イタリア南部プーリアの夏は、昼の熱気だけでは語り尽くせない。日が沈むと大地はゆっくりと冷え始めるが、熱を含んだ赤い粘土層が月光を含み再び輝く。赤い土壌、微細な塩分、風が作り出すこの光景をプーリアの人々は「赤い夜(Notte Rossa)」と呼ぶ。
この現象には科学的な原理も潜んでいる。プーリアの土壌は酸化鉄成分が豊富な赤い粘土で成り立っている。日が低く差すと酸化鉄粒子に光が反射して赤い光が広がり、アドリア海とイオニア海の間を横切る微細な塩分粒子と土ぼこりがこの散乱効果をより強くする。月が低く昇る夏の夜には、実際に赤い月光が漂う「レッドムーン(red moon)」現象も見られる。
この特別な風景をブランド名にしたところがある。プーリア南部サレントに拠点を置く「ノッテ・ロッサ(Notte Rossa・赤い夜)」だ。ノッテ・ロッサ側は「月明かりの下でブドウを収穫する農夫たちの献身に敬意を表したくてブランド名を付けた」と語る。赤い土の上に映った月光と、その下でブドウを摘んだ人々の汗と丹精を称えるというわけだ。
実際にサレントのブドウ農家は、真昼の熱気を避けて夕方や夜の時間帯に収穫する。高温で香りが失われるのを防ぎ、ブドウの新鮮さと酸度を保つためだ。月明かりの下でブドウを摘むこの情景がブランドの出発点になった。
ノッテ・ロッサは標高約100mのなだらかな丘陵地帯で収穫したブドウで造られる。赤い土壌は石灰岩が風化して残った粘土層に鉄分が酸化してできたものだ。この赤い粘土は粒子の大きさが均一で排水性が良く、日中に日光を吸収して熱を蓄え、夜にゆっくり放出する。この過程がブドウの根の温度を安定的に保ち果実の成熟を助ける。結果としてワインの熟成後半まで糖度が上がり、タンニンは柔らかくなる。
プーリアは典型的な地中海性気候で、夏が長く乾燥している。昼は太陽がブドウを熟させ、夜は二つの海から吹く海風がブドウを冷やして鮮度を守る。こうした日較差が繰り返されることで、ブドウは凝縮した果実香とバランスの取れた酸味を併せ持つようになる。
プーリアを代表する品種はプリミティーヴォ(Primitivo)とネグロアマーロ(Negroamaro)だ。プリミティーヴォは米国ではジンファンデル(Zinfandel)と呼ばれ、甘やかで力強い果実味が特徴だ。ネグロアマーロは「黒くてほろ苦いブドウ」という意味で、濃い色調とほのかな苦み、構造感が際立つ。この二つの品種は南イタリアの気候と土壌を象徴する代表的な品種である。
ノッテ・ロッサはプーリアを代表するこの二つの品種を半分ずつブレンドし、バシアというワインを造った。バシアはサレント方言で「尊敬される人」または「貴族」を意味する。名の通り品格あるバランスと温かみが感じられるワインだ。
ノッテ・ロッサは過熟した(よく熟した)ブドウを手摘みし、除梗して優しく破砕する。24〜48時間の低温浸漬を経て色と香りを抽出し、土着酵母で約10日間発酵する。発酵後に圧搾しステンレスタンクでマロラクティック(乳酸)発酵を行ったのち、フレンチオーク樽で12カ月熟成する。
色調は紫がかった濃いルビー色だ。香りはプラムやブラックチェリーなどよく熟した赤い果実が感じられ、バニラとリコリスの香りが続く。口中では重量感のあるストラクチャーと滑らかなテクスチャーが共存し、長い余韻を残す。風味が明瞭で、前菜や赤身肉、熟成チーズと合わせて楽しみやすい。2019ヴィンテージはベルリン・ワイン・トロフィーで金メダルを受賞し、2021ヴィンテージはルカ・マローニ(Luca Maroni)で95点を獲得した。2025年大韓民国酒類大賞旧世界赤ワイン部門で大賞を受賞した。国内の輸入元はジェンニホン酒類だ。