ホームプラスが3月4日にソウル回生法院に企業再生手続き(会社更生手続き)を申請してから9カ月を超えても買収希望者を見つけられず、一括売却ではなく事業部門の分離売却へと方向を転じた。相対的に買収魅力がある企業型スーパーマーケット(SSM)「ホームプラス・エクスプレス」を切り離して売却し、再生計画の認可後に本体のM&Aをあらためて推進する構想である。
ホームプラス労働組合側も最近、一部の構造調整の可能性を受け入れて一歩退いたことから、GSやロッテ、イーマートなど既存のスーパーマーケット事業者がホームプラスエクスプレスの買収戦に参戦するかに業界の関心が集まる。
26日、流通業界と法曹界によると、今月29日を起点にホームプラス・エクスプレスの売却作業が本格化する見通しだ。ソウル回生法院回生4部(裁判長チョン・ジュニョン法院長)は24日、ホームプラスの再生申請事件に関する手続き協議会を開き、ホームプラス側から「エクスプレス分離売却」と「認可後M&A」を含む再生案の報告を受けた。
ここでホームプラスの管理人は出席者に対し、ホームプラス・エクスプレス事業部の分離売却および認可後M&A手続きなどの内容を含む独自の再生計画案を29日に提出する予定だと明らかにした。協議会には代表債権者のメリッツ証券、売却主幹事の三一会計法人、ホームプラス労働組合、国会政務委員会所属の共に民主黨のキム・ナムグン議員らが出席した。
ホームプラスは3月の企業再生手続き開始以降、6月から裁判所の許可を得て認可前の買収・合併を推進してきた。しかし先月26日に締め切られた本入札では、買収提案書を提出した候補は一つもなかった。先に予備入札に名を連ねていた人工知能(AI)企業ハレックスインフォテックと不動産デベロッパーのスノーマッドまでもが手を引いた。政界を中心に取り沙汰されていたNH農協の買収可能性も実現しなかった。
協議会でホームプラスが部分売却の対象としてSSM事業部を指名したのは、最も魅力度が高い資産と評価されるためだ。現在、ホームプラスはキャッシュの流動性が悪化し、電気料金などの公共料金を滞納しており、今月に入っては従業員の給与まで分割支給するなど経営圧力が強まり、現金が切実な状況にある。
今年9月時点でホームプラス・エクスプレスは全国に297店のオフライン店舗を保有する3位圏の事業者だ。このうち約4分の3に当たる222店がソウル・京畿など首都圏に集中している。同業1位の事業者はGSザフレッシュで、全国に581店舗を持つ。このほかにもロッテスーパー(342店)、イーマートエブリデー(243店)などがそれぞれ2位、4位に名を連ねている。
これら事業者の立場では、ホームプラスエクスプレスを買収すれば店舗数と商圏の範囲を一気に広げることができる。さらにPB(自社ブランド)商品の拡大、近距離配送との結合などのシナジーも期待できる。
しかし国内の大半のSSM企業はすでに首都圏や住宅密集地域に進出しており、買収後に重複商圏の店舗整理が不可避だとの懸念も出ている。立地が重なる店舗を統廃合するなら、雇用問題に発展する可能性もある。
ホームプラスエクスプレスの分離売却は、これまでに一度挫折している。MBKパートナーズとホームプラスは昨年6月にモルガン・スタンレーを売却主幹事に選定し、ホームプラスエクスプレスの売却作業に着手した。当時取り沙汰された売却価格は8000億〜1兆ウォン水準と伝えられた。
しかし当時、流通業全般が構造調整の局面に入り、潜在的な買い手とされた企業が相次いで買収説を否定し、ホームプラス労組側も分離売却に強く反対して売却の議論は進展しなかった。結局3月にホームプラスが企業再生手続きに入ると、売却作業は振り出しに戻った。
業界では、ホームプラス側が売却価格を大きく引き下げない限り、買収の魅力は低いと見る。ある業界関係者は「オフライン流通業界は全般的に大規模な新規事業投資よりも既存事業の競争力強化に力を入れている雰囲気だ」と述べ、「過度な出血を甘受してまで買収しようとする企業があるのかは疑問だ」と語った。
ホームプラス全般の危機感が高まるなか、認可前M&Aの承認条件として従業員の「雇用承継」を掲げてきたホームプラス労組側も、最近は構造調整を受け入れる用意があるとして一歩退いた。労組は最近の声明で「M&Aの過程が順調ではないことはわかっている。構造調整など非常に痛みを伴う過程を踏むことも認める。円満な協議を通じて合理的な方策をともに探る」と明らかにした。