月の南極周辺の高原を撮影した写真。/ロランド・フェニベス

月は生命体が生きるには極めて過酷な場所である。大気が事実上なく、昼夜の温度差が大きいうえ、紫外線や高エネルギー粒子もそのまま地表に降り注ぐ。こうした環境では地球由来の微生物が長く生き残るのは難しいと考えられてきた。

しかし米国航空宇宙局(NASA)の研究チームは、月の極地の一部地域には地球の微生物が当面生存できる「避難所」が存在する可能性があるとの研究結果を発表した。研究結果は国際学術誌「サイエンス・アドバンシズ(Science Advances)」に20日掲載された。

研究チームは月の南極と北極の地形、日照の程度、表面温度などを分析し、比較的低温が維持されつつ紫外線曝露も少ない場所を探した。研究にはリモートセンシング資料と照明モデリングが活用された。照明モデリングは月の地形と太陽の位置を計算し、どこに日光がどれほど長く、どれほど強く当たるかを推定する方法である。

研究チームはこのように見いだした環境条件で、桿菌(Bacillus)、デイノコッカス(Deinococcus)、ブドウ球菌(Staphylococcus)とコウジカビ(Aspergillus)、フザリウム(Fusarium)などの細菌・カビが耐えられるかを検討した。これらは極限環境に比較的強く、宇宙船や機器、人を通じて宇宙探査の過程でともに運ばれる可能性がある微生物である。

分析の結果、月極地方の一部の陰になって寒冷な地域では、微生物が直ちに死滅せず生き残れることが示された。月の極地では太陽が地平線近くを低く移動するため、小さな丘やクレーターの壁でも長い影を作り得る。

ただし研究チームは「月極地方の相当部分が微生物生存に適した表面条件を備えている可能性が高い」としつつ、「該当環境で微生物が持ちこたえることはできても、活発に成長したり増殖したりするのは難しい」と説明した。

今回の研究が重要な理由は、今後の有人月探査が主に南極地域を目標としているためである。月の南極には太陽光がほとんど、あるいは全く届かない永久陰影域が存在し、ここは温度が非常に低く水分子が氷の形で残り得る。水氷は将来の月面基地建設でも飲料水などの中核資源になり得る。

NASAは2028年を目標に初の月南極への有人着陸を推進している。併せてロボット探査と技術実証を通じて水氷などの資源と月環境を調査し、着陸と航法技術などを試験して長期的な月面基地建設に必要な基盤を整える計画である。

このように人と探査機器が月を往来する機会が増えれば、地球の微生物が意図せず月面へ移送される可能性も高まる。これは将来、月で生命に関連する物質や痕跡が発見された場合に、それが月に元来存在したものか地球から流入したものかを区別するうえで混乱を招き得る。

研究チームは「特に近い将来の有人月探査が南極地域に集中するだけに、探査の過程で地球の微生物が月面へ移送される可能性を事前に把握し管理することが重要だ」と強調した。

参考資料

Science Advances(2026)、DOI: https://doi.org/10.1126/sciadv.aec0811

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