セル트リオンは、同社が開発中の抗体薬物複合体(ADC)ベースの抗がん新薬候補「CT-P70」が米国食品医薬品局(FDA)からファストトラック(Fast Track Designation)に指定承認を受けたと4日に明らかにした。
FDAのファストトラックは、既存の治療のみでは効果が十分でない重篤疾患の治療薬開発において、臨床の全期間で開発企業とFDAの協議を迅速に進めることを認める制度である。
指定されると、開発企業は◇FDAとの常時的なコミュニケーションチャネルの確保◇治験デザイン・開発戦略に関する協議◇優先審査(Priority Review)および迅速承認(Accelerated Approval)の可能性拡大◇段階的審査(Rolling Review)などの恩恵を受けられる。承認まで至る開発期間を大幅に短縮できる制度的な利点がある。
セルトリオン関係者は「CT-P70のファストトラック指定は、セルトリオンの新薬が医療上のアンメットニーズを解決する新たな治療選択肢となり得る可能性をFDAから公式に確認されたものだ」と述べた。
CT-P70は「がん細胞誘導ミサイル」と呼ばれるADC抗がん新薬候補である。
ADCは正常細胞の損傷を最小化しつつ、がん細胞だけを選択的に攻撃する次世代抗がん技術である。がん細胞を標的化する抗体と、がん細胞を殺傷する薬物(ペイロード)、この二つを結ぶリンカーが要で、抗体ががん細胞表面の抗原に結合すると薬物が細胞内に送達され、精密にがんを死滅させる。
CT-P70は、転移性非扁平上皮非小細胞肺がん(non-squamous NSCLC)患者のうち、cMET(細胞成長因子受容体)を発現し、過去に全身治療(Systemic Therapy)の経験がある患者を対象とする。セルトリオンは3月にFDAから治験計画(IND)の承認を受け、現在第1相試験の段階で患者への投与を進めていると明らかにした。
FDAは「対象患者が既存の方法では限定的な治療効果しか得られない高リスク患者群であること」と「CT-P70が示す初期開発データの潜在力」を総合的に評価し、ファストトラック指定を承認したとされる。
セルトリオンはCT-P71、CT-P72、CT-P73など後続のADC・多重抗体ベースのパイプラインについても、順次ファストトラックを申請する計画である。
年末までにCT-P70を含む計4種類の候補物質を臨床段階に進め、2027年までに臨床段階10種類以上を含む合計20種類規模の新薬パイプラインへ拡大することを目標としている。
このためセルトリオンは自社の開発能力に加え、さまざまな企業と協業し、ADCや多重抗体など広範な分野でプラットフォーム技術を確保している。会社側は「抗体とケミカルの結合方式および製剤タイプ全般にわたり高い拡張性を確保し、技術競争力を強化するための戦略だ」と述べた。
セルトリオン関係者は「今回の指定を足がかりに、後続のADC・多重抗体など開発中の新薬についてもファストトラック申請を続ける計画だ」とし、「最終的に患者に新たな治療オプションをより迅速に提供できるよう、開発のスピードを一段と上げる」と語った。