米国国防総省が中国のバイオ医薬品受託開発製造(CDMO)企業ウーシー・アップテック(WuXi AppTec)を「中国軍事企業」に指定したことについて、米国の裁判所がひとまず待ったをかけた。
国防総省がウーシー・アップテックと中国政府・軍の関係を判断する過程で、証拠を誤って解釈した可能性があるというのが今回の決定の主旨である。
12日、海外メディアとバイオ業界によると、米国ワシントンDCの連邦地裁は最近、ウーシー・アップテックが国防総省の「1260H指定」に対して提起した訴訟で予備的差止命令を出した。
本案訴訟が進行する間、国防総省が当該指定を根拠に追加措置を取ることを禁じたものであり、ウーシー・アップテックの中国軍事企業指定を最終的に取り消したわけではない。これにより国防総省は当面、1260H指定を「執行・履行したりそれに伴う他の措置」を取ることができなくなった。
裁判所判断の核心は、ウーシー・アップテックの主張を単純に受け入れたのではなく、米国防総省の判断過程自体に問題があった可能性を認めた点にある。また、米国防総省の1260H指定によりウーシー・アップテックが被った損害は、後続の訴訟で救済を受けても回復が難しい場合があるとみた。
実際にウーシー・アップテックは指定後、業務中断やプロジェクトの取消し、競合CDMOへのプロジェクト移管などの被害を受けたとされる。裁判所はこのような被害が本案訴訟の結果が出た後には取り戻しにくい可能性がある点を考慮したものと解される。
ウーシー・アップテックは裁判所決定後、「現在の事業運営は完全に正常に行われている」とし、顧客と患者に必要な医薬品を支援することに集中すると明らかにした。
◇米国防総省「中国政府・軍と連携」vs ウーシー・アップテック「明白なミス」
米国防総省は6月にウーシー・アップテックを1260Hリストに含めた。この名簿は、米国防総省が中国人民解放軍(PLA)など中国の軍事・国防産業と連携していると判断する企業を指定するものだ。
国防総省はウーシー・アップテックと中国政府機関の間の間接的な所有関係を問題視したと伝えられた。中国国務院傘下の国有資産監督管理委員会(SASAC)との関係、中国の国防産業政策を所管する国家国防科学技術工業局(SASTIND)との連携などが根拠として取り沙汰された。人民解放軍との関係も国防総省が提起した疑惑の一つだ。
ウーシー・アップテックはこれを強く否定した。
同社は中国政府や軍関連機関の所有・統制を受けたり、これらと系列関係にあるわけではなく、中国人民解放軍にサービスを提供していないと主張した。中国の国防産業基盤や「軍民融合」プログラムとも関係がないという立場である。
ウーシー・アップテックは当時、米国防総省の指定は「明白なミス」だと反発し、6月末に訴訟を提起した。今回の裁判所決定でも、裁判所が国防総省がウーシー・アップテックと中国政府・軍の関係を判断する際、関連証拠を誤って解釈した可能性を指摘したと伝えられた。
ただし、裁判所がウーシー・アップテックの主張を最終的に認めたわけではない。今後、本案訴訟を通じて国防総省の1260H指定が適法だったかについて最終判断が下される予定だ。
◇1260H指定、生物保安法と連動
ウーシー・アップテックが1260H指定に敏感に対応する理由は、米国の中国バイオ規制が生物保安法(Biosecure Act)とつながり得るためである。
中国バイオ産業を標的とする生物保安法は、国家安全上の懸念がある特定のバイオ企業が提供する装置やサービスを、米国連邦政府が調達または契約することを制限する内容を含む。
米政府と議会は2024年から中国バイオ産業に対する規制を強化してきた。米議会内外ではウーシー・アップテックと姉妹会社のウーシー・バイオロジクス(WuXi Biologics)がその対象企業として挙げられてきた。
ウーシー・バイオロジクスはウーシー・アップテックから2017年に分社したバイオ医薬品CDMO企業である。米国製薬各社を主要顧客として確保しており、今後米国の規制がウーシー系列全般に拡大する場合、影響を受ける可能性が取り沙汰されてきた。
今回の裁判所決定により、ウーシー・アップテックは少なくとも当面、1260H指定に伴う追加的不利益からは免れることになった。
ただし、米国の中国バイオ産業けん制政策自体が変わったわけではない。これまで米国がウーシー・アップテックやウーシー・バイオロジクスなど中国CDMOへの規制を強化すれば、グローバル製薬各社が生産や研究開発のボリュームを他の供給者へ移す可能性があるとの見方が優勢だった。
この見方から、サムスンバイオロジクス(207940)、ロッテバイオロジクスなど韓国CDMO企業がそのボリュームの一部を吸収できるとの期待が出ていたが、今回の米裁判所の制止によりウーシー・アップテックの米国事業が直ちに萎縮する可能性は低くなった。韓国企業や中国企業、またCDMO社に生産を委託するグローバル顧客企業のすべてに不確実性が生じた格好だ。
業界では、米国が中国バイオ産業に対するサプライチェーン依存度を下げようとする基調自体は変わっていないため、今後の本案訴訟の結果と生物保安法の具体的な適用範囲によっては、韓国CDMO業界の機会が再び拡大する可能性は残っていると分析した。