イム・セリョン大象グループ副会長が息子のイ・ジホの海軍将校任官式で見せたブラックファッションが大きな話題となった。2月28日に慶尚南道昌原市鎮海区の海軍士官学校で開かれた任官式で、イム副会長は黒のサングラスにブラックコート、ブラックトートバッグで色を統一した。黒色が与える端正でありながら品格のある雰囲気が軍の行事にふさわしかったとの評価を受けた。
科学者も黒に魅了されている。漆のように黒く光沢のある漆黒の黒を見つけるため研究している。米国の科学者が自然に解を見いだした。極楽鳥の羽毛を模倣し、ブラックファッションはもちろん、カメラや望遠鏡、太陽電池にも活用できる最高の黒色繊維技術を開発した。
◇光を内側へ屈折させる羽毛の棘を模倣
米国コーネル大学は「ラリッサ・シェパード繊維科学・衣服デザイン学科教授の研究チームが黒い羽毛構造を模倣し、世界で最も暗い黒色の羊毛を実現した」と3月1日(現地時間)に発表した。研究成果は国際学術誌「ネイチャー・コミュニケーションズ」に掲載された。
目は物体から反射した光で物体を認識する。光を100%反射すれば白く見え、反射しなければ黒く見える。最も暗い色であるウルトラブラックは光反射率が0.5%未満と定義される。コーネル大研究チームは今回、白い羊毛表面にナノ構造物を施して作った黒色は光反射率が0.13%で、ウルトラブラック繊維の中で世界最高記録だと明らかにした。
研究チームはニューギニアとオーストラリア北部に生息する極楽鳥(学名Ptiloris magnificus)の羽毛から着想を得た。極楽鳥は英語でライフルバードと呼ばれ、黒い羽毛が英国の小銃旅団の制服に似ていることからこの名がついた。シェパード教授は「極楽鳥は黒を生み出すメラニンとともに、非常に興味深い階層的構造である小さな羽枝を持っている」と述べ、「われわれはこれらの要素を繊維に結合させようとした」と語った。
極楽鳥の黒い羽毛には光を吸収するメラニン色素がある。鳥はこれとともに光を内側へ屈折させる小さな羽枝構造も持つ。小さな羽枝構造は光沢のある品位ある黒を生み出す。正面から見ると黒く見えるが、角度を変えると羽毛がきらめくように見えるためだ。研究チームは羊毛表面に合成メラニンであるポリドーパミンを被覆し、先端部分を削って小さな羽枝の形状を備えた繊維を作った。
ウルトラブラックは単に羊毛表面をメラニンでコーティングするだけでは十分ではなかった。研究チームはポリドーパミンが織物の繊維内部まで浸透するようにした。そうすると織物全体が黒く変わる。そうして初めて、後で繊維の外側の一部を削り、黒を維持しながら光を内側へ屈折させる小さな羽枝の形を作ることができた。
博士課程のハンサディ・ジャヤマハ研究員は「光が繊維の間で前後に反射し、外部へ逃げない」と説明し、「これがウルトラブラック効果を生み出す原理だ」と述べた。ジャヤマハは博士課程のパク・ギュイン研究員とともに今回の論文の共同第1著者である。
◇ファッションから太陽電池、カメラまで応用可能
シェパード教授は「デザインの観点で興味深い点は、既存のウルトラブラック素材の大半がわれわれの技術ほど着用性に優れていないことだ」と述べ、「加えて広い角度でもウルトラブラックを維持できる」と語った。
分析の結果、繊維は正面から見る場合や両側60度までの角度、すなわち120度の範囲で同様にウルトラブラックを維持したと研究チームは明らかにした。ファッションデザイン専攻でコーネル大を卒業したゾーイ・アルバレスは、シェパード教授の研究チームが開発したウルトラブラック繊維でドレスをデザインし、漆黒の黒が持続することを検証した。
ウルトラブラック技術はファッションだけでなく他分野でも活用できる。パク・ギュイン研究員は「ウルトラブラック技術は吸収した光を熱エネルギーへ変換・活用する各種の太陽熱応用分野で可能性がある」と述べ、「例えばウルトラブラック繊維を体温調節の迷彩素材として使用できるだろう」と語った。
コーネル大研究チームは繊維で最も黒い色を実現したが、史上最高の黒い物質を開発したわけではない。最高記録はマサチューセッツ工科大学(MIT)の研究チームが持つ。ブライアン・ワードルMIT航空宇宙工学科教授は2019年に米国化学会(ACS)の学術誌で、光を99.9995%吸収する黒いフォイルを発表した。
MIT研究チームは塩素でエッチングしたアルミニウムフォイル上にカーボンナノチューブを成長させ、この結果を得た。カーボンナノチューブは炭素原子が蜂の巣のように六角形で結合し束をなす物質で、導電性に優れつつ強度も高い新素材である。
世界で2番目に黒い物質は英国のナノ技術専門企業であるサリー・ナノシステムズが開発したバンタブラックである。こちらもカーボンナノチューブで構成され、光を99.965%吸収する。人工衛星やカメラ、望遠鏡、センサーなどで光の乱反射を防ぐ用途に使われる。
参考資料
Nature Communications(2025)、DOI: https://doi.org/10.1038/s41467-025-65649-4
ACS Applied Materials & Interfaces(2019)、DOI: https://doi.org/10.1021/acsami.9b08290