Anthropicの人工知能(AI)モデル「Claude Mythos Preview」。/聯合ニュース

米国政府が自国の最新人工知能(AI)モデルの輸出を統制する、いわゆる「AI鎖国政策」に動き出す中で、中国企業がこの空白を突き、Anthropicの「Mythos」に匹敵するセキュリティ能力を備えたAIモデルを打ち出している。セキュリティ分野でAI主権を強化すると同時に、高性能なセキュリティAIを必要とする米国以外の国家や企業の需要に対応する措置とみられる。

米中のAI性能格差が次第に縮まる中で、ドナルド・トランプ政権のAI輸出制限がOpenAIとAnthropicの競争優位を揺るがす逆効果を招くとの指摘も出ている。

29日、業界によると、中国のZhipu AIが先週投入した最新のオープンウエイトモデル「GLM-5.2」のソフトウエア脆弱性検出能力が、Anthropicをはじめとする米国の最先端AIモデルに匹敵する水準だとの評価を受けた。米サイバーセキュリティ・スタートアップのSemgrepによる主要な「不完全な直接オブジェクト参照(IDOR)」脆弱性検出ベンチマーク(性能指標)で、Zhipu AIの「GLM-5.2」は先月公開されたAnthropicの「Claude Opus 4.8」を一部項目で上回った。追加プロンプト(指示・prompt)を与えた場合には、「Claude Opus 4.8」と「GLM-5.2」の双方がMythosと同程度の脆弱性検出能力を発揮し得ると研究チームは診断した。

Semgrepの研究チームは「オープンウエイトモデルであるGLM-5.2が、最先端のクローズドモデルの約6分の1のコストで脆弱性検出分野においてより優れた性能を示した」と述べ、「これは、オープンウエイトモデルが性能面でクローズドモデルに大きく劣後しなくなったことを意味し、企業のセキュリティ担当者にとって魅力的な選択肢になり得る」と分析した。オープンウエイトモデルはAIモデルの重みを公開したモデルで、誰でもダウンロード後にカスタマイズして自社インフラで目的に応じて活用できる。

米セキュリティ・スタートアップのGraphistryも主要AIモデルの脆弱性検出性能を測定した結果、Zhipu AIのGLM-5.2がAnthropicの「Opus 4.8」やOpenAIの「GPT-5.5」と同等の性能を記録したと発表した。Graphistryの研究チームは「現時点では、Opus 4.8を用いた脆弱性検出の速度がGLM-5.2より19%速かったが、これもCerebrasがGLM-5.2をサポートし始めれば差はなくなるだろう」と評価した。

中国のサイバーセキュリティ企業360(三六零)も先週、Anthropicの「Mythos」に対抗する脆弱性自動検出AI「土龍風(トゥーロンフォン)」と自動化防御システム「夷天陣(イーテンジェン)」を披露した。周鴻禕(ジョウ・ホンイ)360創業者兼最高経営責任者(CEO)は土龍風を「中国版Mythos」と紹介し、これまでに土龍風が3432件のソフトウエア脆弱性を発見したと明らかにした。周鴻禕は「サイバー戦の局面を変え得る強力な武器を米国だけが手にしてはならない」と述べ、独自のAIセキュリティ能力の構築が必要だと強調した。

周鴻禕は「米国が先端AIモデルを活用して中国のソフトウエアや重要インフラを分析する間に、中国がこれに見合うAI能力を確保できなければ、中国は安全保障上のリスクに直面することになる」と述べ、「中国のAIモデルは米国の最先端モデルと比べて依然として20〜30%性能が劣るため、格差を縮める努力が必要だ」と主張した。

中国企業によるセキュリティ特化型AIモデルの投入は、米国政府が先端AIモデルの輸出を統制する時期と重なっている。トランプ政権は安全保障上の懸念を理由に、Anthropicの「Mythos5」と「Fable5」への外国人の接続を遮断する輸出制限指針を出し、OpenAIの最新モデル「GPT-5.6」については政府が承認した少数企業にのみ先行公開し、正式リリースの延期を指示した。サービスが停止していた「Mythos5」は、最近になって米国の一部企業に限ってアクセス制限が解除された。

米国がAIモデルを事実上の国家戦略資産として扱い始め、開発企業も政府の許可を得て新規モデルを段階的に投入せざるを得ない時代になったということだ。問題は、中国企業がこの隙を突き、Mythosを標榜したセキュリティ特化型AIモデルを公開し、米中のAI覇権競争の範囲がサイバーセキュリティ領域へと広がる様相を呈している点である。

米国の著名ベンチャー投資家マーク・アンドリーセンはソーシャルメディア(SNS)Xに「多くの専門家とAI業界関係者は、Zhipu AI GLM-5.2の性能が米国の最先端AIモデルと同等、あるいは分野によってはこれを上回った最初の中国AIモデルだと評価している」とし、「最近の一連の状況を踏まえると、このモデルが登場した時点は絶妙で示唆に富む」と書いた。

OpenAIとAnthropicはいずれも大型の新規株式公開(IPO)を控え、企業価値を高め、ますます高度化する中国モデルと競うため新モデルの早期投入を迫られているが、政府規制によりグローバル市場で事業拡大の機会を逸しかねないとの懸念も強まっている。AI産業ではスピードが生命であり、新モデルを出すたびに輸出が統制されれば、グローバル企業が性能が高く相対的に安価な中国モデルを選ぶ可能性が高まるためだ。

中国に続き日本も独自のセキュリティAIモデルを投入し、追撃に乗り出した。日本のAI企業Sakana AIも先週、最先端AIモデル「Fugu」を発表し、「Anthropicの『Fable 5』や『Mythos Preview』といった最先端モデルに匹敵するセキュリティ性能を備えた」と述べ、「当社モデルは輸出統制リスクなしに最高性能のAIを提供する」と強調した。

米国のAI規制に対応して中国と日本がセキュリティ能力を強化した自前のAIモデルを打ち出す中で、韓国も急ぎこれに匹敵する性能のAIモデルを開発すべきだとの声が高まっている。裵慶勲(ペ・ギョンフン)副総理兼科学技術情報通信部長官は先月末の記者懇談会でMythosに言及し、「今こそ韓国も米中と同等水準のフロンティア(最先端)モデルを作る挑戦をする時が来た」と述べた。

ただし政府は来年から独自のAI技術を活用した多様な情報保護プロジェクトを推進し、AIセキュリティ主権の確保に乗り出す方針だと明らかにしたが、一歩遅れたとの指摘も出ている。韓国のセキュリティ業界のある関係者は「独自AIの開発には時間がかかるため、当面はグローバル最先端モデルを活用すると同時に、ソブリンAI構築に向けた国産セキュリティAIモデルの開発を進めるほかない」と説明した。

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