ブラジルのサンタイサベル・ド・リオネグロ地域で、ヤノマミの先住民がピーチパーム(学名Bactris gasipaes)の果実を運んでいる。気候変動により、アマゾン先住民が利用する植物種と関連知識が大きく減少すると予測された。/Alamy

南米の熱帯雨林を原産とするクルシア(Clusia)は、韓国では空気清浄用として多く栽培されている。一方、原産地であるアマゾンに住む先住民は、クルシア・シュルテシー(C. schultesii)を古くから皮膚疾患の治療薬として用いてきた。空気清浄の必要がない現地の人々は薬効を優先したということだ。

気候変動によりアマゾンの熱帯植物とともに、これに関連する文化遺産まで消えかねないとの警告が出た。アマゾンで植物が失われれば、単に種が一つ減るだけでなく、それを活用してきた文化まで代を断たれるという意味だ。新薬の宝庫となり得るアマゾン版『東医宝鑑』(朝鮮時代の医書)が消えるということだ。

◇薬用植物の知識消滅、医療に致命打

スイス・チューリヒ大学系統・進化植物学科のロドリゴ・カマラ=レレット(Rodrigo Cámara-Leret)教授の研究チームは「気候変動への対応をコンピューターでシミュレーション(模擬実験)した結果、温室効果ガスの削減が適切に行われない場合、アマゾン先住民の文化圏で使用される在来植物の種数が3分の1減少することが示された」と9日、国際学術誌『ネイチャー』に発表した。

研究チームは1504年から2023年まで、アマゾンの熱帯雨林で人々が植物を活用した事例を記録した文献9万件以上を収集した。分析の結果、アマゾンの人々が利用してきた在来植物は5796種に達することが分かった。既存推定より2倍以上増えた数値である。アマゾンの種子植物の3分の1に相当し、論文の基準では36%を占める。

研究チームは2060年から2080年まで、気候変動が種の分布に及ぼす影響を、温室効果ガス削減目標の達成、最小限の対応、無対応の3つのシナリオでシミュレーションした。分析の結果、シナリオ別に現地で活用されてきた植物種の減少率はそれぞれ28%、30%、34%と予測された。アマゾンで植物が完全に絶滅するという意味ではなく、現地の文化圏でそれだけ活用できなくなるということだ。

アマゾンの文化圏は、植物を食料や薬材、建築材などとして多様に使用してきた。シミュレーションの結果、気候変動により植物が提供してきたこうしたサービスも18〜23%減少することが示された。アマゾンの植物活用は記録上、薬用が最も多かった。気候変動でアマゾンの植物が減れば、現地の医療体制が打撃を受ける可能性があるという意味だ。

気候変動に伴い、アマゾンの有用植物と文化遺産が危機に直面。/資料 ネイチャー、制作 ChatGPT

◇言語の絶滅危機と相まって状況が悪化

今回の研究は、気候変動が自然だけでなく人類の文化遺産までも脅かす事実を明らかにした。研究チームは、アマゾンで植物の使用が減れば、近年加速する先住民言語の消滅と相まって、今世紀末までに有用植物に関する知識のうち26%が失われる可能性があると予想した。

アマゾンで植物の用途に関する知識は、特定の言語・文化圏のみに残っている場合が多かった。論文によると、植物サービスの74%はただ一つの文化圏と結び付いていた。どの植物がどの病気に効くのか、どのように採取し加工するのかといった知識が、特定の共同体にのみ継承されてきたという意味だ。

しかし、今回の研究で分析したアマゾン先住民の文化243件は、その多くが消滅したか、言語が脅かされていた。研究チームは、今回の論文で分析したアマゾン先住民の言語156個のうち半数以上が消滅の危機に直面していると明らかにした。植物に関する知識が言語とともに消え去る危機に直面しているということだ。

少数言語の絶滅は全世界的な現象である。ドイツのマックス・プランク心理言語学研究所のスティーブン・レヴィンソン(Stephen Levinson)博士の研究チームは2018年、国際学術誌『言語学』に発表した論文で、現在人類が使う約7000の言語のうち半数以上が絶滅の危機に瀕していると明らかにした。このうち577は既にほぼ消滅した状態で、現在は祖父母世代のみがたまに使用するにとどまっていた。済州島の方言もここに含まれた。

世界で最も深刻な絶滅危機にある言語577種。日本の奄美沖縄系方言も含まれる。/ユネスコ

ビクトリア・レジェス=ガルシア(Victoria Reyes-García)・スペインのバルセロナ自治大学教授は、この日『ネイチャー』に掲載された論評論文で「今回の研究は、生物多様性の危機が先住民社会に大きな影響を及ぼす事実を明らかにした」とし、「アマゾンの危機は生物学的危機であると同時に文化的危機だ」と述べた。特に、植物種の減少と言語の消滅が相互に絡み合い、アマゾンの生物文化遺産を浸食していく過程をよく示したと評価した。

レジェス=ガルシア教授は、今回の研究で推定したリスク度が実際より低く見積もられた可能性もあると指摘した。今回の論文は主に気候変動と言語の消滅を扱ったが、実際のアマゾンでは森林破壊、外来種の流入、開発圧力などが同時に作用しているということだ。こうした要因が結び付けば、植物と文化知識の損失はさらに大きくなり得ると明らかにした。

参考資料

Science(2026), DOI: https://doi.org/10.1038/s41586-026-10741-y

Science(2026), DOI: https://doi.org/10.1038/d41586-026-01874-1

Language(2018), DOI: https://doi.org/10.1353/lan.2018.0070

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