マイクロチップ・テクノロジーが小型衛星と低軌道(LEO)衛星で使用できる超小型原子時計「スペースCSAC-SA65」を発売したと14日に明らかにした。原子時計は原子の一定の振動を基準に時間を測定し、一般的な電子式時計より精密に時刻を合わせる装置である。
今回の製品は民間企業が宇宙開発と商用サービスを主導する「ニュー・スペース(New Space)」市場を狙った。小型衛星を活用した衛星通信と位置・航法サービス、地球観測などが増え、サイズが小さく消費電力が少ない宇宙用電子部品の需要が増加しているというのが同社の説明である。
スペースCSAC-SA65はマイクロチップの既存のチップスケール原子時計「スペースCSAC-SA45」を基に開発された。チップスケール原子時計(Chip Scale Atomic Clock・CSAC)は原子時計の機能を半導体チップ水準に小型化して実装した製品である。大型の原子時計より衛星に搭載しやすいという利点がある。
製品は宇宙で発生する放射線にも耐えられるよう設計された。耐放射線性能は最小30キロラド(kRad)だ。kRadは半導体が耐えられる放射線量を示す単位である。動作温度範囲はマイナス40度からプラス80度までである。
消費電力は120ミリワット(mW)未満で、体積は17立方センチメートル(㏄)未満である。衛星は打ち上げ費用と搭載スペースの制約があるため、部品のサイズと重量、消費電力を抑えることが重要だ。特に複数の小型衛星を打ち上げる低軌道衛星事業では、こうした条件が製品設計に直接的な影響を及ぼす。
外部から時刻情報を継続的に受信しなくても一定時間、正確な時刻を維持できる点も特徴である。衛星は一般的に衛星航法システム(GNSS)などの外部信号を利用して時刻を合わせる。GNSSは米国のGPSのように衛星を利用して位置と時刻を提供する航法システムを指す。
スペースCSAC-SA65は原子時計自体の高い時間安定性を利用し、外部信号を継続的に受けにくい状況でも衛星内部機器の時刻を合わせられるよう設計された。衛星の複数の機器が同一の基準時刻で作動できるようにする1PPS(Pulse Per Second)入出力機能も搭載した。1PPSは1秒ごとに一度、電気信号を送って機器間の時刻を同期させる方式である。
マイクロチップはこの製品を低軌道衛星の時間・周波数制御や衛星内部の基準時計、位置・航法・時刻情報の維持などに使用できると説明した。衛星同士が直接通信する「クロスリンク(Cross-link)」にも活用できる。
特に外部の航法信号が途絶したり妨害される状況でも位置・航法・時刻情報を維持する「保証型ポジショニング・ナビゲーション・タイミング(Assured Positioning, Navigation and Timing・A-PNT)」システムに適用できる。衛星や航空機などでは、正確な時刻情報が位置計算と通信機器の同期の基準として使われる。
スペースCSAC-SA65は耐放射線機能を備えた商用電子部品を活用した商用既製品(COTS)方式で生産される。COTSは特定の宇宙任務のために最初から別途開発する部品ではなく、すでに商用化された部品と技術を活用して作る製品を意味する。
マイクロチップはこれにより、従来の宇宙・航空用部品より製品供給までに要する時間を短縮し、コストも抑えられると説明した。宇宙用電子部品は高い信頼性と耐放射線性などが求められ、一般の商用部品より開発と検証に多くの時間がかかる。
ランディ・ブルジンスキー・マイクロチップ周波数・タイミングシステム事業部副社長は「電力消費が最も低い原子時計の一つが極限環境でも安定的に動作できるようになり、最小のキューブサット(CubeSat)でも原子時計水準の精度で運用できるようになった」と述べ、「外部の基準時刻信号を使用できない環境でも同期と時刻精度を維持できるよう支援する」と語った。