人工知能(AI)が知的ゲームである囲碁で世界最上位の選手を超えてから10年が過ぎ、いまや身体を使うスポーツでもエリート選手を打ち破った。AIで駆動するロボットが公式ルールに則って行われた試合で卓球選手を相次いで破ったためだ。これまでも卓球ロボットは存在したが、エリート選手に勝ったのは今回が初めてである.
スイス・チューリヒのソニーAIは「自律AIロボットのエース(Ace)が日本プロ卓球リーグ規定の下でエリート卓球選手5人と対戦し、3回勝利した」と2026年4月23日、国際学術誌「ネイチャー」に表紙論文として発表した。エースが対戦した選手はプロではないが、全員が少なくとも10年以上の経歴を持ち、週20時間ずつ訓練してきた選手だった.
論文によれば、エースはプロ選手2人との対戦ではいずれも敗れた。1セットを奪う成果のみを上げた。しかしソニーAIはネイチャーに論文を提出した後、エースの能力をさらに向上させ、プロ選手も撃破したと明らかにした。現在エースは10年前のアルファ碁の位置に到達したという意味である.
◇カメラとセンサーで卓球球を検知
エースは8個の関節を備えたロボットアームだ。自動車を組み立てる産業用ロボットアームのような外観である。ロボットは卓球コートを取り囲むカメラと加速度、視覚センサーネットワークの助けを受け、卓球球の位置を3D(立体)で把握し、加速度と回転を検知する.
ソニーAIは、エースが自律ロボット工学分野で三つの主要な進展を成し遂げたと説明した。まず「イベントベースセンサー」を使用する点が特徴だ。ロボットがカメラで捉えた画像のうち特定の領域、すなわち卓球球の軌跡を追跡するうえで重要な動きや明るさの変化を示す部分に集中することを意味する.
第二に、ロボットの卓球技術が囲碁AIアルファ碁を開発する際に用いた「強化学習」で構築された点である。エース開発を率いたスイス・チューリヒのソニーAIのピーター・デュル(Peter Dürr)博士は「AIは卓球をどうすべきかを学ぶのではなく、シミュレーション(模擬実験)ゲームの経験を通じて学習する」と説明した。言い換えれば、子犬に特定の行動を繰り返し説明するよりも、その行動をしたときに称賛や餌といった報酬を与えるのと同じだ.
最後に、研究陣はエースが人間水準の敏捷性で試合ができるよう高速ロボットハードウェアを適用したと説明した。デュル博士は、アスリートが反応するのに約0.23秒かかるが、エースの反応遅延時間は0.020秒に過ぎないと述べた.
エースと対戦した選手は、サーブの動作を隠そうとしたが、エースが回転をすぐに感知して対応したことに驚いたと語った。とりわけエースはネットに当たって跳ね返った球も拾った。開発者すら予想できなかった技術だった。デュル博士はAIから自発的に生じた能力だと述べた.
専門家は、今後AIが人間の能力を極大化するうえでも助けになると期待した。1992年バルセロナ五輪に出場した日本の卓球選手ナカムラ・キンジロウは今回の論文で「エースが放った特定のショットは、それ以前は不可能だと考えていた」とし「しかしそれが可能だったという事実は、人間もできる可能性を意味する」と述べた.
◇ゲームを超え肉体スポーツでも人間凌駕
エースの成功は、AIが知的ゲームを超え、肉体スポーツ分野でも人間を上回る瞬間が近づいていることを示す。先に1997年、IBMのAIスーパーコンピューターであるディープブルーがチェスの試合で世界チャンピオンのガリー・カスパロフを破り、グーグル・ディープマインドの囲碁AIアルファ碁は2016年のイ・セドル九段との囲碁対局で4勝1敗で勝利した.
デュル博士は「チェスや囲碁のような知的ゲームは長らくAIの能力を示す試験台の役割を果たしてきた」とし「これまでのAIのマイルストーンはオンラインで行われたが、エースは実際の現場でプロの卓球チャンピオンと対峙して善戦した点で重要な前進を示す」と述べた.
ソニーAIは過去1年間、エースの能力を継続的に向上させたと明らかにした。研究陣は、エースが2025年12月に初めてプロ選手を破り、2026年3月には世界卓球ランキング25位圏の女子プロ選手キハラ・ミユと、男子プロ選手リュウザキ・トウニン、イガラシ・フミヤを相手に勝利を収めたと明らかにした。デュル博士は「今後、世界チャンピオンを上回ることも可能だ」と述べた。研究陣は、今後エースがヒューマノイド(人間型ロボット)形態でも実装されると明らかにした.
ソニーAIの主席科学者であるピーター・ストーン(Peter Stone)博士は「今回の成果は卓球をはるかに超える意味を持つ」とし「精密さと速度が要求される複雑で急変する実世界の環境でAIが専門家水準の能力を発揮すれば、これまで到達できなかった全く新しいタイプの実世界の応用分野への扉が開く」と述べた.
ブラジル・カンピナス州立大学コンピューティング研究所のエステル・コロンビニ(Esther Colombini)教授も、この日ネイチャーに併載された論評論文で「機械であれば主に力に依存すると予想したが、エースは人間より速いショットではなく、多様な種類の回転と球を打ち返す一貫性でその成績を収めた」とし「エースは物理的環境と相互作用する次世代AIの潜在力を示す重要なマイルストーンだ」と評価した.
参考資料
Nature(2026)、DOI: https://doi.org/10.1038/s41586-026-10338-5