米航空宇宙局(NASA・ナサ)が火星探査用ドローンの試験を開始した。火星と環境が類似する砂漠で回転翼と固定翼を備えたドローンを飛ばし、航法装置とソフトウエアを試験した。四つ足で動く火星探査用ロボットも同様に砂漠で訓練している。ドローンと四足歩行ロボットは戦場と産業現場で活躍したのに続き、いまや地球外へと活動の舞台を広げている。

ナサは2021年に火星へ四輪で動く探査ロボット(ローバー)のパーサビアランス(Perseverance)と超小型無人ヘリコプターのインジェニュイティ(Ingenuity)を着陸させた。火星探査ロボットは以前にもあったが、火星の空を飛んだヘリコプターは初めてだった。ローバーは依然として作動しているが、ヘリは前年1月に墜落して任務が終了した。ナサは今後、火星ではヘリの代わりにドローンを空中探査に投入すると明らかにした。

NASAジェット推進研究所の研究チームが9月にモハベ砂漠デュモン砂丘地域で火星探査用ドローンを試験している。/NASA/JPL-Caltech

◇地球外で初飛行したヘリコプターの後継作

ナサのジェット推進研究所(JPL)は火星表面と航空探査のため、砂漠地域でドローンとロボットを試験していると2日に明らかにした。研究陣は年初に研究用ドローン3機をカリフォルニア州デスバレー国立公園とモハベ砂漠に持ち込んだ。火星上空を問題なく飛行するには砂丘が必要だったためだ。前年1月18日に火星で第72回の飛行任務中に墜落して翼が折れたインジェニュイティも、当時は砂丘上を飛行中だった。

これまで月や火星の探査は地上でのみ行われた。固定型の無人探査機や車輪を備えたローバーが探査を進めた。インジェニュイティは地球外天体探査の地平を空へと広げた。インジェニュイティは2021年2月18日、パーサビアランスの腹部に取り付けられて火星に到着した。2カ月後の4月19日の初飛行では高度3メートルまで上昇して降下した。

インジェニュイティが成功し、人類は1世紀ぶりに地球のみならず他の天体でも動力飛行体で空を飛ぶ記録を打ち立てた。先立ってナサはインジェニュイティの飛行成功を祈願し、1903年にライト兄弟が史上初の動力飛行に成功した航空機フライヤー1号から切り取った切手大の布片をインジェニュイティに取り付けた。

火星を探査していたヘリコプター「インジェニュイティ」は2024年1月18日の72回目の飛行で墜落した。NASAの火星探査ローバー「パーサヴィアランス」が2024年2月24日に、翼が折れたまま墜落したインジェニュイティの様子を撮影した写真。/NASA/JPL-Caltech/LANL/CNES/CNRS

インジェニュイティはこれまで72回の飛行で計128.8分、17km以上を移動した。火星の大気密度は地球の1%に過ぎず、翼の回転で胴体を浮かせる揚力を得にくいと考えられていた。ナサの研究陣は1分間に2400回転する超高速の2枚のローターでこの限界を克服した。地球からのリアルタイム遠隔操縦は不可能なため、自律飛行技術を適用した。

ナサはインジェニュイティが墜落したのは、平坦な地形ではなく不規則な砂丘上を飛行したためだと推定した。ドローン操縦士のローランド・ブロッカース(Roland Brockers)JPL研究員は「インジェニュイティは地面の視覚的特徴を観察して動きを推定し、地形がはっきりした地域を飛行するよう設計された」と述べたうえで、「将来の探査飛行体は砂丘のような難所を飛行する際にも心配しなくてよいことを望む」と語った。

火星ドローンの試験は他の天体探査にも役立つ可能性がある。ナサは土星の衛星タイタンに向かう探査飛行体「ドラゴンフライ(Dragonfly・トンボ)」も開発した。直径1メートルの水平回転翼8枚で飛行する。ナサは2027年にドラゴンフライを打ち上げ、2034年にタイタンへ着陸させる計画だ。

NASAジェット推進研究所の研究チームが開発した火星探査用ドローンがデスバレー国立公園で飛行している。/NASA/JPL-Caltech

◇長距離飛行ドローンとロボット犬も試験

ナサの研究陣は1970年代からデスバレー国立公園を訪れてきた。当時ナサは双子の宇宙船バイキングを初めて火星に着陸させようと準備していた。デスバレーは火星探査の試験にうってつけの場所だった。ある地域は火星のように荒涼とした斜面に火山岩の岩が散在しており、「マーズヒル(Mars Hill、火星の丘)」という名称まで得た。

半世紀が過ぎた今もデスバレーは火星探査機の常連試験場だ。先にジェット推進研究所の研究陣は、デスバレー上空で遠隔操縦ヘリコプターによりパーサビアランス・ローバーの精密着陸システムを検証した。ナサの研究陣は4月末と9月初めにデスバレーのマーズヒルとメスキートフラッツ砂丘を訪れた。研究陣は多様なカメラフィルターがドローンの地上観測にどう役立つか、新しいアルゴリズムがマーズヒルのような複雑な地形でドローンを安全に着陸させられるかを試験した。

研究陣は3日後、追加試験のためカリフォルニア州モハベ砂漠のデュモン砂丘へ向かった。2012年に火星へ着陸したローバーのキュリオシティを試験した場所だ。デュモン砂丘には波状の砂丘があり、インジェニュイティが墜落した場所のように不規則な地形上を飛行する能力を試すのにうってつけだった。

ナサは大型の火星探査飛行体も開発している。ナサ・ラングレー研究センターは「火星電気再使用飛行体(MERF)」を開発中だ。小型スクールバスほどの大きさのこの飛行体は、固定翼に双発プロペラを搭載し、垂直離着陸と空中静止飛行が可能である。飛行体が高速で空を横切る間、腹部に搭載した計測器で表面地図を作成できる。

NASAラングレー研究センターで開発中の滑空ロボットMERF(Mars Electric Reusable Flyer)の1/2スケール模型。固定翼に回転翼2基を装着した。/NASA

◇地上・空中の陽動作戦を遂行するロボット犬

ナサの研究陣は火星表面を探査する新技術も開発した。すなわち四つ足で動くロボット犬だ。8月、ナサ・ジョンソン宇宙センターの研究陣がニューメキシコ州の砂漠地域であるホワイトサンズ国立公園で、ラッシー(LASSIE)-Mという名を付けた犬型ロボットを試験した。ラッシーは「火星類似環境用多脚自律地上科学探査体(Legged Autonomous Surface Science In Analogue Environments for Mars)」を意味する英語の頭字語である。研究陣は足が埋もれやすい砂漠でもラッシー-Mの歩行が可能かを試験中だ。

ラッシー-Mのようなロボット犬は、新たな飛行体と陽動作戦を遂行できる。スイス連邦工科大学チューリヒ校(ETH)のマルコ・フッター(Marco Hutter)教授は8月にネイチャーへ「人間の専門家がチームを組んで多様な技術を総動員するように、ロボットも互いを補完しながら火星探査任務を遂行できる」と述べた。フッター教授は2021年、米国防高等研究計画局(DARPA)の地下探索ロボット競技大会で四足歩行ロボットANYmal(アニマル)で1位を獲得した。

ナサはすでに月と火星の有人基地建設に備え、地球の溶岩洞窟でロボットを訓練している。ナサのジェット推進研究所は2021年の米国地球物理学会年次学術大会で、車輪付き探査ローバーに代わり月と火星の険しい地形や洞窟などを探検するロボット犬を公開した。現代自動車の系列会社である米ボストン・ダイナミクスが開発した四足歩行ロボット「スポット(Spot)」を火星探査用に改造したものだ。自律(Autonomous)歩行が可能であることから「Au-スポット」と名付けられた。

これまでの火星探査はオポチュニティ、キュリオシティのようなローバーが担ってきた。しかし車輪で動くローバーは平坦な地面しか移動できなかった。科学者が探査しようとする地形の大半は険しく、地表下にある。ナサの科学者は、スポットは地下へ歩いて降り、転倒しても再び立ち上がることができるため、火星の険しい地形を探査するのにうってつけだと明らかにした。

NASAジョンソン宇宙センターの研究チームがニューメキシコ州ホワイトサンズ国立公園で火星探査用四足歩行ロボット「LASSIE-M(Legged Autonomous Surface Science In Analogue Environments for Mars)」を試験している。/NASA

参考資料

NASA(2025)、https://www.nasa.gov/solar-system/planets/mars/nasa-tests-drones-in-death-valley-preps-for-martian-sands-and-skies/

NASA(2024)、https://science.nasa.gov/resource/supercams-rmi-spots-ingenuitys-broken-rotor/

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