アフリカでエボラ出血熱の患者が増えているが、医療従事者が十分に対応できていない。専門家は、現地の内戦と米国の世界保健機関(WHO)脱退により防疫網が弱体化したと懸念している。これまで発生してきたエボラとは異なるウイルス種が原因で、治療薬やワクチンはもちろん、診断キットもない。アフリカの低開発国でのみ患者が出ており、グローバル製薬企業が乗り出す経済的誘因も乏しい状況だ。医療危機が政治経済的要因でさらに深刻化しているということだ。
17日(現地時間)、世界保健機関(WHO)はアフリカのコンゴ民主共和国(民主コンゴ)とウガンダ一帯で拡散中のエボラウイルス感染に関連して「国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態(PHEIC)」を宣言した。ワクチンと治療薬がないウイルスが国境を越えて拡散する兆しを見せたため、最高水準の警報を発令し、国際社会の共同対応を促した。
エボラ出血熱はエボラウイルスが原因の重篤な感染症で、頭痛や筋肉痛、発熱、全身の倦怠感を経て、後に全身性の出血が現れ、致死率は60%に達する。1976年に民主コンゴのエボラ川近くで初めてウイルスが発見され、こうした名称が付いた。果実コウモリやチンパンジーなどの野生動物から人間に伝播し、感染者の血液や体液への接触を通じた人から人への感染も可能だ。医療従事者の感染事例が多いのもこのためである。
◇治療法とワクチン、診断キットもない
WHOは5日、民主コンゴでエボラが発生したとの通報を受けた。ある医療従事者が4月24日に発熱と出血などエボラ感染の症状を示した。その後、民主コンゴでのエボラ確定患者2人が隣国のウガンダに入国し、同地でも感染事例が報告された。両国とも先週、発病を公式に宣言した。
エボラウイルス属(屬)は大きく6種がある。このうち4種が人に出血熱を引き起こす。米国疾病対策予防センター(CDC)は17日現在、「ブンディブギョ(Bundibugyo)」というエボラウイルス種に感染した疑いの事例が336件、関連死者が88人だと明らかにした。ブンディブギョ種の感染者は20〜50%の致死率を示す。
特に同じ病院で医療従事者が4人死亡し、以前と同様にウイルスが医療現場で拡散したとみられる。WHOによると、2014年に約1万1300人が死亡した最悪のエボラ感染事態当時、全感染者の10%が医療従事者だった。当時、医療従事者は500人以上が死亡した。
問題は、2014年の大規模感染事態を引き起こしたザイール(Zaire)種に対しては既にワクチンが2種類あるが、ブンディブギョ種に対してはワクチンも治療法もないという点だ。医療現場で使用する迅速診断キットも、より一般的なザイール種を検出するように作られている。
オーストラリアのニューサウスウェールズ大の疫学者、レイナ・マッキンタイア(Raina MacIntyre)教授は18日、国際学術誌ネイチャーに「エボラウイルスの潜伏期は短くて2日、長ければ21日にもなるため、これまで報告された感染者数を考慮すると、すでに数カ月間ウイルスが拡散していた可能性が高い」と語った。
◇政治的状況が防疫を弱体化
折しも現地の医療従事者はエボラ感染者の探索に集中できなかった。現在、エボラ拡散地域では医療従事者が既に麻疹やエムポックス(Mpox)、マラリアといった他の感染症に対応しており、余裕がない状況だ。政治的状況もエボラ拡散に一役買った。ニュージーランドのオークランド大の微生物学者、スージー・ワイルズ(Siouxsie Wiles)教授は、現地で内戦を逃れて避難する人口が多く、長い間ウイルスが検知されずに広がったはずだと明らかにした。専門家は、年初に米国がWHOを脱退したこともWHOの感染症対応力を萎縮させたとみる。米国が資金支援を中断すると、WHOは今年の予算を大幅に削減し、全職員の4分の1を減らすリストラを行っている。
現時点ではエボラが世界中に広がる可能性は低い。新型コロナウイルス感染症(コロナ19)のように呼吸器で拡散しないため、感染者だけを適切に抽出して隔離すれば拡大を防げる。製薬企業はエボラ患者がアフリカで主に発生するため、ワクチン開発に積極的に乗り出してこなかった。
しかし、感染地域を旅行した人や宿主動物が他大陸へ移動すれば状況は変わる。1995年に公開された映画『アウトブレイク』は、米国サンフランシスコの検疫所職員がアフリカで密輸されたサルを横流しし、各所で人々が血を吐いて死亡する様子を描いた。専門家は、ウイルスが先進国に広がる可能性が全くないわけではなく、コロナ19のmRNA(メッセンジャーリボ核酸)ワクチンのように迅速開発できる技術もあるため、ブンディブギョ種エボラウイルスのワクチン開発を急ぐべきだと助言する。
幸い、1月に英国のオックスフォード大は、mRNAコロナワクチンを開発した米製薬企業モデernaと、エボラウイルスやマールブルグウイルスなど致命的な出血熱を引き起こし得る複数のフィロウイルス科(科)を同時に攻略するワクチン候補物質の開発に着手したと発表した。専門家は、開発費を迅速に増額し、臨床試験の規制を緩和してワクチン開発の速度をさらに高めるべきだと明らかにした。