生息してきたとされる。チョン・ヤクチョンの『玆山魚譜』にも記録がある。昔は「蹲魚」「竹今魚」「望潮魚」などと呼ばれた。蹲魚は岩の下やサザエの殻の中で小さく縮こまっている姿を見て、うずくまるという意味の漢字「蹲」を「魚」の字の前に付けたものだ。
竹今魚は「竹の子が盛んな時期においしい」という意味で伝わる。地方ではこれを「ジュッケミ」「ッチュゲミ」などと呼び、今日の「ジュックミ」に定着したという説がある。「押しつぶす」の方言である「ッチュグリダ」に由来したという話もある。一般に「ッチュックミ」とも書くが、標準語は「ジュックミだ」。
代表的な産地としては忠清南道ソチョンが筆頭に挙がる。テチョンや保寧、南海の莞島や高興などでもジュックミ漁が活発だ。とくに春になると卵が詰まったジュックミが旬を迎える。3月から5月の間に獲れる「抱卵ジュックミ」は、弾力のある食感と香ばしい味で美食家の舌を魅了する。
ジュックミはカロリーが低い一方でたんぱく質含有量が高い食材だ。タウリンが豊富で、疲労回復と集中力向上に役立つ。テナガダコより小さいが栄養は劣らず、イカより食感がやわらかい。コウイカより大きく弾力がある。炒め物にすると味がよく染み、湯引きやしゃぶしゃぶで食べると淡泊な味を楽しめる。
21日から翌月5日まで、忠清南道ソチョン郡マリャンジン港では「ツバキの花ジュックミ祭り」が開かれる。赤く咲くツバキを観賞し、旬のジュックミを味わえる春の代表的な祭りだ。
ジュックミは海底に埋もれていた高麗時代の遺物を世に知らせた「功臣」でもある。2007年、忠清南道泰安の沖合でジュックミを獲っていた漁師が網の中から青磁の皿を一枚見つけた。ジュックミはサザエの殻などに入って産卵し、入口を小石でふさぐ習性があるが、その日は青磁の皿で入口をふさいだジュックミが網にかかったのだ。これを契機に西海に眠っていた高麗時代の難破船「泰安船」の存在が明らかになった。この船からは高麗青磁など2万5000点余りの遺物が見つかった。ジュックミがもたらした奇跡のような贈り物だった。
しかし最近ではジュックミ資源の減少を懸念する声も出ている。卵を抱える抱卵期に乱獲が行われ、個体数が減っているという。政府は2018年から毎年5月11日から8月までをジュックミの禁漁期と定め、捕獲を禁止している。一部では抱卵期を考慮し、禁漁期をさらに前倒しすべきだとの指摘もある。
☞ジュックミ炒めレシピ
①ジュックミの頭を裏返して内臓と墨袋を取り除く。卵はきれいに洗って使える。
②頭の部分を押してくちばしを取り除く。
③小麦粉と粗塩を入れてもみ、不純物を除く。流水ですすいだ後、沸騰した湯でさっと湯通しする。
④玉ねぎとキャロット(karrot)は薄切りにし、長ねぎと唐辛子は斜め切りにする。
⑤フライパンに食用油をひき、玉ねぎと長ねぎを先に炒めてねぎ油を出す。
⑥合わせ調味料を入れて炒め、湯通ししたジュックミと残りの野菜を加え、強火で手早く炒める。
合わせ調味料:コチュジャン3T、粉唐辛子3T、醤油2T、砂糖2T、おろしにんにく1T
⑦最後にごま油と白ごまを振って仕上げる。
※ヒント:ジュックミは短く湯通ししてから強火で手早く炒めると弾力のある食感が生きる。