会社員の姓パクの人物(43)は最近、友人の姓キムの人物(43)と日本旅行に出かけた。2人は同じ機種のスマートフォンで同一の日本通信会社の移動通信網に接続したが、別々の旅行用eSIM商品を使用した。スマートフォンには現地の移動通信網が正常に捕捉された。しかし姓パクの人物によると、自身のビデオ通話は3秒ごとに途切れ、ウェブページの表示にも約5〜6秒かかった一方で、姓キムの人物は特段の不便なくインターネットを利用した。
同じ通信社の網と同じ機種のスマートフォンを利用したのに品質が異なった理由は何か。答えは基地局以後のデータ処理経路にある。スマートフォンに表示される通信社名と「5G」は端末と現地基地局の間の接続状態を示す。しかし基地局に到着したデータがどの国を経由してインターネットに接続されるかはeSIM商品ごとに異なる。「現地5G対応」や「無制限データ」といった広告の文句だけでは実際の通信品質を判断しにくい理由である。
9日、グローバルなインターネット速度測定会社ウークラ(Ookla)の報告書(旅行用eSIMの性能低下・The Travel eSIM Performance Penalty)によると、主要なハブ型旅行用eSIMブランドで行われたスピードテスト5件のうち2件は、利用者が滞在する国家ではない海外サーバーを選択したことが分かった。複数国家のデータを特定の海外拠点に集約してからインターネットに接続する「ハブ方式」が広く用いられているためである。
ウークラは今年第2四半期にAndroid機器で測定されたデータを基に、約190の旅行先と50を超えるeSIMブランドを分析した。スピードテストは通信網から近い測定サーバーを自動で選択する。ウークラは選択されたサーバーの位置と実際のレイテンシ、公開された網連動施設などを照合し、eSIMデータがインターネットに接続される拠点を判別した。
◇ 同じ5G網でも遅延は最大30倍
旅行用eSIM事業者が世界各国にデータ処理設備を直接構築するには多額の費用がかかる。このため相当数の事業者はグローバルローミング・通信卸網を借り、データをマドリードやロンドン、シンガポールといった一つまたは少数の拠点に送る。事業者は構築・運営コストを抑えられるが、利用者はデータが長距離を迂回することで発生する遅延を甘受しなければならない。
ウークラの分析では、旅行用eSIMの遅延時間(レイテンシ)の中央値はブランドと旅行先の組み合わせにより、現地移動通信利用者の1.5倍から最大30倍に達した。オーストラリアの利用者のデータをオランダ・アムステルダムに送った商品は、現地利用者より遅延が30倍長かった。マドリードのハブを利用した商品の遅延も、現地利用者比でシンガポールで25倍、タイで18倍、日本で15倍長かった。
日本の通信会社KDDIの移動通信ブランドであるau網では、データ処理経路による差が顕著だった。現地利用者の遅延は36ミリ秒(ms)だった。データを日本で直ちにインターネット接続した旅行用eSIMは54msを記録したが、マドリードへ送った商品は543msに達した。スマートフォンと基地局の間の通信環境は同じだったが、基地局以後の経路によって遅延が10倍に広がった格好だ。
遅延時間は、利用者がデータを要求してから応答を受け取るまでにかかる時間である。ダウンロード速度が速くても遅延が長いと、ビデオ通話やオンライン会議で反応が遅れたり画面が途切れたりする可能性がある。一例として、ウークラによると旅行用eSIM業者A社は世界各国で測定したダウンロード速度の中央値が56.87Mbpsと比較的速かった。しかしデータを主にマドリードのハブへ送ったため、遅延の中央値は320msに達した。逆に接続拠点を複数地域に置いた事業者は相対的に短い遅延を示した。ドイツ、オランダ、米国、シンガポール、日本などに接続拠点を分散したeSIM業者B社は、遅延の中央値が117msと低く測定された。
◇ 購入前には確認しにくいデータ経路
問題は、消費者がeSIMを購入する前にデータ処理経路を確認しにくい点である。相当数の商品は、対応国とデータ容量、有効期間、現地の提携通信社程度しか案内しない。実際の体感品質を左右するインターネット接続国と想定遅延、速度制限の有無はなかなか公開されない。
通信業界の関係者は「スマートフォンに出る5G表示は目の前の基地局とつながっているという意味にすぎず、自分が送ったデータが世界のどの都市まで回って戻ってくるのかは教えてくれない」と語った。
購入後であればデータ経路をある程度推定できる。通信業界によると、現地でWi-Fiと仮想私設網(VPN)をオフにし、旅行用eSIMのモバイルデータだけをオンにした上で、スピードテストが自動選択したサーバーの国と遅延を確認すればよい。IPアドレスがどの国で表示されるかも参考になる。日本にいるのにスペインのサーバーが選択されたり、IPアドレスがスペインと表示されるなら、データがスペイン拠点を経由している可能性が大きい。ただしこの方法でも実際の移動経路全体を確定することはできず、購入前の商品比較には活用しにくい。
ウークラによると、国際ローミング全体のうち旅行用eSIMの比重は昨年6月の2.7%から今年6月の3.4%へ0.7%ポイント(P)上昇した。eSIM利用が急速に増えるだけに、eSIM事業者は「5G」と「無制限」だけを強調するのではなく、旅行先ごとのインターネット接続国と想定遅延、速度制限の有無を購入前に公開する必要がある。