非対面診療の制度化を盛り込んだ医療法改正案が最近、国会を通過した。新型コロナ時期に限って運用されていた非対面診療が制度に編入され、本格施行を控えている。北米はすでに数十年前から電話・映像ベースの遠隔診療を日常医療として活用してきた。北米の現場を訪れ、実際の運用の様子を取材した【編集部注】
脳血管が破裂または閉塞する脳卒中は世界の死亡原因2位で、毎年600万人が亡くなる疾患である。脳卒中は進行が早く、ゴールデンタイムを逃すと半身麻痺や言語障害といった後遺症が生じる可能性がある。海外では脳卒中患者が発生したが担当医がいない場合、遠隔で他院と協診(協診)が可能である.
先月28日(現地時間)カナダ・オンタリオ州ロンドンに位置するLHSC傘下のビクトリア病院(Victoria Hospital, London Health Sciences Center)で会ったアダム・デュケロウ(Adam Dukelow)LHSC医療・学術副社長は「遠隔で(他院にいる)脳卒中患者に血栓(協診)溶解剤を処方できる」と語った。
脳血管を閉塞する血栓を溶かす薬剤を投与し、患者を迅速に治療できるということだ。これは救急外来のたらい回しが頻発する韓国の医療現場に教訓を与える。
◇脳卒中のゴールデンタイムは4.5時間、遠隔で対処
韓国では最近、釜山で意識を失って倒れた10歳の子どもが12の病院で搬送を拒否され心停止状態となった事案があった。消防当局などによると、119救急隊が子どもを病院に搬送するため連絡したが、専門医がいないことなどを理由に受け入れを拒否された。これは釜山だけで起きることではない。患者が救急外来に到着しても、病院で治療できないという理由で転院するケースが頻繁だ。
カナダ、米国はこのような場合、医師同士が遠隔で協診する。通常、脳卒中患者のゴールデンタイムは4.5時間である。患者が病院に行ったのに治療する医師がいない、他院へ移動する時間も長い場合は、むしろ遠隔で対処するということだ。遠隔でCT(コンピューター断層撮影)やエックス(X)線検査結果を共有したり、薬剤を処方することも可能だ。その分、患者の状態が重症化したり後遺症が残る事態が減る。
フランク・マイスリック(Frank Myslik)LHSC上級医療情報責任者は「患者が道路上で時間を過ごさなくてよい」と述べ、「その分、迅速な対応が可能だ」と語った。
米国のメドスター・ワシントン病院(Medstar Washington Hospital Center)は、地域社会33カ所にある緊急診療センター(MedStar Health Urgent Care)に遠隔医療の助言を提供する。緊急診療センターは、風邪や扁桃炎のように症状が軽い患者が訪れる。
もし重傷を負ったり生命が危険な患者が来院した場合、メドスター・ワシントン病院所属の専門医に遠隔診療を受けることができる。バックアップ診療の役割を担うということだ。
メドスター・ワシントン病院の関係者は「整形外科、心臓内科、眼科、小児科の専門医などが助言する」と述べた。
遠隔協診は地域・必須・公共医療に資する。韓国保健社会研究院によると、非首都圏は人口1000人当たり必須医療の専門医が0.46人にとどまる。一方で全国各地には保健所、保健支所、保健診療所などが3600カ所余りある。
このうち保健所などと民間の病院・医院を含む医療機関794カ所は今年、福祉部と韓国健康増進開発院の遠隔診療協診事業に参加している。地域の保健所などは患者の状態を身近で把握しやすい。遠隔協診が強化されるほど治療水準が高まり、患者の大都市の病院への遠征も減らせるということだ。
◇患者のそばにケア人材を配置…韓国は参考にすべきだ
カナダと米国の共通点は、遠隔診療を行いながらも患者のそばにケア人材を置いていることだ。これは韓国に示唆するところが大きい。
来年末の非対面診療の本格施行を前に、スマートフォンを苦手とする高齢層にどのような支援ができるか議論が進んでいるためだ。
カナダは病院と連携したソーシャルワーカー(Social Worker)が、患者の居住地でWi-Fi接続やノートパソコンのカメラ設置などを支援する。米国の一部病院も、看護師が80代患者の自宅で遠隔医療が円滑に行われるようにするプログラムを運営している。
韓国では地方自治体のケア事業などと連携できる見通しだ。福祉部の関係者は「地域の保健所の支援を受けたり、スマート敬老堂などを活用できる」と述べた。患者が病院の代わりに自宅近くの敬老堂でノートパソコンやタブレットPCを使って医師に会うことができるということだ。敬老堂に健康管理機器があれば血圧や血糖をチェックすることもできる。
海外の医薬品配送も参考にする必要がある。カナダと米国では、患者が薬局で薬を直接受け取るか宅配で受け取るかを選択できる。温度に敏感な医薬品は冷蔵で送付でき、配送事故を防ぐため患者の署名を求めることもある。韓国でも代理受領を制限しているため、薬を配送する際に身分などを確認する手続きが必要だと専門家は助言する。
一方で遠隔診療は、患者と医師が直接会う場合より効果が劣る可能性があるとの懸念も出ている。医師が患者の患部(患部)を直接触れず、カメラ越しに観察したり症状を問診する程度で診療するためだ。韓国の医療法改正案が再診患者を中心に非対面診療を可能としたのもこのためである。
それでも専門家は、遠隔診療がもたらす利点の方が多いと指摘する。
アン・モンド・ジョンソン(Ann Mond Johnson)米国遠隔診療協会最高経営責任者(CEO)は「地方に住む患者が大都市に行かなくても自宅で(頻繁に)医療サービスを受けられるため、かえって入院や救急外来への受診頻度を下げることができる」と述べた。
ビクトリア病院のイ・ジェホン精神科医は「カナダでは仮想診療中に患者が危険な状況であれば、医師が書式(form)を作成して警察に出動を要請できる」とし、「いかなる状況でも誤診は許さないという雰囲気だ」と強調した。