ネットフリックスのドラマ「ウェンズデー」には、縫合痕だらけの手「シング(thing)」が登場する。体のない奇怪な存在だが、れっきとしたアダムス・ファミリーの一員として扱われる。ドラマの想像力がロボットで現実化した。腕から切り離され単独で作業するロボットの手である.
オード・ビラール(Aude Billard)スイスのローザンヌ連邦工科大学(ETH)教授の研究チームは「這い回りながら物体をつかめるロボットハンドを開発した」と21日、国際学術誌「ネイチャー・コミュニケーションズ」に発表した。ロボットアームに付いた状態から手だけを外して物体をつかむ形だ。これによりロボットの活動範囲が広がると研究チームは明らかにした.
◇手を分離し複数の物体を同時に操作可能
ロボットアームはすでに産業現場で自動車の組み立てや溶接を担っている。人を代替できるよう手の動作を模倣してきた。しかし多くはアームが作業台に固定された形で、作業範囲が限定される。狭所での作業が難しく、複数の物体を同時に握ることもできない。ビラール教授は「自宅で3人の子どもを育てていると、常に腕と指の間に複数の物を持たざるを得ない」と述べた。ロボットが人の手を単純に模倣するだけでは限界があるということだ.
研究チームは2種類のロボットハンドを開発した。1つは人間のように指が5本で、もう1つは6本だ。円盤型の手のひらの直径は16㎝である。ここに同じ形状の指を取り付ける。いずれも対称構造を備え、両側から把持できる。とりわけ手はロボットアームから分離され、ドラマに登場するシングのように這い回る.
ロボットハンドはコンピューターの仮想空間でソフトウエアにより物体のつかみ方を学習した。その後、現実世界で作業を実行した。実験では、ロボットハンドは段ボール製の円筒やゴムボール、ホワイトボードマーカー、缶など材質の異なる多様な物を安全に把持した。日常で活用できるということだ.
ロボットハンドは最大3個まで物を順次回収し、物をつかんだまま再びロボットアームに装着できた。これまでロボットの手の動きは、指を開閉するような単純なものか、特定の作業に合わせた動作に限られていた。今回開発したロボットハンドは異なる。ロボットハンドは人の手が物をつかむ33種類の動作を実現し、最大2㎏の重さまでつかむことができた.
◇人の手の動作と範囲の限界を克服
研究チームは人の手が持つ限界を直視した。ビラール教授は「人が後ろにある物を取ろうとすると、手を回転させ非常に複雑な動作をする」「また、他の指と向かい合ってつまめるのは親指1本だけだ」と述べた.
今回開発したロボットハンドは新しい作動原理で人の手の限界を克服した。ロボットハンドはどの指も形が同じで、反対側の指と向かい合って物体をつかめる。手のひらを中心に両方向のどちらへも動かせる。指は単独または複数で物体を包み込め、物体をプラスチックの手のひらに載せて運ぶこともできる.
作業範囲も既存ロボットの限界を超えた。論文の第1著者であるガオ・シャオ(Xiao Gao)博士は「ロボットハンドはアームから分離でき、一般のロボットが接近できない場所へ移動できる」と説明した。ロボットの指は物体をつかむときはピンセットになり、移動時はクモの脚のように動いた。研究チームは、ロボットアームから手を分離できるため、水道管内部や潜水艦のエンジン室のような狭い空間を検査し、異物をつかんで除去できると見込んでいる.
英国オックスフォード大学ロボット工学研究所のペルラ・マイオリノ(Perla Maiolino)副所長は「今回のアプローチは生物学的形態を単に模倣せず、能力をさらに拡張する方式という点で革新的だ」とし、「アームから分離されるロボットハンドや、手のひらの両方向で物体を握れるロボットハンドは見たことがない」と述べた.
もちろんロボットハンドにはなお課題が多い。すぐにドラマのシングのように家庭内を這い回るとは思えない。米国カーネギーメロン大学のナンシー・ポラード(Nancy Pollard)教授は「今回のロボットハンドの指は反対方向にも曲げられるが、人の指ほど物体表面に圧力を加えられるようには見えない」と指摘した.
参考資料
Nature Communications(2026), DOI: https://doi.org/10.1038/s41467-025-67675-8