米国航空宇宙局(NASA・ナサ)が初めて火星に原子力宇宙船を打ち上げる。深宇宙探査に原子力推進船を使えるかを検証する狙いである。原子力推進船はヘリコプター3機を火星に降下させる計画だ.
ナサは「2028年末以前に原子力推進宇宙船『スペースリアクター-1 フリーダム(Space Reactor-1 Freedom)』を火星に打ち上げる」と24日(現地時間)ワシントンDC本部で発表した。これまで原子力推進宇宙船が打ち上げられたことは一度もなかった.
◇核分裂エネルギーで動力用電力を生産
原子力推進宇宙船は原子力発電所と同じ方式で作動する。原子力発電はウランの核分裂連鎖反応で生じる莫大な熱エネルギーを利用して水を沸かし、高温・高圧の蒸気をつくる。この蒸気がタービンを回し発電機を駆動して電力を生産する.
原子力推進宇宙船は同じ方式で生産した電力で帯電したイオンをつくる。噴射口の端で反対の電気をかけるとイオンがそちらへ移動し推進力が発生する。いわゆる原子力電気推進(Nuclear Electric Propulsion, NEP)方式である.
ナサはスペースリアクター-1 フリーダム任務が原子力推進が宇宙船に動力を供給できることを立証し、将来の核分裂動力システムのための産業基盤を活性化すると明らかにした。ここには太陽系外縁にある惑星や天体へ向かう探査任務も含まれ得る.
従来の宇宙船ではそのように遠い天体を探査することは不可能である。莫大な量の液体燃料を積んで行くことができないためだ。ただしボイジャー(Voyager)やジュノー(Juno)のように、バッテリーや太陽光で駆動できるほど小さな宇宙船だけが太陽系外縁領域に到達できた.
1977年にナサが打ち上げた無人探査機ボイジャー号は「放射性同位体熱電発電機(RTG)」という原子力バッテリーで作動する。放射性同位体が核分裂して生じる熱は熱電素子を経て電力に変わる。熱電素子は温度が変わると電流を発生させる装置である.
ボイジャーは原子力バッテリーのおかげで太陽電池が役に立たない太陽系の果てでも作動している。木星探査機ガリレオ号、土星探査機カッシーニ号、火星探査ローバー(移動型探査ロボット)キュリオシティにも同じバッテリーが搭載された。今回発表された原子力推進宇宙船は商用原発と同じ方式という点で原子力バッテリーとは原理が異なる.
◇ヘリ3機で有人探査用の情報を収集
原子力推進宇宙船は火星に到着し、ヘリコプター3機を搭載した「スカイフォール(Skyfall)」搭載体を投下する計画だ。ナサは2021年に火星へ四輪で移動するローバー、パーサヴィアランス(Perseverance)と超小型無人ヘリコプター、インジェニュイティ(Ingenuity)を着陸させた。火星探査ロボットは以前にもあったが、火星の空を飛んだヘリコプターは初めてだった。ローバーは依然として作動しているが、ヘリは2024年1月に墜落して任務が終了した.
ナサは原子力推進船が送るヘリコプターはインジェニュイティをモデルに製作されると明らかにした。インジェニュイティは2021年4月から2024年1月まで72回の飛行を実施した。インジェニュイティが技術実証用だったのに対し、スカイフォールのヘリコプター編隊は具体的な科学探査任務を遂行すると見込まれる.
先に米宇宙企業エアロバイロンメント(AeroVironment)は2025年7月24日の声明で「火星に偵察ヘリコプター6機を配備するスカイフォールを設計した」とし「ヘリコプターは米国初の火星宇宙飛行士のための最優先着陸候補地に選定した複数の地点を探査する」と明らかにした。この日ナサが発表したウェブキャストによれば、スカイフォールが搭載していくヘリコプターは3機に縮小された.
エアロバイロンメントは「火星を探査する間、各ヘリコプターは独立して運用される」とし「高解像度の表面映像と地下レーダーデータを地球へ送信して分析することで、有人探査船が水・氷およびその他の資源が最も豊富な地域に安全に着陸できるよう支援する」と述べた.
◇3段階の月有人基地建設案も発表
ジャレッド・アイザクマンナサ局長はこの日、今後10年間の計画は米国人が宇宙探査任務に再び信頼を持つようにすることを目標とすると明らかにした。ナサは米国が1972年のアポロ17号以来中断していた有人月探査をアルテミス計画で再開した.
来月1日に打ち上げられるアルテミス2号は初めて宇宙飛行士4人を乗せて月周回試験飛行を実施する。先立つ2022年のアルテミス1号任務は、マネキンを乗せたオリオン宇宙船が月周回を行う無人試験飛行として進められた.
宇宙飛行士の月面着陸は2028年に修正された。当初宇宙飛行士を月に降ろす予定だったアルテミス3号は2027年に地球周回軌道で月着陸船とのドッキング(結合)などを試験し、翌年アルテミス4号が宇宙飛行士を月に着陸させる計画だ。ナサは「アルテミス5号からは6カ月ごとに月へ有人探査船を着陸させる計画だ」と明らかにした.
ナサは月の有人基地建設にも本格的に取り組むと明らかにした。アイザクマン局長はこの日、宇宙企業や各国宇宙機関の関係者、議員らの前で「地球外で人類初の恒久的な表面前哨基地を建設するための進化的なプロセスがある」と述べた.
ナサは月に持続的な人間の拠点を確保するため、段階的アプローチを推進すると発表した。この戦略の一環として、これまで進めてきた月周回拠点ゲートウェイ(Gateway)プロジェクトを一時中断し、月面探査を継続的に推進できるよう支援するインフラ整備に重点を移す計画だと明らかにした.
ナサは第1段階として民間企業主導で月探査機と探査車、計測機器などを送る。ここには原子力バッテリーも含まれる。第2段階は半居住型インフラと定期的な物資輸送体制を構築し、月面での宇宙飛行士の探査活動を支援する.
このとき月面探査車はオープン型から密閉型に変わる。日本の宇宙航空研究開発機構(JAXA)の加圧型ローバーも第2段階に含まれる。かつてアポロ宇宙飛行士は車輪だけのローバーに乗ったが、トヨタ自動車が開発中のアルテミス加圧式ローバーは屋根が備わっており宇宙服なしで搭乗できる.
第3段階は本格的な長期滞在基盤を整える過程である。着陸船は宇宙飛行士と貨物を同時に輸送して月に持続的な拠点を確保する。この段階ではイタリア宇宙機関(ASI)が開発中の多目的居住モジュールとカナダ宇宙庁(CSA)の多目的月面探査車も含まれる.
AeroVironment(2025)、https://www.avinc.com/resources/press-releases/view/av-reveals-skyfall-future-concept-next-gen-mars-helicopters-for-exploration-and-human-landing-preparation