最近、米国シカゴで開かれた米国臨床腫瘍学会(ASCO)の最大の話題は、臨床第3相で転移性膵臓がん患者の生存期間を2倍近く延ばした米国レボリューションメディシンズ(Revolution Medicines)の新薬候補だった。40年以上難題とされ「がんの中のがん」と呼ばれる膵臓がん治療に新たな可能性を示したとの評価が出ている。

先月31日(現地時間)、米シカゴで開かれた「ASCO 2026」で、米レボリューションの膵臓がん新薬候補「ダラクソンラシブ」が化学療法に比べ全生存期間(OS)を約2倍延長したとの結果が発表され、会場でスタンディングオベーションが起きる様子。/スタットニュース

17日製薬バイオ業界によると、レボリューションメディシンズは先月29日から今月2日(現地時間)まで開かれたASCOで、転移性膵臓がん患者を対象に実施した新薬候補「ダラクソンラシブ」の臨床第3相結果を公開した。

ダラクソンラシブを1日1回経口投与した結果、患者の全生存期間中央値(mOS)は6.7カ月から13.2カ月へと延びたことが分かった。発表直後、会場ではスタンディングオベーションが起きた。

このようにASCOでスタンディングオベーションが起きたのは、2022年エンハーツの臨床第3相発表以来初めてとされる。当時日本の第一三共は英国アストラゼネカと共同開発した抗体薬物複合体(ADC)新薬「エンハーツ」第3相の結果を発表し、グローバルADC市場の爆発的成長を牽引する契機となった。

膵臓がんは治療選択肢が極めて限られる代表的な難治がんである。膵臓が腹部の深部に位置し早期発見が難しく、患者の相当数が手術が難しい進行性または転移性段階で診断される。根治を期待できる手術を受ける患者は全体の15〜20%にとどまる。残る患者は化学療法と放射線治療に依存せざるを得ない。

現在使用される治療薬は、1990年代に開発された抗がん剤「ジェムシタビン」、「アブラキサン」、「FOLFIRINOX」などに限られる。だが治療効果が限定的で副作用の負担も大きく、新たな作用機序の治療薬開発の必要性が継続的に提起されてきた。

とりわけ転移性膵臓がん患者の生存期間は通常6〜7カ月水準にとどまることから、この状況でダラクソンラシブが生存期間を2倍近く延ばす結果を示し、業界の注目が集まっている。

さらに注目される理由は、40年以上新薬開発の難題とされてきた「RAS」を直接狙った点だ。RASは細胞の成長と増殖を調節するタンパク質で、変異が生じるとがん細胞が増殖し続ける役割を果たす。膵臓がんや大腸がん、非小細胞肺がんなど主要な固形がんでしばしば見つかるが、複雑な分子構造のため薬剤が結合しにくく、数十年にわたり治療薬開発が失敗してきた。

ダラクソンラシブは、活性化したRASタンパク質に結合し、がん細胞の増殖シグナルを遮断する仕組みで作用する。特定変異のみを狙う既存アプローチと異なり、多様なRAS変異に適用できる点が強みとされる。会社は今回の成果を踏まえ、膵臓がんだけでなく大腸がん、非小細胞肺がんなどへ開発範囲を拡大する計画だ。

キム・ミンジョンDSインベストメント研究員は「今回のASCO 2026の主役は断然レボリューションメディシンズの膵臓がん第3相の成功だ」とし、「40年間難題とされたRASに向け、人類が最初の一歩を踏み出した瞬間だ」と評価した。

キム・ジョンOnconic Therapeutics代表は、米シカゴで5月29日から6月2日(現地時間)まで開かれる米国臨床腫瘍学会(ASCO 2026)で、ネスパリブの転移性・進行性膵臓がんを対象とした第1b相試験の結果を発表した。/Onconic Therapeutics

韓国企業も膵臓がん治療薬の開発競争に参入している。代表格はJEIL PHARMACEUTICAL子会社のOnconic Therapeuticsの次世代二重標的抗がん剤「ネスパリブ」だ。現在、転移性・進行性膵臓がん患者を対象に、既存の標準治療である「ジェムアブラキサン」にネスパリブを併用投与する方式で第2相を進行中だ。

会社は今回のASCOで、先に実施した臨床第1b相研究の結果を公開した。発表によると、がん細胞が完全に消失した状態である完全寛解(CR)が40カ月以上維持された事例が確認され、mOSは14.2カ月と示された。

ネスパリブは、がん細胞のDNA損傷修復を担う「PARP(パープ)」と、がんの成長に関与する「タンクィレース(Tankyrase)」を同時に阻害する二重標的抗がん剤だ。既存PARP阻害剤の限界として指摘されてきた耐性問題を克服できるとの期待を集めている。

開発段階でも成果を上げている。ネスパリブは2021年、米食品医薬品局(FDA)から膵臓がん治療薬の希少疾病用医薬品指定(ODD)を受けた。希少疾病用医薬品として承認されれば、最長7年間の市場独占権や手数料減免、開発支援などの恩恵を受けられる。今年3月には胃がん・胃食道接合部がん治療薬分野でも追加で希少疾病用医薬品指定を獲得し、適応拡大の可能性を広げた。

Prestige Biopharmaは膵臓がん抗体新薬「PBP1510」を開発している。この候補物質は、膵臓がん患者の約80%で過剰発現する膵管腺がん過剰発現因子(PAUF)を標的とする。現在、米国と欧州などで臨床第1・2a相が進行中だ。

一方、現代バイオサイエンスは膵臓がん治療薬「ポリタクセル」の開発拡大を進めたが、最近、臨床第1相の治験計画を自主的に取り下げた。

グローバル製薬各社の開発競争も激しい。スイスのロシュ、ノバルティス、米国のファイザー、メルク(MSD)など主要ビッグファーマが膵臓がん治療薬の開発に乗り出している。現在、世界的に膵臓がん治療薬候補164件が前臨床段階にあり、233件が初期臨床段階、29件が臨床第3相段階で開発されている。

このうち英国アストラゼネカの「リンパーザ」は、MSD「キイトルーダ」との併用療法で、腫瘍抑制タンパク質を作るBRCA1・2変異の転移性膵臓がん患者を対象に臨床第2相を進行中だ。

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