スウェーデンの写真家アレックス・ドーソンがグリーンランドの海氷下で撮影したクジラの墓場。2022年のスキューバダイビング水中写真コンテストで受賞。中国、イタリア、ニュージーランドの科学者が水深7000mの深海底で過去最大規模のクジラの墓場を発見した/Alex Dawson

インド洋の水深7000mの深海で史上最大規模のクジラの墓場が見つかった。これまでに判明したクジラの墓場の中で最も深く広い場所であることも確認された。最近死んだクジラの死骸だけでなく、絶滅した500万年前のクジラの化石まで出てきた。人間にたとえればアウストラロピテクスから現代人までをすべて包摂する超大型の共同墓地が確認された格好だ。

中国科学院深海科学工程研究所(IDSSE)の研究陣は「ディアマンティナ断層帯の水深4616〜7001m区間で、現生クジラの死骸がある5カ所と、絶滅したクジラの化石がある476カ所を見つけた」と10日(現地時間)に国際学術誌『ネイチャー』で発表した。今回の研究にはイタリアのピサ大学とニュージーランド地球科学研究所の研究陣も参加した。

科学界は、クジラの死骸の群落が長期的に温暖化を誘発する二酸化炭素を深海に隔離するだけでなく、他の生物に栄養分を提供する点で、深海生態系の進化と分布を理解するうえで大いに役立つと評価した。深海生態系の過去と現在をともに示す海洋科学の宝庫が発見されたということだ。

중국의 유인 잠수정 펜두저(奋斗者)가 로봇팔로 인도양 심해에서 화석이 된 고래 뼈를 채집하는 모습. 고래 무덤에는 다양한 심해 생물이 살고 있다./중국 심해과학공학연구소(IDSSE)

◇1200kmを横断する超大型共同墓地

国際共同研究陣は2023年に中国のタンスオイーハオ(探索一号)海洋研究船に乗ってインド洋へ向かい、ディアマンティナ断層帯の海溝と海嶺一帯を32回探査した。海嶺は海底山脈で、海溝は水深6000m以上の谷だ。この地帯は6000万〜5000万年前、オーストラリア大陸と南極大陸が互いに遠ざかりながら形成された。クジラの墓場を見つけたのは有人潜水艇フェンドウジェ(奋斗者、奮闘者)だった。中国が独自開発したこの3人乗り潜水艇は1万m以上潜航できる。

クジラの死骸が浜に打ち上げられたというニュースはしばしば出るが、クジラは死ぬと海底へ沈む。いわゆる「クジラ落下(whale falls)」現象だ。クジラ落下でできた骨の墓場は珍しくないが、ほとんどが水深4km未満で見つかってきた。今回の墓場は水深7km以上に達し、海底を横切って1200kmにわたり広がっていた。最も深く広いクジラの墓場だ。

研究陣は今回、平方キロメートル当たりのクジラが最大759.5頭に達したと明らかにした。ディアマンティナ断層帯全体では1000万頭以上のクジラの死骸が存在するものと推定される。これはクジラの墓場が莫大な炭素隔離地であることを意味する。今回主に発見されたハクジラ類の平均体重を2t、脂質含量を25%と仮定した場合、約670万tの炭素が深海に隔離されたのと同じだと研究陣は説明した。

海洋の炭素隔離は主に、海面近くに生息する海洋生物の破片がゆっくりと深海へ落ちていく形で行われる。粉が落ちる様子がまるで雪が降るようだとして「海洋の雪(marine snow)」と呼ばれる。研究陣は、今回見つけたクジラの墓場は、こうした海洋の雪が約4700年間持続したときの炭素流入量に匹敵する規模だと明らかにした。

中国の探索一号海洋研究船が有人潜水艇フェンドウジャーを降下させる様子(上)。フェンドウジャーは3人乗りの潜水艇で水深1万m超まで潜航できる(下)。国際研究チームは2023年にフェンドウジャーでインド洋水深7000mの深海でクジラの墓場を発見した/ニュージーランド大気水産研究所(NIWA)

◇絶滅した500万年前のクジラ化石も発見

研究陣が発見した最大のクジラの死骸は、全長5mに達するナンキョクミンククジラの骨格だった。水深5610mで見つかった。ハクジラの椎骨3個は6789mで発見された。現生クジラの死骸が見つかった場所としては最大水深を記録した。

クジラの死骸は深海生態系を支えていた。研究陣は今回、クジラの骨でのみ発見されたクモヒトデ3種を確認した。棘皮動物のザイロプラクス(Xyloplax)は、深海に沈んだ木材に依存して生きる動物として知られているが、今回クジラの墓場で発見された。クジラの骨が木材の役割を果たした格好だ。

これまで深海生物は主に深海の温泉である熱水噴出孔の周辺で発見されてきた。クジラの墓場では、熱水噴出孔にいる管虫とオセダックス(Osedax)といった環形動物や甲殻類、軟体動物が出てきた。オセダックスは海洋動物の骨を食べて生きるゴカイで、ゾンビワームや骨食いワームと呼ばれる。

研究陣は、クジラの死骸が熱水噴出孔のように深海生物群集の源泉になり得るという仮説を裏付ける証拠だと明らかにした。英国サウサンプトン大学のジョン・コプレイ(Jon Copley)教授は「熱水噴出孔で繁栄する生物がクジラの死骸を餌にする」と述べ、「クジラの死骸が深海生物にとって島のような生息地の役割を果たす」と語った。

インド洋ディアマンティナ断層帯で採集された絶滅クジラの頭蓋骨化石/中国深海科学工程研究所(IDSSE)

とりわけ研究陣は、530万年前と推定される「プテロケトゥス・ベンゲレァ(Pterocetus benguelae)」という絶滅したハクジラの頭蓋骨も見つけた。さらにプテロケトゥス・ディアマンティネ(Pterocetus diamantinae)と名付けた新たな絶滅ハクジラ種も発見した。放射性同位体年代測定の結果、化石は少なくとも530万年前のものだった。人間にたとえればアウストラロピテクスが活動していた時期である。

どのようにしてハクジラの頭蓋骨化石が500万年以上海水に露出していたにもかかわらず保存され得たのか。米国カルバート海洋博物館のスティーブン・ゴドフリー(Stephen Godfrey)博士は、この日『ネイチャー』に掲載された論評論文で、クジラの骨が完全に分解されないようにした二つの理由を説明した。一つは、もともとクジラの骨が非常に緻密で分解されにくかった点である。これに加え、鉱物コーティングも一役買った。ゴドフリー博士は、海水にある鉄・マンガン酸化物が骨に付着して溶解を防いだと説明した。

参考資料

Nature(2026)、DOI: https://doi.org/10.1038/s41586-026-10546-z

Nature(2026)、DOI: https://doi.org/10.1038/d41586-026-01581-x

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