最近、韓国の製薬・バイオ業界で臨床後期段階の最大変数として「プラシーボ(プラセボ)効果」が再び注目を集めている。新薬候補物質の薬効自体は確認されたものの、プラセボ群の症状改善幅が予想以上に大きく現れ、統計的有意性を確保できない事例が相次いでいるためだ。
28日、製薬・バイオ業界によると、最近 KOLON TissueGene(950160)が米国臨床第3相を進めた膝変形性関節症治療薬「TG-C」がプラセボ群対比で有意差を立証できず、業界の緊張感が高まっている。下半期にも変形性関節症やアルツハイマー病など大規模な後期臨床の結果発表を予定する韓国企業が少なくないことから、プラセボ効果が再び成否を分ける変数として浮上するとの見方が出ている。
◇TG-Cが改めて露呈させた「プラセボの壁」
KOLON TissueGeneは20日、米国第3相の結果、膝変形性関節症治療薬「TG-C」がプラセボ群対比で統計的有意性を確保できなかったと発表した。TG-C投与群では疼痛と関節機能がいずれも改善したが、プラセボ群でも同水準の改善が見られ、両群間の差が事実上消失したためだ。
会社は予想以上に強いプラセボ効果を失敗の主因とみている。ノ・ムンジョンKOLON TissueGene代表は翌日の記者懇談会で「TG-Cの変形性関節症改善効果自体は確認されたが、プラセボ群でも症状改善が大きく現れ、差別性を立証できなかった」と述べ、「一般的に6カ月以降に減少するとされるプラセボ効果が今回の臨床では24カ月まで維持されるという異例の様相が観察された」と説明した。会社は現在、臨床機関別データやサブグループ解析などを通じ、プラセボ反応が大きくなった要因を追加分析中だ。
プラセボは治療効果がない、いわゆる「偽薬」で、新薬の有効性を評価するための対照群である。特に変形性関節症のように患者が疼痛や症状を自己評価する疾患では、治療を受けるという期待感や関節腔内注射そのものへの心理的影響で症状が改善したと感じる場合が少なくない。このため、実際の薬効が確認されてもプラセボ群との差が縮まり、統計的有意性の確保が難しくなり得る。
このような事例は韓国で初めてではない。 Helixmith(084990)は2019年、糖尿病性神経障害治療薬候補「エンジェンシス」の米国第3相でプラセボ対比の有意性を確保できず、開発日程に大きな支障を来した。その後に実施した第3相-2および第3相-2bでも一次評価項目を満たせず、第3相-3はまだ開始できていない。
シンプン製薬(019170)も昨年、変形性関節症治療薬「SP5M002」の第3相で対照薬対比の優越性を立証できなかった。CHA Vaccine Research Institute(現 AriBio LAB(261780))もまた、慢性B型肝炎治療ワクチン候補「CVI-HBV-002」が第2相bでプラセボ群と有意な差を示せず、後続臨床戦略を再設計している。
プラセボ効果はグローバル大手も免れない。ドイツ・メルクの変形性関節症治療薬「スプリフェミン」は2019年の第2相で軟骨再生効果は確認されたが、プラセボ群でも生理食塩水注射だけで疼痛が大きく減少し、両群の差を立証できなかった。日本の第一三共の線維筋痛症治療薬「ミロガバリン」も、予想以上のプラセボ反応により2017年に実施したグローバル第3相3件すべてで失敗した。
◇「後期臨床は『設計の勝負』…勝敗を分ける『プラセボ効果』」
このため業界では、後期臨床の成否は候補物質そのものより、いかにプラセボ効果を制御するかに懸かっているという声まで出ている。新薬の有効性を立証するには薬がよく効くだけでは不十分で、プラセボ群の症状改善幅をどれだけ縮めるかが統計的有意性を左右するためだ。
実際、プラセボ効果は単なる「心理的錯覚」だけでは説明しにくい。患者が治療を受けるという期待を抱いたり、医療陣を信頼するだけでも、実際の生理的変化が起こるという研究結果が相次いでいる。
代表的な事例が2005年の米国ミシガン大学の研究である。研究チームは、プラセボが脳の天然鎮痛システムを活性化し、実際の疼痛緩和反応を誘導する事実を初めて立証した。すなわち、治療効果のない薬でも患者の期待と信念が実際の症状改善につながり得るという意味だ。
業界は臨床初期からプラセボ効果を最小化する設計が何より重要だと口をそろえる。
国内で免疫腫瘍薬を開発中のあるバイオ企業の代表は「以前は良い薬さえ作ればよいと考えたが、今は良い臨床を設計することが良い薬と同じくらい重要になった」と述べ、「患者の期待感、研究者の説明の仕方、評価者の熟練度といった小さな違いもプラセボ効果を増幅し、臨床結果を覆し得る」と語った。
続けて「特に疼痛や生活の質のように患者が直接評価する指標は、プラセボ反応が大きく現れる可能性が高い」とし、「第2相から患者の選別基準を精緻に整え、評価者教育を標準化しなければ、第3相で数百億ウォンを投じても薬効を立証できない恐れがある」と付け加えた。
アルツハイマー治療薬を開発中のあるバイオ企業の研究開発(R&D)執行役員も「後期臨床はもはや薬を開発する戦いではなく、臨床を設計する戦いになった」と述べ、「プラシーボに敏感な患者が多く登録されれば、実際に薬効があってもプラセボ群との差が縮まる可能性があるため、どの患者を登録するかが最初から中核戦略になる」と語った。
学界では、プラセボ反応が大きい患者を臨床開始前に除外する方策も議論されている。代表的な方法が、まずプラセボを投与し反応がない患者のみを本試験に含める順次平行比較設計(SPCD)だ。ただし、プラセボ反応も実際の医療現場で見られる患者の反応である以上、これを人為的に排除すれば現実の患者群を十分に反映できないとの反論も少なくない。
プラセボ効果自体が次第に大きくなっているという研究結果もある。カナダのマギル大学の研究チームは2015年、国際学術誌「Pain」に発表した論文で、実際の薬物反応は大きな変化がない一方、プラセボ反応は着実に増加し、薬物とプラセボ間の効果差が徐々に縮小していると分析した。
◇ 下半期、後期臨床が相次ぎ待機…「プラセボ効果」を越えられるか
このため業界の視線は、下半期に発表される韓国バイオ企業の後期臨床結果に向かっている。変形性関節症やアルツハイマー病、ドライアイのように患者が症状を自己評価する疾患が少なくないだけに、候補物質の薬効のみならず、プラセボ効果をいかに効果的に管理したかが成否を分けると見込まれる。
最も関心を集めるのは今週中に結果発表が予定される Kangstem Biotech(217730)だ。会社の膝変形性関節症治療候補「オスカ」はKOLON TissueGeneのTG-Cと同じ疾患を対象に開発されている。今回の第2相aはプラセボ対照方式で設計されているだけに、プラセボ群の反応がどの程度現れるか、統計的有意性を確保できるかが最大の関心事だ。
9月には AriBio が韓国・米国・欧州など13カ国で進めた経口アルツハイマー病治療薬候補「AR1001」のグローバル第3相の主要結果を発表する。
アルツハイマー病をはじめとする中枢神経系(CNS)疾患も、プラセボ反応が大きく現れる代表的な分野だ。
実際、日本のエーザイの「レカネマブ」と米国イーライリリーの「キスネバ」は、症状が比較的明確な初期アルツハイマー病患者を選別し、プラセボ群との差を立証することに成功した。
一方、米国バイオジェンの「アデュカヌマブ」はプラセボ群の症状悪化の速度が予想より遅く現れ、薬効立証に苦戦した。業界では、AriBioもグローバルな成功事例と類似の患者選別基準を適用しただけに、プラセボ効果をどれだけ制御したかが結果を左右するとみている。
HanAll Biopharma(009420)も 大熊製薬(069620)と共同開発中のドライアイ治療薬「HL036」の米国第3相の主要結果を年内に確保する計画だ。
会社は先の米国第3相で一次評価項目だった角膜中心部染色スコア(CCSS)とドライアイ症状スコア(EDS)でプラセボ対比の統計的有意性を確保できなかった。ただし、二次評価項目のシルマー試験(涙液分泌量測定検査)ではプラセボ群より有意な改善効果を確認しただけに、後続臨床では一次評価項目の達成可否が焦点となる見通しだ。