科学者たちは太陽系の初期は文字通り激しい混沌期だったとみている。四方で小惑星と彗星、あるいは原始惑星が衝突し、塵の雲が発生しては再び集まり、やがて惑星へと進化したということだ。米航空宇宙局(NASA)のハッブル宇宙望遠鏡が、太陽系外の別の恒星系で、バンパーカーのように小天体が衝突して相次いで塵の雲が発生する様子を初めて観測した。
米国カリフォルニア大学バークレー校(UCバークレー)天文学科のポール・カラス(Paul Kalas)教授の研究チームは「ハッブル宇宙望遠鏡で、地球に近い恒星であるフォーマルハウト(Fomalhaut)周辺で微惑星(微行星、planetesimal)の衝突により突然明るい点が現れる現象を観測した」と19日に国際学術誌「サイエンス」に発表した。
微惑星は恒星系初期の小天体で、互いに衝突しながら成長して惑星になったと考えられている。太陽の周りを長い楕円軌道で回る小惑星や彗星も微惑星の残滓とみなせる。だとすれば、今回観測された微惑星の衝突は太陽系初期に起きたこと、あるいは極めて稀な事象ということになる。言い換えれば、タイムマシンに乗って太陽系の初期を見たのと同じ意味である。
◇太陽系初期を映すタイムマシン
フォーマルハウトは秋の南の夜空の地平線で黄みがかって見える恒星で、みなみのうお座(Piscis Austrinus)で最も明るい。地球から25光年(光年・1光年は光が1年で進む距離で約9兆4600億㎞)離れている。カラス教授の研究チームは2008年にサイエンスで、ハッブル宇宙望遠鏡によりフォーマルハウトの周囲を公転する系外惑星を発見したと発表した。2004年と2005年の観測結果を分析した論文だった。この惑星は「フォーマルハウトb」という名称を得た。
ところが観測が重ねられるにつれ、この惑星をめぐって科学者の間で論争が生じた。木星より大きい惑星だとする研究者がいる一方で、原始惑星同士の衝突で生じた破片が作る塵の雲にすぎないとの反論も出た。
UCバークレーの研究チームは論争を収束させるため、ハッブル宇宙望遠鏡でフォーマルハウトを改めて観測した。カラス教授は「同じ装置だったが2023年にはフォーマルハウトbを見つけられなかった」とし、「さらに驚くべきことは、新たなフォーマルハウトbが存在するという事実だった」と明らかにした。
フォーマルハウトbを探していた科学者たちは、似た位置で輝く天体をもう一つ発見した。研究チームは先に惑星として発表したフォーマルハウトbを「cs1(circumstellar source 1、恒星周囲光源1)」という中立的な名称に改め、2023年に新たに見つかった天体はcs2と命名した。
研究チームは「二つの天体に対する最有力の説明は、直径約60㎞の微惑星2個が衝突して生じた塵の雲というものだ」と述べた。米国コロンビア大学天文学科のデービッド・キッピング(David Kipping)教授も「この光源はノイズが多く不規則で、まだ確実な結論を下すには早い」としつつも、「しかし、これまでのすべての証拠は原始惑星間の衝突という包括的説明に整然と合致する」と語った。
◇恒星周辺がクリスマスツリーのようにまたたく
しかし二度の衝突を短期間で捉えたのは想定外だ。カラス教授は「既存理論によれば、この種の衝突は10万年に一度、あるいはそれよりさらに稀にしか発生しないはずだが、われわれは20年で二度も目撃した」とし、「フォーマルハウトが豆電球で飾ったクリスマスツリーのようにまたたいており、驚くべきことだ」と語った。研究チームは、過去3000年を撮った映画を早回しにすれば、フォーマルハウト周辺は微惑星の衝突で光が絶えず点滅していたはずだと説明した。
今回の観測結果が正しければ、フォーマルハウトのような比較的若い恒星の周辺では、原始惑星間の衝突がこれまで考えられていたよりも頻繁に起きるとみなせる。研究チームは今後、ハッブル宇宙望遠鏡と、それより強力なジェームズ・ウェッブ宇宙望遠鏡(JWST)を同時に用いてフォーマルハウトcs2を追跡すると明らかにした。
カラス教授は「もはや太陽系初期の激しい衝突を理解するために理論だけに依存する必要はなく、実際に目撃できる」とし、「追加観測は若い惑星系全般の理解だけでなく、太陽系の初期の姿とその特徴を把握することにも資するだろう」と明らかにした。
参考資料
Science(2025)、DOI: https://doi.org/10.1126/science.adu6266
Science(2008)、DOI: https://doi.org/10.1126/science.1166609