ロッテグループのITサービス系子会社であるロッテイノベートが人工知能(AI)とデータセンターを中心に事業の優先順位を再定立し、収益性回復に拍車をかけている。2021年にロッテイノベートがメタバース(Metaverse・仮想融合世界)事業進出のために買収した「カルリバス」は将来の中核事業から事実上外れたことが分かった。メタバースブームが沈静化しカルリバスが赤字から脱せない中、事業の再編と縮小の手順に入ったとみられる。
1日、金融監督院の電子公示システムによると、ロッテイノベートは今年の半期報告書の主要事業概要で「メタバース」を除外し「フィジカルAI」を追加した。ロッテイノベートの売上を構成する3大事業はSM(システム管理)、SI(システム統合)、電気自動車充電であり、このうちSI事業の売上が4199億ウォンで全体の76%を占める。2026年1〜3月期の事業報告書まではロッテイノベートはSI事業に「メタバースとAI事業などが含まれる」と記載していたが、今回の半期報告書ではメタバースが外れ、「フィジカルAIなどの新技術を基盤とする事業が含まれる」との文言に変わった。
半期報告書のSI事業の販売戦略の説明でも、ロッテイノベートはAI・クラウド・データセンターを中核事業と定義し、関連分野を育成して継続的に市場シェアを拡大するという青写真を示した。直前の1〜3月期報告書で新成長分野として指摘していたメタバースは半期報告書から外れた。
メタバース事業が当初期待した成果を出せなかったことで、ロッテイノベートも関連事業の再整備に乗り出したと分析される。世界のメタバース市場は新型コロナ期間に非対面サービスが活性化し爆発的に成長した。ロッテイノベートはこの流れに合わせて2021年7月に仮想現実(VR)コンテンツ企業ビジョンVRを120億ウォンで買収し、100%子会社化した。その後カルリバスに社名を変更し、2024年8月にメタバースプラットフォームを発売したが、なかなか利益を生み出せず、ロッテイノベートの「痛い指」と化した。
今年上半期のカルリバスの売上は16億8400万ウォン、営業損失は69億ウォンを記録した。売上は前年同期比38.6%減少し、赤字幅は35%縮小した。
これまでロッテイノベートは、カルリバスが安定的な成長軌道に乗るまで初期投資の負担は不可避だとみなし、国内通信3社やゲーム会社がメタバース事業から撤退した際もカルリバスを守ってきた。世界最大のIT見本市「CES」にも2年連続で参加し、カルリバスのメタバース技術を積極的にPRした。
ロッテイノベートがこれまでカルリバスに投入した資金だけで640億ウォンに達する。2021年に120億ウォンで買収した直後に70億ウォンを追加出資し、その後2023年に250億ウォン、2024年に200億ウォンの有償増資を実施した。しかし今年上半期時点でカルリバスへの投資金のうち359億ウォンが減損損失として反映された状態だ。減損損失とは資産の実際の価値が帳簿価額より著しく低下したときに、財務諸表に損失として反映する会計処理を指す。帳簿上残っているカルリバスの投資価値は約281億ウォン水準で、初期投資金に比べ半分以上減ったことになる。
これを受けロッテイノベートは、カルリバスを高仕様のメタバースプラットフォームとして育てる代わりに、ロッテON・ロッテハイマートなどグループの既存の流通事業と組み合わせ、AIと3D技術を活用した購買体験を支援する方式へとビジネスモデルを改編した。会社関係者は「カルリバスのAI・3D技術をロッテグループ各社のコマース分野と連携し、関連ケイパビリティを高度化して多様な産業分野のAX(AI転換)を支援する」と語った。
世界的にメタバース関連の需要と投資が冷え込んだ点も、ロッテイノベートの事業優先順位の調整に影響したとみられる。代表例として、メタバースを中核事業に育成するという一念で2021年に社名までフェイスブックからメタに変更したMeta(メタ)は、関連組織「リアリティ・ラボ」が設立以来累計700億ドル(約103兆ウォン)の大規模赤字を出したことから構造改革を断行し、AIとウェアラブル(着用型)機器に事業のリソースを集中することにした。
ロッテグループは辛東彬(シン・ドンビン、日本名:重光昭夫)会長の指揮の下、全社的なAI転換と収益性重視の経営基調にスピードを上げている。辛会長は6月にCEO AIアカデミーに出席し、「AXは選択ではなくグループの生存が懸かる最優先課題だ」と述べ、フィジカルAIを含むAI新事業の重要性を強調した。2024年まではメタバースは辛会長が挙げたロッテグループの4大未来事業の一つだったが、今年はメタバースへの言及はなかった。
これによりロッテイノベートの主力事業もAI・クラウド・データセンターとフィジカルAIへと移ったとみられる。こうした変化は実際に同社の収益性回復につながった。ロッテイノベートは今年上半期の売上が5557億ウォンで前年同期比1.7%減少したが、営業利益は同期間に47.5%増の211億ウォンを記録した。データセンターの設計・構築・運用(DBO)などを中心に事業性に焦点を当てた選別受注が収益性改善を牽引したと会社側は説明した。