モーセはイスラエルの民を解放するという約束をファラオが守らなかったため、バッタの大群を呼び寄せてエジプトのあらゆる植物を食い尽くさせた。旧約聖書「出エジプト記」で、エジプトに下った十の災いのうち八番目である。
バッタの群れの恐怖は今も変わらない。2020年春に東アフリカ10カ国を襲ったバッタの大群は、1日に16万tの食料を食い尽くした。80万人が1年間食べられる量である。世界銀行はその年の作物被害が85億ドル(12兆4950億ウォン)に達すると推計した。
科学者たちがバッタの群れの恐怖を抑える方策を見つけた。米国とセネガルの科学者は、作物をバッタの嗜好に合わないように簡単に変える方法を開発した。中国の科学者は、単独で生息していたバッタが群れを作らないようホルモンを調節する案を示した。バッタの大群に立ち向かう科学者アベンジャーズだ。
◇バッタの嗜好に合わないよう炭水化物を抑える
アリアン・シーズ(Arianne Cease)米国アリゾナ州立大学教授が率いた国際共同研究チームは「バッタが農作物を食べられないようにする簡便な土壌改良法を開発し、アフリカの農民とともに効能を確認した」と15日(現地時間)、国際学術誌「サイエンティフィック・リポーツ」に発表した。
研究チームはバッタの群れ被害を受けたセネガルの農民と協力し、新たな防除法を試験した。セネガルバッタ(学名 Oedaleus senegalensis)は、東アフリカを襲ったサバクバッタ(Schistocerca gregaria)ほどではないにせよ、継続的に小規模な群れを作って農民に大きな被害を与える。
新たな防除法は、平たく言えば土壌を肥沃にすることだ。シーズ教授は「15年以上の研究を通じ、栄養分が不足する土壌で育つ植物がバッタの群生発生を促進する事実を突き止めた」と明らかにした。実験ではセネガルの農民100人がキビ畑2カ所を耕作した。一方には窒素肥料を施し、もう一方は従来通り肥料を施さなかった。
3回の実験の結果、窒素肥料を施した畑ではバッタの数が以前より少なかった。自然の葉の損傷が抑えられ、収量は2倍に増えた。農民は窒素肥料が別の害虫を呼び寄せないか懸念したが、そのような問題はなかった。バッタが肥料を施さない畑により多く群がることもなかった。
バッタを遠ざけた秘訣はタンパク質だった。窒素肥料を施した畑で育ったキビは他よりタンパク質含量が高く、炭水化物が少なかった。バッタはこのような植物を嫌う。マラソン選手が大会直前に炭水化物を摂取するのと同様に、バッタも長距離移動に必要なエネルギーを得るため炭水化物を集中的に摂取するためである。
問題は資金である。シーズ教授は「長期的な効果を得るには、低コストで土壌に窒素を供給する方法が必要だ」と述べた。今回の実験は米国国際開発庁(USAID)が窒素肥料を支援して可能になった。しかし米国の資金支援は昨年中断された。
セネガルの農民は肥料を自前で調達する方法を見いだした。論文の共同責任著者であるマムール・トゥレ(Mamour Touré)セネガル・ガストン・ベルジェ大学教授は「農民は従来のように収穫後の茎や葉を焼却せず、堆肥化して次の作付けに使っている」と語った。過去の韓国のセマウル運動が他者に依存せず自助の精神で推進されたのと同様である。
◇群れを呼ぶホルモン信号の遮断技術も
バッタの群れは人類の生存を脅かしている。サバクバッタは1㎢の面積におよそ8000万匹が集まって飛び回る。この規模のサバクバッタの群れは、3万5000人が食べる農作物を1日で食い尽くす。国連食糧農業機関(FAO)は2020年の東アフリカでのバッタ大発生当時、地球人口の10分の1に食料危機を引き起こし得ると警告した。
サバクバッタは本来は単独で生息するが、何らかの理由で群れを成すと突如攻撃的な行動を示し始める。移動の途上で見える動植物をすべて食い尽くす。科学者はバッタが群れを成す原因を突き止め、被害を減らす方法を模索している。
中国科学院動物研究所のカン・レイ(Le Kang)教授の研究チームは2020年、国際学術誌「ネイチャー」に、サバクバッタが群れを成す際に分泌するフェロモンを突き止めたと明らかにした。フェロモンとは昆虫が体外に分泌する信号物質である。
研究チームは群れを成したバッタが分泌する6種類のフェロモンを採取して実験した。そのうち4-ビニルアニソール(4VA)というフェロモンが、単独で生息するバッタを群れへと導くことを突き止めた。4VAは単独個体はもちろん、すでに群れを成した個体もすべて引き寄せる効果を示した。これは雌雄や年齢にも左右されなかった。
カン教授は「3〜4匹が集まると4VAの放出を始め、群れが大きくなるほど4VA濃度も急増する」と明らかにした。大声で仲間を呼んでいた段階から、全国放送で集合信号を送れるほどに発展する格好だ。研究チームは粘着式のわなに4VAを塗り、中国北部のバッタの繁殖地に設置した。4VAを塗ったわなには他のわなより多くのバッタが付着した。
◇気候変動を抑えることが根本的な解決策
中国の研究チームは、バッタがフェロモンをそもそも感知できなくする方法も示した。サバクバッタの触角で4VAを感知するタンパク質が生成されないよう、該当遺伝子を切除した。その結果、バッタは4VAにもほとんど反応を示さなかった。カン教授の研究チームは昨年、ネイチャーにおいて4VA合成に中核的な酵素2種を遮断し、バッタの群集行動を抑制したと明らかにした。
地球規模の食料危機を防ぐには、バッタだけに目を向けるべきではないとの主張も出ている。アフリカ政府間開発機構(IGAD)傘下の気候予測応用センター(ICPAC)の研究チームは2020年、「ネイチャー・クライメートチェンジ」に、アラビア半島一帯に降った雨でできた砂漠の湖が、バッタの増殖に最適な条件を与えたと発表した。
研究チームによれば、2018年5月にインド洋で熱帯低気圧であるサイクロンが発生し、アラビア半島へ北上した。これにより豪雨が降って砂漠の湖が形成された。同年10月にもこの地域へサイクロンが再び北上し、水分がさらに供給された。2019年末、サイクロンは強い風を起こしてサバクバッタの群れを東アフリカへ吹き飛ばした。
人為的な温暖化による熱の90%は海に吸収される。その結果、海水温が上がり、従来よりサイクロンの発生が増えた。結局、気候変動がサバクバッタの大群を呼び込んだということだ。かつてエジプトのファラオの時代と同様に、バッタの群れの災厄の原因は人間にあったわけである。
参考資料
Scientific Reports(2026), DOI: https://doi.org/10.1038/s41598-025-27884-z
Nature(2025), DOI: https://doi.org/10.1038/s41586-025-09110-y
Nature(2020), DOI: https://doi.org/10.1038/s41586-020-2610-4
Nature Climate Change(2020), DOI: https://doi.org/10.1038/s41558-020-0835-8