年の瀬に、火星から年賀状が届いた。米国航空宇宙局(NASA・ナサ)は30日(現地時間)、探査ロボット「キュリオシティ(Curiosity)」が火星の一日を収めた1枚の写真を公開した。写真右下にキュリオシティが見え、左側は黄色に染まる午後遅い時間を、右側は朝の青い空を示している。まるで、きょう今年最後の陽が沈み、あす新年最初の太陽が昇る光景を一足先に見せてくれるかのようだ。
◇一年が沈み新年が昇る風景を収める
キュリオシティは6輪で動く移動型探査ロボット(ローバー)である。2011年11月26日に地球から打ち上げられ、翌年8月6日に火星赤道付近のゲイル衝突クレーターに着陸した。このローバーは長さ2.9m、高さ2.2m、幅2.7mで、重量は900㎏に達する。車輪の直径は50㎝。全体として自動車ほどの大きさと見ればよい。カリフォルニア工科大学(Caltech)のNASAジェット推進研究所(JPL)がキュリオシティの任務を遂行している。
NASAの研究チームは11月18日、キュリオシティに二度にわたり風景を撮影するよう命じ、この年賀状を作成した。撮影時点は探査任務の第4722火星日(sol)午後4時15分と第4723火星日午前8時20分だった。研究チームは二つの白黒写真を合成し、時点が一目で分かるよう色を追加した。青は朝のパノラマ、黄色は午後のパノラマを示す。
NASAは当初、任務期間を2年と定めていたが、キュリオシティは10年を超えた現在も運用が続いている。2025年12月31日基準で、キュリオシティは火星で第4764火星日の任務に就いている。地球時間に換算すると4895日で、13年147日に相当する。キュリオシティの任務は、火星の気候と地質を調査し、クレーター内に過去、生命体が棲むのに適した環境が存在したかどうかを解明することだ。
今回の写真でキュリオシティは、ボックスワーク(boxwork)地形と呼ばれる尾根の頂上にいる。ボックスワークは、幅154㎞のゲイル衝突クレーター内にあるシャープ山(Mount Sharp)山麓で見られる、蜘蛛の巣あるいは格子状の独特な地質構造である。かつて火星に水が豊富だった時代、地下水が岩の隙間に流れ込む過程で形成されたと推定される。
◇2021年、2023年にも同様のはがきが到着
キュリオシティは先に2021年11月と2023年6月にも同様のはがきを送ってきた。キュリオシティは火星到着から3299日目となる2021年11月16日、シャープ山の側面で午前8時30分と午後4時10分にそれぞれパノラマ写真を撮影した。キュリオシティは移動しながら白黒の航法カメラで周囲360度の全景を撮影する。
写真は、キュリオシティが2014年から登ってきた高さ5㎞のシャープ山を見下ろす風景を収めた。最右端には、2021年に逝去したキュリオシティチームの科学者の名を冠したラファエル・ナバロ山(Rafael Navarro Mountain)が見える。その背後にそびえるのは、キュリオシティが探査中の地域よりはるかに高いシャープ山の上部である。
2023年の写真は、4月8日に二度にわたり白黒の航法カメラでマーカーバンド渓谷(Marker Band Valley)のパノラマ写真を撮影し、着色して合成したものだ。キュリオシティは火星時間で午前9時20分と午後3時40分にそれぞれパノラマ写真を撮影した。同様に、朝に撮影された部分には青、午後に撮影された部分には黄色が加えられた。
写真でキュリオシティの移動経路の向こうに遠望できる場所がマーカーバンド渓谷で、ローバーが古代湖の痕跡を発見した地点である。うねるような地域は、かつて湖に流れ込んだ水が岩石表面に残した波紋だ。当初NASAは、ここの硫酸塩が過去の湖の証拠だと判断した。水が干上がる過程で、硫酸塩のような塩分を多く含む鉱物が残ったという説明である。
2023年にキュリオシティが見つけた波の痕跡は、湖の存在を示すより明確な証拠と評価された。NASAの研究チームは、数十億年前の火星に浅い湖があり、波が立つ中で湖底の堆積物がかき混ぜられ、時間の経過とともに岩石表面にさざ波模様が刻まれたと推定した。火星から届いた年賀状は、いまだ生命を宿す地球がどれほど貴重かを改めて喚起している。
参考資料
NASA(2025)、 https://www.nasa.gov/image-article/curiosity-sends-holiday-postcard-from-mars/