世界最大のティラノサウルスであるスコティ(Scotty)がどのように死んだのかが明らかになった。死因を突き止めたのは古生物学者でも法医学者でもなかった。自然を成す基本粒子とその間に働く力を研究する素粒子物理学者だった。
米国エネルギー省傘下のオークリッジ国立研究所(ORNL)は「物理学者が中性子イメージング技術を用い、6600万年前に化石となったティラノサウルスであるスコティの骨内部を観察し、軟組織を損傷することなく血管を示す3D(立体)映像を作成した」と2日(現地時間)に発表した。
スコティは1991年、カナダ・サスカチュワン州のフレンチマン川渓谷で初めて発見された。名称は発掘を記念して飲んだスコッチウイスキーに由来する。最初の発掘から20年が過ぎた2011年までに骨格全体の65%が確認された。スコティはこれまでに発掘されたティラノサウルスの化石の中で最大規模である。全長と高さはそれぞれ13m、4.5mで、生前の体重は約8.8tと推定される。
◇6年前の学部生によるCT撮影から研究が始まる
今回の研究を率いたカナダ・レジナ大学物理学科のマウリシオ・バルビ(Mauricio Barbi)教授は「スコティの肋骨の化石には、これまで観察されたことのない鉱物化した血管の広大なネットワークがあった」とし「まるで宝くじに当たったようだ」と述べた。
研究チームが再構成したスコティの最期はこうだ。スコティは生前、頭に3本の角がある恐竜トリケラトプスを狩っていた。その途中、別のトリケラトプスが横から角で突き上げ、肋骨が折れた。スコティの体では骨折を治癒する過程が始まった。鉄分が豊富な血液が損傷部位に流れ込み、今回確認された血管を形成したのだ。
スコティは肋骨が完全に癒合する前に命を落とし、現在の化石として残った。それでも鉄分の多い血液とともに塩分の多い湿地で死んだおかげで、死因を示す手掛かりを残すことができた。湿地の土壌は常に水に浸っているため、大気中の酸素が内部に容易に浸透しない。このような場所に埋まると酸素が少なく腐敗が遅れる。結果として、骨に腐敗しやすい軟組織が残った。
バルビ教授の研究室のジェリット・ミチェット(Jerit Mitchell)博士課程研究員は、学部生だった2020年にスコティの肋骨を撮影したコンピューター断層撮影(CT)映像で血管の痕跡を発見した。CTはX線を多角度から透過させて撮影した数百枚の組織断面画像を集約し、人体内部を立体的に観察する方式である。
研究チームはスコティの分析に、サスカチュワン大学の円形粒子加速器であるシンクロトロンも利用した。粒子加速器は電荷を帯びた粒子を反対の電荷を帯びる電極で引き寄せ、光速に近い速度まで加速する装置である。そのうちサスカチュワン大学の放射光加速器は電子を光速まで加速する。加速した電子が進行方向を曲げられる際、接線方向に放出されるX線で物質内部を観察できる。X線は重い元素を分析するのに強みがある。X線は原子内部の電子と相互作用するが、鉄や銅、鉛のように原子番号が大きい原子ほど電子が多いためである。
◇粒子加速器の中性子が最終確証
研究チームはX線で化石化した血管を明らかにした後、さらなる手掛かりを求めてオークリッジ研究所の粒子加速器で中性子分析を行った。原子は中心にある核と、その周囲を回る電子で構成される。核には(+)電荷を帯びる陽子と、電荷を帯びない中性子がある。電子は(-)電荷を帯びる。中性子は電荷を帯びないため、物質の深部にまで入り込むことができる。
スコティの肋骨を分析した中性子は、オークリッジ国立研究所のビーナス(VENUS)ビームラインから生成された。中性子は電荷を帯びないため電場では加速できない。ビーナスは代わりに陽子を加速して金属に衝突させ、その内部から中性子を放出させる。この中性子を集めて肋骨に照射した。
中性子は放射光加速器で見つけた血管を再確認しただけでなく、X線では確認が難しかった軟組織の痕跡まで鮮明な映像で示した。中性子は特に水分の多い軟組織の水素原子に対して高い感度を示すためである。研究チームは、病院でX線が骨のように密度の高い構造を示し、磁気共鳴画像(MRI)が筋肉のような軟組織を鮮明に示すのと同じ違いだと説明した。MRIは水分子(H₂O)内の水素原子核が磁場に共鳴する性質を利用して映像を作る。
研究チームは今後、粒子加速器でより多様な化石を分析する計画だと明らかにした。中性子イメージング手法とX線手法を組み合わせ、化石に残った疾病や負傷の痕跡を探し、これを現代の種(種)と比較する予定である。恐竜研究は粒子加速器という新たな武器を得て、一段の飛躍局面に入っている。
参考資料
Oak Ridge National Laboratory(2026)、https://www.ornl.gov/news/ornl-neutron-bone-imaging-brings-t-rex-life