ディズニー映画は古城と、その上で繰り広げられる華やかな花火のシーンで始まる。ディズニーの象徴ともいえるオープニングシークエンスが現実に姿を現した。9日(現地時間)、米航空宇宙局(NASA・ナサ)はフランスのベイナック城(Château de Beynac)上空に巨大な花火が広がるような光景を公開した。
中世の古城の上で繰り広げられたこの巨大な花火は、人間ではなく自然が演出したものだ。まさに、空から赤い稲妻が降り注ぐスプライト(sprite)が発生したのだ。NASAはその瞬間を撮影した写真をサイエンスカレンダーの12月画像として発表した。クリスマスがある12月にぴったりの写真である。
◇古城の上に降り注いだ赤い稲妻
空で稲妻が閃いた後、もうひとつの何かが現れる。暴風雨の上の高所で、深紅の形状が点滅しながら現れては消える。もし空でこのような姿を見たなら、極めて稀な地球上層大気の電気現象であるスプライトを目撃する幸運に恵まれたと考えればよい。
スプライトは中間圏で発生する稲妻である。中間圏は地球大気圏のひとつで、成層圏と熱圏の間の高度50〜80kmを指す。通常の稲妻は数km上空の積乱雲で発生するが、スプライトはそれよりはるかに高い80kmで発生する。落雷の直後に多様な形の赤い閃光が現れてから、柱や枝が空から降り注ぐように見える。
稲妻は大気中で電流が移動する現象である。空気は電気を通さない絶縁体である。しかし雲に電荷が蓄積すると、道のない空気中でも移動できる。電荷とは物体が持つ電気の量を指す。基本電荷を持つ陽子より電子が多ければ負(−)電荷、電子が少なければ正(+)電荷となる。
雲に電荷が蓄積すると、まるでダムに水が満ちて水圧が強まるように電圧が高くなり、極めて短い瞬間に電流が流れる。一般的な稲妻は高度11kmまでの対流圏の雲から地面へ移動する。する。しかし雲より高い場所ではそれとは異なる稲妻もある。スプライトが代表的だ。スプライトは積乱雲の上で踊るように現れ、順番に点灯しては消灯する。
◇雲の上で発生するメガ稲妻
スプライトは「一時的発光現象(Transient Luminous Events, TLE)」と呼ばれる上層大気の稲妻の一つである。TLEは1989年に初めて概念が提示された。通常の稲妻と異なり、積乱雲の上で発生する強力な稲妻で、「メガ稲妻(mega lightning)」とも呼ばれる。
TLEは幻想的な姿にふさわしい多様な名称を持つ。メガ稲妻には、高度90kmの電離層から15kmまで下へ落ちるスプライトがある一方で、逆に積乱雲の頂上から地上70km上空の電離層へ上昇する「ブルージェット(blue jet)」もある。
それより上には、高度100kmの熱圏で直径400kmの巨大なドーナツ形となり水平方向に現れる「エルヴズ(Elves)」もある。二つのメガ稲妻が結合したハイブリッド型もある。「ジャイアントジェット(gigantic jet)」は、上部が赤いスプライト、下部が青いブルージェットという形で高度90kmまで上昇する。
今回スプライトを撮影したベイナックは、フランス南西部ドルドーニュ地域で最も美しい村の一つとされる場所だ。ドルドーニュ川のほとりにそびえる断崖の上に12世紀の古城があり、石造りの急な路地を登ると石造住宅が軒を連ね、中世へ戻ったかのような感覚を与える。
スプライトの発生直後、頂部にまるで幽霊のような緑色の後光が現れることもある。いわゆる「中間圏ゴースト(mesospheric ghost)」である。スペインのアンダルシア天体物理学研究所は2023年、スプライトの頂部で点滅する緑の幽霊は宇宙から飛来した鉄の粒子が作ると明らかにした。中世の村の上空で宇宙の幽霊たちが踊っている格好だ。
参考資料
NASA(2025)、https://www.nasa.gov/image-article/sprites-over-chateau-de-beynac/
Nature Communications(2023)。DOI: https://doi.org/10.1038/s41467-023-42892-1