李在明大統領が4日から7日まで中国を国賓として訪問しているなか、韓国の流通業界は日中関係ならぬ韓中関係の改善可能性に神経をとがらせている。過去に中国の「サード(THAAD・高高度ミサイル防衛システム)報復」に伴う限韓令(韓流制限令)で現地のオフライン事業を大幅に縮小せざるを得なかった流通各社は、最近はファッション、観光など一部分野を中心に中国市場を改めて注視する雰囲気だ。
ただし両国関係が改善しても依然として政治・外交上の変数が残っており、低迷する流通市況などを勘案すると、ロッテや新世界など大企業が中国のオフライン市場に再参入するのは容易ではないとの見方も出ている。
5日、財界と大統領室によると、韓中両国は李大統領の中国国賓訪問を機に、経済・産業全般などで10件を超える覚書(MOU)を締結し、協力範囲を広げる予定だ。今回の中国訪問にはサムスン・SK・現代自・LGなど4大グループの総帥を含む200人規模の経済使節団も同行した。ロッテグループからは辛東彬(シン・ドンビン、日本名:重光昭夫)会長に代わり、ロッテ精密化学の鄭承源代表が、新世界グループからは張昇煥Gマーケット代表が同行したとされる。
流通業界は今回の訪問に伴う両国関係の行方を注視している。流通企業は過去、サード配備を機に中国政府の経済報復の直撃弾を受けた経緯がある。代表例がロッテグループである。
2016年9月、韓国政府はサード用地として慶北ソンジュ郡にあるロッテのゴルフ場を指定し、ロッテは当該用地を国防部が保有する南揚州の軍用地と等価交換した。すると中国政府は同年11月から、ロッテ製菓(現ロッテウェルフード)、ロッテマート、ロッテケミカルなど中国に進出したロッテ系各社に対し、高強度の税務調査と衛生安全点検、消防点検などを同時多発的に実施し、圧力の度合いを強めた。
翌年、中国政府は中国内のロッテマート・スーパー112店舗のうち74カ所に一斉に営業停止命令を下した。残る店舗のうち13カ所も不買運動などによる業績不振に耐えられず自主休業に入った。初期には一時的措置とみられた営業停止が1年を超えても解除されなかったため、ロッテは結局、現地のマート事業を丸ごと畳まざるを得なかった。
新世界グループのイーマートもまた中国事業で苦杯をなめた。イーマートは1997年、上海の1号店を通じて国内大手量販店として初めて中国市場に進出し、2010年には一時、店舗数を26カ所まで増やした。しかし現地化の失敗などで損失が累積し、店舗を段階的に減らし、2017年のサード報復を機に残る6店舗まで撤収して、20年ぶりに中国事業を完全に畳むこととなった。
最近、韓国の流通業界はファッションと観光など一部市場を中心に中国を改めて注目する雰囲気だ。MUSINSAは昨年12月、上海にMUSINSAストア、MUSINSAスタンダードの店舗を相次いで開設し、中国のオフライン市場に進出した。MUSINSAは今年上半期にも南京東路、徐家匯、杭州など3地域への追加出店を予告し、今後5年間で現地店舗を100店以上に増やす目標だ。
ファッショングループヒョンジもヒョンジエリートを通じて中国で制服などのファッション事業を展開している。最近はCOSMAXとMOUを締結し、中国のビューティー市場進出も宣言した。MUSINSAとファッショングループヒョンジは今回の経済使節団にも並んで名を連ねた。
観光・免税産業は昨年9月から施行された中国人団体観光客のビザなし入国措置で温かみが戻っている。韓国観光公社が先月発表した「2025年11月韓国観光統計」によると、昨年11月に韓国を訪れた中国人観光客は約37万8000人で、前年同月比26.9%増えた。中国人観光客数はコロナ以前の2019年11月と比べて75%の水準まで回復した。
新世界免税店明洞店では、ビザなし入国制度の施行後1カ月で中国人来店客数が前年同月比90%急増し、売上も40%伸びた。ホテルとカジノ業界も業績改善への期待を高めている。サムジョンKPMGは最近の報告書で「中国人インバウンドが拡大する場合、ソウルの観光ホテル市場の客室稼働率と平均客室単価が同時に上昇し、これは投資収益率の改善と資産価値の上昇を同時に牽引する」と評価した。
ただし、今後の政治・外交の変数次第では限韓令がいつでも再燃し得るため、過度な期待を警戒する雰囲気も感じられる。韓国の流通市況の低迷などを考慮すると、流通大手が過去のように中国のオフライン市場に進出するのは難しいとの見方も出ている。流通業界の関係者は「カルフール、ウォルマートなどグローバル大手もすでに中国事業を畳んだ」とし、「韓国の流通大手の中国再参入の可能性は低い」と述べた。