乳がん検診に人工知能(AI)を活用すると悪性がんの発症率が12%低下し、早期発見の可能性が高まるという研究結果が示された。今回の結果は初めて10万人以上が参加した大規模臨床試験で示されたもので、今後、乳がん診断におけるAIの活用度が大きく高まると見込まれる。
スウェーデンのルンド大学がん病院のクリスティーナ・ラン教授の研究チームは「国家乳がん検診プログラムで実施した臨床試験の結果、AIが画像を分析した検診が従来の標準乳がん診断よりも効果的であることが示された」と31日、国際学術誌「ランセット」に発表した。
◇攻撃性の高いがんを早期診断、医師の負担も44%軽減
研究チームは、今回の研究ががん検診におけるAI活用効果を検証した研究の中で最大規模だと明らかにした。今回の臨床試験は2021年4月から2022年12月までスウェーデンでマンモグラフィ検診を受けた女性10万5934人を対象に実施した。臨床試験参加者の平均年齢は55歳だった。参加者は、AIが撮影画像を分析して医師を支援する検診グループと、放射線科医2人が読影する欧州標準診断グループに無作為に割り付けられた。
疾患診断の正確性には2つの指標がある。感度(sensitivity)は、疾病がある人を「ある」とどれだけ正確に判定するかを意味し、特異度(specificity)はその逆で、疾病がない人を「ない」とどれだけ正確に判定するかを指す。臨床試験の結果、感度はAI支援グループで80.5%、医師2人が行う標準診断で73.0%となった。これはAIの支援を受けると、がんを見逃さずに見つける正確性が高まることを意味する。特異度は両グループでほぼ同じだった。疾病がない人をがん患者と誤認する割合はAI支援グループが1.5%、対照群が1.4%だった。
とりわけAI支援検診を受けたグループでは、検診後数年間の間隔がんの診断率が12%減少したことが示された。間隔がんは検診の合間に発見されるがんで、前回の検診では異常がなかったが次回の検診前にがんと判定されるケースを指す。AI支援グループでは女性1000人当たり1.55件のがんが見つかったのに対し、対照群では1.76件が見つかった。
間隔がんは乳がんで一般的で、非常に速く成長し攻撃的である。身体の他部位に転移する可能性も高い。このようなリスクの高い乳がんの診断率が低下したということは、医師は間隔がんに進展しうる小さな腫瘍を見逃すことがある一方で、AIはこれを捉えた結果とみなせる。
同じ臨床試験の初期結果もAI診断支援の効果を示した。2023年、スウェーデンの研究チームはAIが放射線科医の画像読影の業務量を44%削減したと発表した。昨年には、AI支援の乳がん検診が誤診の増加なしにがん発見率を29%高めたという結果を発表した。
今回の臨床試験に用いたAIはオランダのバイオ企業スクリーンポイント・メディカル(ScreenPoint Medical)が開発した。画像でがんと見なされる部分を表示し、放射線科医を補助する。リスクが低ければ熟練の放射線科専門医1人による読影で足りるとし、高リスク症例は放射線科医2人による二重読影に分類する。AIは前もって10余りの国の医療機関で収集した20万件余りの検査結果で訓練した。
◇他人種を対象とした追加臨床試験が必要
乳がんは35〜50歳女性の主要な死亡原因であり、世界全体で毎年200万人以上がこの疾患と診断されている。乳がんの早期検診は、30歳以降は毎月の自己検診、35歳以降は2年間隔の医師診察、40歳以降は1〜2年間隔でマンモグラフィを推奨する。
マンモグラフィはX線検査である。人体組織は密度によってX線の透過量が異なる。カルシウムが沈着したがん組織は骨のように密度が高く、X線が通過しにくい。このため、がん部位はX線画像で白く写る。韓国の女性は高濃度乳房が多く、マンモグラフィとともに超音波検査を併用するほうが早期発見により有効だとされる。
今回の大規模臨床試験の結果は、放射線科専門医がマンモグラフィ画像をAIとともに見ると早期発見の可能性がより高まることを示した。ラン教授は「乳がん検診プログラムにAIをより多く導入すれば、放射線科医の業務負担を軽減できるだけでなく、リスクの高い乳がんを早期に診断する上で役立つ」と述べた。
英国の乳がん研究団体ブレスト・キャンサー・ナウ(Breast Cancer Now)のサイモン・ビンセント最高科学責任者も「今回の初の臨床試験は、乳がん検診でAIが放射線科医を支援する上で莫大な潜在力を持つことを示した」と述べた。
ただしラン教授は、今回の研究はAIが標準検診と同程度に効果的かを確認するためのものであり、より優れているかを確認しようとしたものではないとした。AIがより優れているかを知るには追加の臨床試験が必要だという。さらに研究チームは、AIが特定の人種に対してより効果的かどうかも評価していない。
英国ケンブリッジ大学のフィオナ・ギルバート教授は「今回の臨床試験の結果は驚くべきだ」と述べ、「英国で進行中の臨床試験を含む追加研究が、この問題の解決に役立つだろう」と語った。英国の国民保健サービス(NHS)は昨年から乳がん検診におけるAI活用の効果を検証する臨床試験を開始した。
参考資料
The Lancet(2026), DOI: https://doi.org/10.1016/S0140-6736(25)02464-X
The Lancet Digital Health(2025), DOI: https://doi.org/10.1016/S2589-7500(24)00267-X
The Lancet Oncology(2023), DOI: https://doi.org/10.1016/S1470-2045(23)00298-X