米デラウェア州ウィルミントンにあるアストラゼネカ北米本社前。/ロイター

英国製薬大手アストラゼネカが希少心疾患治療薬「ワイヌア(Wainua)」の適応拡大を目指した中核となる第3相試験で大きな打撃を受けた。市場では試験デザイン自体にも問題があったとの指摘が出た。

アストラゼネカは9日(現地時間)、アイオニスと共同開発したワイヌアがトランスサイレチン心アミロイドーシス(ATTR-CM)患者を対象とするグローバル第3相試験で主要評価項目を達成できなかったと明らかにした。

ワイヌアは現在、20余りの国で遺伝性ATTR多発ニューロパチー(ATTR-PN)の治療薬として販売されている。

ATTRはトランスサイレチン(TTR)タンパク質が臓器に蓄積する希少疾患で、末梢神経を侵すと遺伝性ATTR多発ニューロパチー(ATTR-PN)、心臓を侵すとATTR心アミロイドーシス(ATTR-CM)に区分される。アストラゼネカは患者数がより多いATTR-CMへ適応拡大するため今回の試験を実施した。昨年のワイヌア売上高は2億1200万ドルだった。

今回の試験失敗の報でアストラゼネカの株価は取引時間中に一時10%近く下落し、時価総額は一時約233億ポンド(約47兆2000億ウォン)減少した。これに対し、競合するATTR心アミロイドーシス治療薬を保有する米バイオ企業アルナイラムとブリッジバイオの株価は、反射的な恩恵への期待から上昇した。

今回の試験には20カ国の1432人の患者が参加した。ワイヌアは140週にわたり心血管死と反復する心血管事象を減らすかどうかの評価を受けたが、プラセボ対比で統計学的に有意な改善効果を立証できなかった。ただし既存のスタビライザー(stabilizer)を使用していない患者群では、単剤療法で複合評価項目の改善効果が「名目上の統計学的有意性(nominal significance)」を示した。

市場では試験結果だけでなく試験デザイン自体への指摘も出た。

今回の試験では開始時点で患者の57%がすでにスタビライザーを服用しており、試験期間中に24%が追加でスタビライザーの投与を受けた。既存治療薬が併用されたことで、ワイヌアの効果を明確に立証するのが難しかったとの分析だ。

米投資銀行バンク・オブ・アメリカ(BofA)は「競合のアルナイラムのアンブトラ(Amvuttra)の試験結果を踏まえると、今回の失敗は投資家も予想できなかった結果だ」と評価した。

米投資銀行ジェフリーズは「アストラゼネカは優れた治験デザイン能力で高い評価を受けてきたが、今回の失敗は経営陣の信頼度に一部打撃を与え得る」と分析した。ただし「同社の2030年の売上目標と長期的な成長性に与える影響は限定的だ」と付け加えた。

今回の失敗は、アストラゼネカが今年5月に乳がん治療薬「カミゼストラント(camizestrant)」の米食品医薬品局(FDA)審査過程でも試験デザインに関する指摘を受けたのに続く悪材料である。

一方、米投資銀行バークレイズは、アストラゼネカがワイヌアの単剤療法のみを対象に新たな試験を実施する可能性は低いと展望した。新規試験を始めても承認まで相当な時間を要し、すでに市場を先行するアルナイラムとの差を縮めるのは難しいという理由からだ。

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