分離と選別が難しく再生利用されなかった混合廃プラスチックを高純度水素に転換する新技術が開発された。既存方式より低い温度と圧力で作動し、炭素排出も抑えられるため、廃プラスチック処理とクリーンエネルギー生産を同時に解決し得る技術として注目される。
キム・ウジェ梨花女子大学化工新素材工学科教授の研究チームは、混合プラスチック廃棄物を高純度水素に変換する「アルカリ熱処理」工程を開発したと明らかにした。研究成果は国際学術誌「米国科学アカデミー紀要(PNAS)」に7日掲載された。
現在、世界のプラスチック廃棄物のうち実際に再生利用される比率は約9%にとどまる。残りの大半は埋立てまたは焼却される。研究チームによると、プラスチック廃棄物の約79%は埋立てられ、約12%は焼却処理される。
再生利用率が低い理由の一つは、廃プラスチックがたいてい複数種類が混ざった状態で排出され、再生利用効率が落ちるためである。ペットボトルに多く使われるポリエチレンテレフタレート(PET)、レジ袋や包装材に使われるポリエチレン(PE)、生活用品や容器に広く用いられるポリプロピレン(PP)などはいずれも性質が異なるプラスチックだ。これらが混在すると再生利用の前に種類ごとに分類する必要があるが、この工程は複雑でコストもかかる。
研究チームはこうした問題を解決するため、廃棄されるプラスチックを処理するだけにとどまらず、水素資源として再活用する方法を見いだした。今回開発したアルカリ熱処理工程は、水酸化ナトリウムのようなアルカリ物質を用いてプラスチックを分解し、この過程で水素を得る方式である。水酸化ナトリウムは一般に「苛性ソーダ」と呼ばれる強アルカリ性物質で、プラスチックの硬い化学構造を破砕する反応を助ける。
従来も混合廃プラスチックを水素に変換する技術は存在した。代表的な方式は、廃棄物を非常に高い温度と圧力で分解して気体燃料を得るガス化技術である。しかしガス化はエネルギー消費が大きく、工程条件が厳格で、処理過程で相当な炭素排出が発生するという限界がある。
とりわけPEとPPは化学構造が安定的で容易に分解しない。研究チームはこれを解決するため、熱酸化前処理段階を追加した。本格的な処理に先立ちプラスチックを酸化させ、より反応しやすい状態へと変えたのである。その後、熱酸化条件とプラスチックに対する水酸化ナトリウムの比率を調整し、水素生産効率を高めた。
その結果、研究チームは個別のプラスチックだけでなく、複数種類が混ざった廃プラスチックからも高純度水素を生産できることを確認した。研究チームは、従来のガス化工程のようにプラスチックを一つひとつ精緻に分類する必要がなく、実用性が高いと説明した。
水素は燃焼またはエネルギーとして使用する際に二酸化炭素をほとんど排出しないクリーン燃料とされる。ただし水素を生産する過程で多くのエネルギーが必要だったり炭素が排出されたりすれば環境適合性は損なわれ得る。今回の技術は、廃棄されるプラスチックを原料として活用しつつ比較的低いエネルギー条件で水素を生産できる点でも意義がある。
研究チームは「従来のガス化方式よりエネルギー負担と炭素排出を抑える可能性があり、持続可能な再生利用技術として活用できるだろう」とし、「アルカリ熱処理工程がプラスチック廃棄物をクリーンな水素燃料へ転換する新たなアップサイクルの経路になり得る」と明らかにした。
参考資料
PNAS(2026), DOI: https://doi.org/10.1073/pnas.2537552123