大型サーバーに依存していた高性能人工知能(AI)をスマートフォンでも実装する道が開かれた。
ノ・ジュンソクPOSTECH機械工学科・化学工学科・電子電気工学科・融合大学院教授の研究チームが、性能を維持しながらAIの演算量を99%以上削減する技術を開発したと7日明らかにした。今回の研究は中国の清華大学深圳国際大学院、ハルビン工業大学、香港城市大学の研究チームと共同で実施され、国際学術誌「ネイチャー・コミュニケーションズ」に3月に掲載された。
研究チームが注目したのは「複素値ニューラルネットワーク」だ。一般的なAIが主に数値の大きさ情報を扱うのに対し、複素値ニューラルネットワークは信号がいつ到達したかを示す位相情報まで併せて処理できる。このため、ホログラム、無線通信、レーダー画像解析のように精密な信号処理が必要な分野で活用可能性が大きい。
ただし複素値ニューラルネットワークは計算量が多く小型機器で使いにくいという限界があった。既存のAI軽量化技術である量子化も主に一般的なニューラルネットワークを基準に設計されており、複素値ニューラルネットワークに適用すると位相情報が乱れ、性能が低下する問題があった。
研究チームはこれを解決するため、複素数を成す実数部と虚数部を別々に圧縮せず一緒に考慮する「共同量子化」手法を開発した。ここに、重要な部分は高い精度で維持し、重要度の低い部分は低い精度で処理する適応型混合精度学習戦略を加えた。
実験の結果、ホログラム生成分野で既存の最先端モデルであるHolo-Net(ホロネット)比で演算量は99.1%、メモリ使用量は99.8%削減した。映像品質を示すPSNR指標は約4dB向上した。音声・無線信号の分類とレーダー目標識別においても、演算量を85%以上削減しつつ精度は維持した。
スマートフォンでの実行実験では、従来より最大389倍の高速化を記録した。研究チームは、今回の技術が軽量拡張現実(AR)・仮想現実(VR)ホログラム、自動運転車レーダー、次世代通信網、携帯型医療機器などリアルタイム信号処理が必要な分野に活用できると見ている。
ノ・ジュンソク教授は「大型サーバーでしか不可能だった高性能物理演算AIをスマートフォンや小型機器内に持ち込める可能性を確認した」と述べ、「電磁気学、熱力学、量子物理など計算負担の大きい分野で軽量AI活用の基盤になる」と語った。
参考資料
Nature Communications(2026)、DOI: https://doi.org/10.1038/s41467-026-70319-0