最近の医学論文で架空の参考文献が急増していることが判明。/ChatGPT生成画像

医学論文に掲載された参考文献にも偽物が急増していることが明らかになった。金銭を受け取り偽の論文を作成する「論文工場(paper mill)」が繁盛していることの反証である。研究データが改ざんされた偽論文が摘発される事例はしばしばあったが、論文に引用された参考文献のうち、どの程度が偽物かを確認したのは今回が初めてである。

米国コロンビア大学看護学部のマクシム・トパズ(Maxim Topaz)教授の研究チームは「査読を経て出版された医学論文の中から、実在しない参考文献4046件を摘発した」と9日(現地時間)、医学専門学術誌「ランセット」に発表した。

◇246本は偽の参考文献が3件以上

コロンビア大学の研究チームは2023年1月1日から今年2月18日までにパブメド・セントラル(PubMed Central)に掲載された論文250万本で引用された参考文献1億2560万件を検査する人工知能(AI)検証システムを開発した。パブメド・セントラルは生命科学分野の無料論文データベースである。

AIによる検証は、デジタルコンテンツに付与される固有識別番号である「デジタルオブジェクト識別子(DOI)」を持つか、パブメドのデータベースで割り当てられたIDを持つ参考文献9700万件に集中した。調査の結果、論文2810本で虚偽の引用4046件を確認した。分析の結果、偽の参考文献が1〜2件含まれる論文が2564本で、偽の参考文献が3件以上含まれる論文も246本に上った。

論文に偽の参考文献が含まれる事例は最近急増した。2025年は2023年より12倍多かった。研究チームは「AI執筆ツールの普及と相まって2024年半ばから最も急激な増加傾向を示した」と説明した。英国の研究情報管理会社デジタル・サイエンス(Digital Science)のキャサリン・ウェバー=ボーア(Kathryn Weber-Boer)研究員もAIを疑った。

ウェバー=ボーア研究員はネイチャーに「偽の参考文献がコンピューターによって操作されたのか、それとも人間によって操作されたのかは依然として分からない」としつつも、「最近この種の問題が増加している趨勢は生成型AIの影響があることを示唆する」と述べた。

偽の参考文献を含む論文は2023年を通じて1万本当たり4本で推移したが、2024年半ばから比率が急騰。2026年初めには1万本当たり57本に達した。/ランセット

◇患者診療に悪影響を及ぼす可能性

偽の参考文献が増えると深刻な問題になる。論文が自らの研究結果を裏づけるために引用した文献が偽物であれば、当該論文の科学的根拠も脆弱にならざるを得ない。偽論文が別の偽を生む悪循環が避けられない。とりわけ医学論文は患者治療に直結するという点で、場合によっては致命的な結果を招く可能性がある。

トパズ教授は「医療従事者が論文に示された臨床ガイドラインに基づいて治療の意思決定を行うという点で、患者に直接的な影響を及ぼす」と語った。偽論文を引用した論文が患者に的外れな治療を促す恐れがあるということだ。トパズ教授は「われわれが精査したある論文に含まれた参考文献30件のうち18件が偽物だった」とし、「その一部はすでに他の論文で引用されており、臨床診療の参考となるレビュー論文にも掲載された」と述べた。

それにもかかわらず学術誌は何らの措置も講じていなかったことが判明した。調査当時、問題のある論文のうち98.4%は出版社からいかなる措置も受けていなかったと研究チームは明らかにした。同日併載された論評論文で、ハワード・ボークナー(Howard Bauchner)・ボストン大学医学部教授とフレデリック・リバラ(Frederick Rivara)・ワシントン大学医学部教授は「今回の研究は研究倫理を改善する必要性を示した」と述べた。

トパズ教授の研究チームは今回の研究結果に基づき、出版社が論文を掲載する前に参考文献まで検証すべきだと勧告した。あわせて、論文索引サービスを提供する企業も、利用者が参考文献の正確性を評価できる追加情報を提供すべきだと提案した。

参考資料

Lancet(2026), DOI: https://doi.org/10.1016/S0140-6736(26)00603-3

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