緑内障患者の眼圧変化を検知し治療まで可能なスマートコンタクトレンズが開発された。/シャッターストック

緑内障患者の眼圧変化を感知し治療まで可能なスマートコンタクトレンズが開発された。金属センサーや電子回路を用いず、既存のソフトレンズと同様に柔らかい高分子材料のみで作られており、装用感に優れ視界も遮らない。動物実験で立証された有効性が人体対象の臨床試験でも確認されれば、緑内障治療に新たな道が開かれると期待される。

ヤンジ・ジュ(Yangzhi Zhu)米国テラサキ生物医学イノベーション研究所教授の研究チームは「眼圧を測定し治療薬を自動放出するスマートコンタクトレンズを開発し、動物実験で有効性と安全性を確認した」と8日(現地時間)に国際学術誌「サイエンス中継医学(Science Translational Medicine)」に発表した。診断用試薬と治療薬が眼圧変化に応じて移動するという単純な物理現象を利用することで、既存のスマートコンタクトレンズのような金属製センサーや電子回路、バッテリーが不要だと研究チームは明らかにした。

緑内障は眼内の体液がうまく排出されずに蓄積し、眼圧が高くなる疾患である。強い痛みと視神経の損傷を引き起こし、重症の場合は視力を失うこともある。現在、世界で7000万人が緑内障を患っており、高齢化が加速するなか2040年までに患者数が1億3400万人に達する見通しだ。緑内障は完治が難しいが、早期診断と治療によって視力低下を遅らせ、生活の質を維持できる。各国は眼圧をリアルタイムで追跡し、薬物を自動放出するスマートコンタクトレンズの商用化に向けて激しい競争を繰り広げている

高分子材料のみで作製したリアルタイム眼圧測定・薬物放出用コンタクトレンズ(AP-TSCL)。(A) 目にスマートコンタクトレンズを装用した様子。(B) 人工眼に装着したスマートコンタクトレンズ。黒は眼圧検知装置、青/緑は薬物送達用リザーバー。(C) 眼圧検知部と薬物送達部を統合したコンタクトレンズの多層構造。(D) 動作原理:眼圧(IOP)が上がり角膜が変形すると液体(赤)が移動して検知。同時に治療薬(青)が放出される。/資料 サイエンス・トランスレーショナル・メディシン

◇診断試薬と治療薬ポケットを備える

米国ロサンゼルスにある非営利研究機関のテラサキ研究所は、コンタクトレンズを診断・治療用医療機器として開発した。現在のように6〜12カ月ごとに病院で検査する方法では、変動が大きい緑内障患者の眼圧を正確に把握しにくい。コンタクトレンズは常時装用しているため眼圧をリアルタイムで測定できる。何より今回のスマートコンタクトレンズは既存のソフトレンズと同じく高分子材料のみで作られており、装用感が同等だと研究チームは述べた。

スマートコンタクトレンズは、外側と内側の保護層の間に診断用試薬と治療薬が入ったポケットを備える構造である。眼圧が上がると角膜が膨張する。すると試薬ポケットが圧縮され、蛇のような形状の微小管に沿って移動する。試薬が移動した距離は眼圧の数値と比例する。患者がスマートフォンのカメラで眼を撮影すると、人工知能(AI)が正確な眼圧値を知らせる。

ポケットはシルク素材のスポンジ構造で薬剤を多く含有できる一方、微小管が潰れないよう支えて眼圧測定の精度を高める。眼圧が上がると同時に治療薬ポケットも圧縮される。眼圧が基準値を超えると通路が開き、眼圧を下げる薬剤が放出される。外部機器からの信号がなくても薬剤が自動放出されるというわけだ。

薬剤はチモロールとブリモニジンの2種類を別々に入れ、眼圧に応じた段階的治療が可能となるようにした。研究チームは生体のウサギの眼にコンタクトレンズを装着し、眼圧を安定的に追跡し、基準圧力値を超えると薬剤が自動放出されることを確認した。ジュ教授は「今回開発した技術は市販中のソフトレンズに直ちに適用でき、さまざまな眼科疾患の診断と治療に用いることができる」と明らかにした。今回の研究にはソウル大材料工学部のイ・テウ教授に加え、中国、香港、英国、カナダの研究者も参加した。

ポステク研究チームが開発したスマートコンタクトレンズ。/ポステク

◇韓国の緑内障スマートレンズ、今年臨床試験

眼科疾患の診断用スマートコンタクトレンズは2010年代から開発が進んだ。米国グーグルはスイスの製薬企業ノバルティスと、糖尿病患者の血糖を測定するコンタクトレンズを開発し、スイスのセンシメッドが開発した緑内障患者用コンタクトレンズは2016年に米国で市販許可を得た。このレンズは眼圧変化のみを測定する。今後は診断はもちろん薬剤まで送達するスマートコンタクトレンズが商用化される見通しだ。韓国企業がその先頭にいる。

汎部処全周期医療機器研究開発事業団は昨年2月に「2025年10大代表課題」を選定して発表した。このうちの一つがPHI BIOMEDの緑内障診断治療用スマートコンタクトレンズだ。PHI BIOMEDはポステック新素材工学科のハン・セグァン教授が2014年に設立した会社である。PHI BIOMEDは緑内障の診断に金ナノワイヤを使用した。

眼圧が上がると角膜の曲率が微細に変化し、これに伴ってナノワイヤの形状も変わり電気抵抗が変化する。この抵抗値を無線で測定し、眼圧変化をリアルタイムで感知できる。眼圧が高くなるとコンタクトレンズが治療薬であるチモロールを眼に送達する。

ハン教授は、金ナノワイヤセンサーは既存のスマートコンタクトレンズに用いられた金属リングセンサーより感度と透明度の両方で優れていると明らかにした。既存のスマートコンタクトレンズに入った金属リングは肉眼でも見えるが、ナノワイヤセンサーは目に見えない大きさであるためレンズはほぼ透明だ。ハン教授は先に2022年にネイチャー・コミュニケーションズに関連研究成果を発表し、世界的な注目を集めた。動物実験はすでに終えており、今年から人体対象の臨床試験を進め、早ければ2027年に商用化する計画である。

日本の早稲田大学研究陣が開発した緑内障の眼圧測定用スマートコンタクトレンズ。感度は従来法比で183倍に向上した。/日本・早稲田大学

◇日本の研究チーム、センサー感度を183倍に高める

スマートコンタクトレンズのセンサー感度を高める競争も激しい。日本の早稲田大学のミヤケ・タケオ(Takeo Miyake)教授の研究チームは1月、眼圧測定感度を従来研究より183倍高めたスマートコンタクトレンズを発表した。ハン・セグァン教授と同様に、眼圧が上がって角膜が微細に膨張すると金属センサーの電気抵抗が変化することを無線で感知する原理だ。

コンタクトレンズのセンサーと外部の読取装置は近距離磁気共鳴でエネルギーを授受する。研究チームは「パリティ・時間(PT)対称」という最新技術でセンサー感度を高めた。早稲田大の研究チームは、レンズセンサーの損失回路と読取装置の利得回路が鏡のように対称を成すようにした。まるでブランコに乗る人と押す人のように、エネルギーをやり取りするリズムを完全に一致させることで、小さな変化を大きく増幅する技術である。

そのおかげで微細な変化も即座に感知できると研究チームは説明した。一般的なセンサーが非常に重い岩の上にある玉を動かすようなものだとすれば、PT対称センサーは尖った鉛筆の先に危うく立っている玉のようなものだ。軽い風でも玉が倒れる。微細な眼圧変化もすぐに感知するという意味である。早稲田大の研究チームはウサギの眼にレンズを装着して性能を実証した。

参考資料

Science Translational Medicine(2026), DOI: https://doi.org/10.1126/scitranslmed.ads9541

npj Flexible Electronics(2026), DOI: https://doi.org/10.1038/s41528-025-00507-3

Nature Communication(2022), DOI : https://doi.org/10.1038/s41467-022-34597-8

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