「ごく近い将来には人工知能(AI)を活用したサイバー攻撃がリアルタイムで行われるようになる。現実的にこれに対応できる唯一の方法はAIでAIに立ち向かうことだ。」
トム・スカリー・パロアルトネットワークス アジア・太平洋および日本地域 政府・重要インフラ部門ディレクターは26日、ソウル・小公洞のウェスティン朝鮮ホテルで開かれた韓国最大のテックカンファレンス「SMARTCLOUD SHOW 2026」の基調講演でこう述べた。
スカリーディレクターは「セキュリティチームが攻撃を発見して遮断し、被害が発生する前に復旧できる時間がますます短くなっている」とし、「すでに現実の場面で攻撃者はAIを活用して攻撃の速度、規模、精巧さを高めている」と語った。
パロアルトネットワークスの脅威インテリジェンス組織「ユニット42(Unit 42)」によると、企業の主要な脆弱性が公開された後、攻撃者が当該脆弱性を狙って大規模スキャンに乗り出すまでにかかる時間は15分にすぎない。特にネットワーク侵入に成功した事例のうち25%は、データ流出まで72分しか要しなかった。
攻撃者はこの過程で各段階ごとにAIを活用している。偵察段階では公開情報を大規模に収集・処理し、これまで発見されていなかったコマンド&コントロール(C2)ドメインや新たなマルウェアを作る。侵入後にはAIを活用して検知可能性を下げつつ内部移動経路を見つける手法も行われている。
AIを活用して既存のセキュリティ体制の検知を回避するマルウェアも登場した。スカリーディレクターは、実行するたびに新しいマルウェアを生成する「ブラックマンバ」を代表的な事例として挙げた。ブラックマンバは、ユーザーが悪性のPythonコードを実行するとAIを利用してメモリ上で新たなマルウェアを生成する。新たに作られたマルウェアは既存に登録された特徴(シグネチャ)がなく、メモリ上で実行されるため、既存のエンドポイントセキュリティソリューションで検知するのが難しい。
企業がセキュリティ問題が生じるたびに個別ソリューションを追加した結果、セキュリティ体制が過度に複雑化した点も問題として指摘された。スカリーディレクターによると、企業は平均83種類のセキュリティツールを運用している。各ツールを導入・連携し、担当者が複数システムで発生するデータを取りまとめて判断する構造では、AIが実行する高速攻撃に対処しにくい。
スカリーディレクターはこれを解決する方法として「プラットフォーム化」を提示した。複数のセキュリティツールで発生するデータを単一のプラットフォームに集約し、AIと機械学習を適用して検知、分析、対応まで自動化する方式である。
パロアルトネットワークスも自社のセキュリティオペレーションセンター(SOC)に同様の方式を適用している。スカリーディレクターによると、パロアルトネットワークスのSOCは1日900億件に達するセキュリティイベントをAIとMLで2万6000件の検知結果に圧縮し、これをさらに平均75件の対応事例に絞り込む。
スカリーディレクターは「このうち65件のみが人が最終判断を下す部分自動化のプロセスを経ており、実際にセキュリティアナリストが直接処理しなければならないインシデントは1件水準だ」とし、「パロアルトネットワークスのSOCは平均検知時間と対応時間をそれぞれ7分、1分に短縮した」と明らかにした。
ただしAIエージェントがセキュリティを担当することで生じる問題もある。AIエージェントが企業システムに直接アクセスし、ユーザーに代わって行動する以上、過度な権限が付与される場合にはこれを悪用する可能性がある。
これに対する対策として、AIエージェントに必要最小限の権限のみを一時的に付与する方式を示した。スカリーディレクターは「エージェントが遂行すべき意図と作業を定めたうえで、当該作業に必要なシステムとデータにのみアクセスできるよう権限を付与すべきだ」とし、「作業が終われば当該権限も終了する方式だ」と説明した.