Onconic Therapeuticsが開発中の次世代抗がん新薬候補「ネスパリブ(Nesuparib、JPI-547)」の転移性膵がん患者を対象とする第1b相試験で確認された完全寛解(CR、Complete Response)と3年以上の長期生存事例を初めて公開した。完全寛解は、画像検査などで確認されていたがん病変がすべて消失した状態を意味する。
Onconic Therapeuticsは米国臨床腫瘍学会(ASCO 2026)の抄録を通じ、進行性・転移性膵がん患者を対象としたネスパリブ第1b・2相のうち第1b相の一部データを公開したと22日明らかにした。実患者を対象にした臨床データを公開するのは今回が初めてである。
ネスパリブは、がん細胞のDNA損傷修復とがん転移を同時に抑制する二重標的の原理をもつ候補物質である。先に米国がん研究学会(AACR)や国際学術誌などを通じて非臨床データを公開した経緯がある。
今回の分析は2025年12月31日までに確保したデータに基づいた。合計27人の転移性・進行性膵がん患者を対象に、既存の標準治療であるジェムシタビン・アブラキサン併用療法(GemAbraxane)またはmFOLFIRINOXとネスパリブを併用投与した。
ネスパリブとジェムアブラクサン(GemAbraxane、ジェムシタビン+アブラキサン)併用群では、客観的奏効率(ORR、腫瘍が一定水準以上縮小した患者の比率)53.8%、疾病制御率(DCR、がんが縮小するかこれ以上増大しなかった患者の比率)92.3%を記録した。
とりわけ患者1人では標的病変のがん細胞が完全に消失した完全寛解が確認され、当該患者は3年以上生存中であることが示された。
生存指標でも肯定的な結果が確認された。ネスパリブとジェムアブラクサン併用群は、分析時点まで相当数の患者でがんがさらに増大したり悪化したりしておらず、患者の平均生存期間は14.2カ月となった。会社側は現在も患者の追跡観察を進めており、実際の生存期間はさらに延びる可能性があると説明した。
別の標準治療であるmFOLFIRINOX併用群でもがん進行抑制と生存期間延長の効果が確認された。患者の半数近くで腫瘍縮小反応がみられ、平均生存期間は18.5カ月と集計された。既存治療と比べ改善の可能性を示す結果だとの評価である。
現在、転移性膵がんの標準治療として用いられるジェムアブラクサン治療は、患者の腫瘍が縮小した比率が約23%、平均生存期間は8.5カ月水準とされる。これに対し、ネスパリブを併用投与した併用療法は腫瘍縮小効果と生存期間の双方で既存治療より良好な可能性を示したとの評価が出ている。
膵がんは治療が難しい代表的な難治がんとされ、完全寛解の事例は稀である。現在、膵がんの治療選択肢が限られるなか、ネスパリブが既存の標準治療と比べて意味のある生存改善の可能性を示したとの評価がある。
医学界ではネスパリブの差別化された原理(機序)に注目している。ネスパリブは現在、膵がん以外にも胃がん・胃食道接合部がん・小細胞肺がんなどで米国食品医薬品局(FDA)の希少医薬品(ODD)指定を受けた。市場では今回の臨床データを機にグローバルな技術輸出や共同開発の議論の可能性に対する期待感もある。
Onconic Therapeutics関係者は「転移性膵がんは代表的な難治がんで治療選択肢が限られる」と述べ、「完全寛解と3年以上の長期生存事例は、ファースト・イン・クラス(first-in-class・世界初の作用原理による革新新薬)の可能性を示す意味のある結果だ」と語った。続けて「現在進行中の第2相試験の開発にも速度を上げる計画だ」と明らかにした。