慢性痛は人口の20%が抱える深刻な疾患。米研究陣が依存性のない弱オピオイド性鎮痛薬に代わる遺伝子治療を開発し、動物実験で有効性を確認/Neuroscience News

けがをしていないのに痛みを訴え続ける人がいる。傷が治っても神経系が変化し痛みを過度に感じる慢性痛患者である。成人5人に1人が経験するとされる慢性痛を根本的に遮断する遺伝子治療法が開発された。商用化されれば副作用が強い麻薬性鎮痛薬なしで生活の質を大きく高められると期待される。

グレゴリー・コーダー米国ペンシルベニア大学医学部精神科教授の研究陣は「麻薬性鎮痛薬治療の依存リスクを除去しつつ脳の疼痛中枢を標的にする新しい遺伝子治療法の有効性を動物実験で確認した」と8日に国際学術誌「ネイチャー」に発表した。今回の研究にはペンシルベニア大学の医学部と看護学部、カーネギーメロン大学、スタンフォード大学の研究陣が参加した。

研究陣によると、慢性痛は米国で約5000万人に影響を及ぼし、直接的な医療費と所得減少といった間接費用を合わせて年間6億3500万ドル(約9244億ウォン)の経済的損失を与える。治療法が出ればこの損失を防ぐだけでなく「金の卵を産むガチョウ」となる可能性もある。グローバル市場調査会社コヒアレント・マーケット・インサイトによれば、世界の慢性痛市場規模は2024年721億ドル(104兆7252億ウォン)から2031年には1155億1000万ドル(167兆1512億ウォン)へ成長する見通しである。

◇AIで痛み回路を特定、遺伝子治療で解決

研究陣はまずマウスの慢性痛の程度を把握し治療効果を確認する方法を開発した。マウスの神経を意図的に損傷させ、外傷がなくても慢性痛を感じるようにした。するとマウスの頭や尾が不自然に動く。研究陣はこの様子をカメラで撮影し、映像情報を人工知能(AI)に学習させて慢性痛の行動パターンを把握した。

研究陣は痛みを感覚と苦痛に区分した。けがによる痛みを感じる正常な感覚は維持しつつ、問題がなくても発生する慢性痛のような不快な苦痛だけを除去することを目標に据えた。慢性痛の不快感は脳の前帯状皮質(ACC)で生じる。モルヒネはこの部位の神経細胞の受容体に結合する。いわゆるミューオピオイド受容体であるMORだ。

研究陣はMORと似た受容体を合成する遺伝子を無害なウイルスに入れて前帯状皮質の神経細胞に送達した。治療遺伝子は平時には作動せず、特定の薬剤が入ると受容体を作る。このような受容体は特定薬剤のシグナルで活性化されるという意味の英語の頭字語でDREADDと呼ぶ。シグナル薬剤を投与すると治療遺伝子がDREADD受容体を作り、慢性痛を誘発する神経細胞を抑制した。マウスは慢性痛を感じるときに見せていた動作を示さなかった。

カリフォルニア大学サンディエゴ校(UCSD)のモニーク・スミス教授は同日ネイチャーに掲載された論評論文で「今回の研究は実験的示唆を臨床現場に実装し得る革新的戦略だ」とし「痛みを感じる感覚機能は維持しつつ苦痛の感情だけを選択的に調節することで、依存リスクが低い安全な治療への道を示した」と評価した。

グラフィック=ジョン・ソヒ

◇モルヒネ受容体に関与せず副作用懸念を遮断

慢性痛は、音量が最大に固定されたラジオを聴くのに似ている。けがをすれば当然痛みを感じるが、慢性痛患者は傷が治っても痛みを訴え続ける。音量調節ができないのだ。このとき阿片様の成分であるモルヒネのような合成麻薬性鎮痛薬で痛みの音量を下げる。

問題は麻薬性鎮痛薬がより大きな病を招き得るという事実である。麻薬性鎮痛薬に耐性が生じて服用量を増やすと依存しやすく、薬をやめると不安やうつなどの禁断症状も発生する。米国では2022年に薬物の不適切使用で11万人近くが死亡し、そのうちモルヒネのような合成麻薬性鎮痛薬による死亡が76%を占めた。

コーダー教授は「鎮痛薬の中毒と副作用リスクをなくしつつ痛みを緩和することが今回の研究の目標だった」と述べ、「麻薬性鎮痛薬であるモルヒネが作用する脳回路を標的にして、慢性痛治療に新たな道を提供するだろう」と語った。

今回開発された治療法はモルヒネが結合する受容体には手を触れないため、麻薬性鎮痛薬の依存や副作用の懸念がない。代わりに類似の受容体を作る遺伝子を送達して神経細胞の暴走を防いだ。慢性痛が消え、シグナル薬剤の投与を中止すれば治療遺伝子も作動を止め、モルヒネのように問題を引き起こす可能性はないと研究陣は説明した。

研究陣は人体を対象とする臨床試験に入るために必要な研究を継続すると明らかにした。専門家は、遺伝子治療法と超音波刺激のように組織損傷のない脳制御技術が結合すれば、臨床現場で麻薬を心配しない「スマート鎮痛治療」が可能だと展望した。

参考資料

Nature(2026), DOI: https://doi.org/10.1038/s41586-025-09908-w

Nature(2026), DOI: https://doi.org/10.1038/d41586-025-03987-5

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