ドナルド・トランプ米国大統領とバラク・オバマ前大統領の応酬をきっかけに、宇宙人をめぐる論争が再燃している。オバマ前大統領が最近のポッドキャストで「宇宙人は本物だ」という表現を用いると、トランプ大統領は「機密情報を漏えいした」と批判した。政治的な舌戦は急速に拡大し、オンライン上では「政府が何かを隠しているのではないか」という疑念と「科学的にあり得る話にすぎない」という反論が交錯した。
トランプ大統領は、地球外生命体と未確認航空現象(UAP)に関する政府文書を公開する手続きを開始すると明らかにした。UAPは従来の未確認飛行物体(UFO)より広い公式用語で、空中・宇宙・水中などで識別されない異常現象を包含する。
しかし政治的な応酬とは別に、科学界の立場は比較的明確だ。「宇宙のどこかに生命体が存在するか」については可能性を開いて研究を続けており、「地球外生命体が地球を訪れたか」についてはまだ検証された証拠がないというのが結論である。
◇ 仮説から統計へと変わった地球外生命体論争
1990年代までは太陽系外の惑星、すなわち系外惑星の存在は仮説に近かった。だが現在は米航空宇宙局(NASA)のアーカイブ基準で系外惑星6107個が確認されており、このうち一部は液体の水が存在し得る「居住可能領域」に位置すると分析される。惑星数が指数関数的に増え、「どこかで知的生命体が生まれた可能性がある」という議論は統計的な問題へと変わった。
この議論を代表するのがいわゆる「ドレイク方程式」である。これは天の川銀河に交信可能な文明がいくつ存在するかを推定する思考実験に近い。恒星の数や惑星を持つ比率、生命が発生する確率、知的生命へ進化する確率など複数の変数を掛け合わせる方式だ。近年の研究者は恒星数や惑星数のように観測で確認できる要素を実データに置き換え、漠然とした推定より狭めた確率ベースの議論を試みている。
2016年、米国の天文学者アダム・フランクとW・T・サリヴァンはドレイク方程式を修正し、系外惑星の資料を基に「宇宙史全体で人類以外の技術文明が一度も存在しなかった確率」を算出した。これにより、技術文明が生まれる可能性が極端に低くさえなければ、人類が宇宙史上唯一の事例である可能性は低いとみなした。
一方で慎重論もある。2020年、デイビッド・キッピングコロンビア大学教授は、地球では生命が比較的早期に出現した一方、人間のような知的生命ははるかに遅れて現れた点に注目した。そしてこれを統計的に分析し「生命自体は比較的ありふれているかもしれないが、知性の進化はそうではないかもしれない」という解釈を示した。平たく言えば、微生物は宇宙の至る所に存在する可能性があるが、われわれのように文明を築いた存在は稀少かもしれないという意味だ。
ただしキッピング教授は「地球で起きた事象に基づく統計的確率だけを提示できるにすぎない」とし、「地球の彼方の世界で知的生命体を探す努力を決して放棄してはならない」と強調した。
◇「ありそうなのになぜ見えないのか」…フェルミのパラドックスと観測競争
この地点でしばしば言及される概念が「フェルミのパラドックス」である。フェルミのパラドックスは、平たく言えば宇宙には恒星と惑星が極めて多いため文明が複数存在していてもおかしくないのに、なぜわれわれはまだその痕跡を明確に発見できていないのかという問いだ。このパラドックスは地球外文明の存在を否定する主張というより、より精密な観測とより多くのデータが必要だという科学的課題を投げかける概念に近い。
これを受けて観測と探査のプロジェクトが活発に進んでいる。NASAは数十年にわたり多額の予算を投じて宇宙生命体の探査に取り組んできた。最近は木星の衛星エウロパの居住可能性を探るためエウロパ・クリッパーを打ち上げ、土星の衛星タイタンの環境を調査する飛行探査機「ドラゴンフライ」も推進中だ。さらに2030年代を目標に、より強力な次世代観測宇宙望遠鏡「居住可能世界観測所(HWO)」を開発している。
アヴィ・ローブハーバード大学教授は小型望遠鏡と観測装置のネットワークを活用し、上空を通過するUAPを観測するガリレオ・プロジェクトを進めている。地球外知的生命探査(SETI)の分野でも、地球に到達する電磁信号を探知しようとする小規模プロジェクトが続いている。
ただし現在まで、米国政府の公式報告書や調査結果の中で地球外文明が地球を訪れたという確定的証拠を提示した例はない。米国防総省全領域異常現象解決室(AARO)とNASAが組織したUAP専門家パネルは、ここ10年余りで多数の未確認現象を記録したが、これを地球外の技術や地球外生命体と結論づけてはいない。
NASAはUAPに関するFAQで「高品質の観測データが不足しており科学的結論を出しにくい」と明らかにし、AAROは「現在まで検証可能な地球外の存在または活動、技術の証拠を発見していない」と述べている。