イ・ジェシン SKテレコムAI事業開発担当(副社長)。/SKテレコム

SKテレコムの人工知能(AI)戦略がモデル開発を越えて「AIを回すインフラ」へと移行している。生成AI競争の重心が超巨大モデルの学習から、実際のサービスを安定的かつ低コストで駆動する推論インフラへ移っているとの判断からだ。

イ・ジェシン(50)SKテレコムAI事業開発担当(副社長)は15日、ChosunBizと会い「AI産業の重心が学習から推論へ移っている」と述べ、「今後はAIデータセンターと推論インフラをいかに効率的に運用するかが競争力になる」と語った。

米国シラキュース大学会計学修士出身のイ副社長は2001年にSKテレコムに入社し、事業開発および戦略業務など主要ポストを幅広く務めてきた。2021年からはAI事業開発担当を務め、SKテレコムAI CIC傘下で投資、事業開発、戦略、グローバルビッグテックとのパートナーシップを担っている。AnthropicとPerplexityへの投資を主導し、これをAI個人秘書サービス「エイドット」と独自ファウンデーションモデル「A.X K1」の開発につなげてきた。最近では国産AI半導体とAIデータセンターまで束ねるフルスタック戦略に速度を上げている。

イ副社長が見るAI投資の基準は明確だ。単なる財務投資ではなく、SKテレコムの事業と噛み合わなければならないということだ。イ副社長は「投資する際は戦略的シナジーが実証されなければならない」とし、「いかに良い会社でも、当社と事業的協力の可能性がなければ投資しない」と述べた。

Anthropicへの投資はこの原則を示す事例だ。SKテレコムは生成AI市場が本格化した時点から、自社モデル開発とグローバル先導モデル企業との協力を並行すべきだとみていた。イ副社長は「Anthropicは、なぜ当社に投資しようとするのか、互いに得られるものは何かをまず尋ねた」とし、「単純な資金調達よりも長期協力の可能性を重視する姿勢が印象的だった」と語った。

◇ エヌビディアGPUにRebellions NPUを加え推論インフラを補完

SKテレコムは最近、エヌビディアとDSXプラットフォームに基づく「フルスタックAIクラウド」協力に乗り出した。エヌビディアの最新グラフィックス処理装置(GPU)「ブラックウェル」と次世代プラットフォーム「ベラ・ルービン」を先行確保し、AI学習と高性能推論需要に対応する構想だ。

同時にSKテレコムは、すべてのAI演算をGPUのみに任せない戦略を推進している。作業の性格に応じてGPUとニューラルネットワークプロセッサ(NPU)を併用する「異種コンピューティング・ハイブリッド」構造だ。学習と高性能演算はGPUが担い、反復的に発生するサービス推論は電力効率の高いNPUが一部を分担する方式である。

イ副社長はRebellionsのNPUの役割を「GPUの代替ではなく補完」だと説明した。イ副社長は「GPUが得意な領域とNPUがより効率的な領域を分けて使うハイブリッド戦略を取っている」とし、「学習や汎用高性能演算ではGPUが引き続き重要だが、すでに作られたモデルを実サービスで反復的に駆動する推論領域では、電力効率と運用コストがはるかに重要だ」と述べた。

SKテレコムが最近、ArmおよびRebellionsとCPU・NPU結合型AI推論サーバーソリューションの開発に乗り出したのも同じ文脈だ。3社はArmのデータセンター向けプロセッサ「Arm AGI CPU」とRebellionsのAI推論用アクセラレーター「RebelCard(リベルカード)」を結合したサーバーを開発し、これをSKテレコムのAIデータセンターで検証する計画である。

AI推論は、学習を終えたモデルが実サービスで利用者の要求に応答する段階だ。個別演算は学習より軽い場合もあるが、利用者の要求が常時反復されるため、累積使用量が増えるほど電力効率、遅延時間、安定性、運用コストが中核的な競争力となる。

イ副社長は「AIデータセンターはサーバーだけを単純に提供する事業者ではない」とし、「AIモデルとサービスを24時間途切れなく安定的に駆動しなければならない中核インフラだ」と述べた。

◇ モデル・サービス・データセンターを束ねるフルスタックAI

SKテレコムはAI事業を、モデル、サービス、インフラが結合した構造とみている。独自ファウンデーションモデル「A.X K1」、AI個人秘書サービス「エイドット」、GPU基盤AIクラスター「海印(ヘイン)」、AIデータセンターを一つに束ねる方式だ。

イ副社長は「ある会社はインフラだけ、ある会社はサービスだけを手がける」とし、「当社は両方を持ち、これを接続できる点が差別化だ」と述べた。イ副社長は「世界の通信会社の中でサービスとインフラ、モデルまでフルスタックをすべて持つ会社はほとんどない」と語った。

通信会社として蓄積した運用経験もAIインフラの競争力だとみている。AIサービスは障害なく常時作動しなければならず、大規模トラフィックを安定的に処理しなければならない。通信網運用で蓄積した障害対応、品質管理、トラフィック制御の能力がAIデータセンター運用にも適用できるという説明だ。

Perplexityへの投資はフルスタック戦略のサービス面を示す。SKテレコムはPerplexityのAI検索能力をエイドットに接合できると判断した。イ副社長は「Perplexityが検索で強みを持っており、エイドットサービスにこの機能を入れて協力してみようという点に当初から納得した」と語った。

◇ 蔚山AIデータセンターでグローバル需要に対応

SKテレコムがアマゾンウェブサービス(AWS)と蔚山に建設しているハイパースケール級AIデータセンターも、推論インフラ戦略の中核軸だ。グローバルビッグテックと国内通信会社が韓国に大規模AIデータセンターを造成するという点で、韓国のAIインフラ市場の象徴的事業とされる。

イ副社長は「グローバルビッグテックが韓国にデータセンターをつくるという点で大きな意味がある」とし、「国内需要だけでなく海外需要に対応するという点でも意味がある」と述べた。イ副社長は「AWSとデータセンターを建てて終わりではなく、ビッグテックが要求する条件を満たしながら運用ノウハウを蓄積できる」と語った。

蔚山が選ばれた背景には、電力、用地、ネットワークの立地がある。AIデータセンターは一般のデータセンターより電力需要が大きい。首都圏は用地と送電網の負担が大きいが、蔚山は大規模用地の確保が可能で、釜山の国際海底ケーブル陸揚局にも近い。SKグループ系が運営するLNG発電所が近隣にあり、電力確保の面でも有利だという説明だ。

イ副社長は「蔚山はデータセンターを建てるための土地も重要で、海底ケーブルやネットワーク接続性の面でも適した位置だ」とし、「小さなデータセンターを各地に建てるよりも、後で拡張できるか、土地と電力が確保されているかが重要だった」と述べた。

AIデータセンター投資は、株主の立場からは大規模費用に見える可能性がある。しかしSKテレコムは、これを通信本業以降の長期成長インフラとみている。AIサービスが増えるほど、学習と推論のためのコンピューティング需要が構造的に拡大し、これを安定的かつ効率的に運用する事業者の価値も高まるという判断だ。

イ副社長は「株主の観点で重要な問いは、この投資が単なる費用なのか将来成長のための基盤なのかという点だ」とし、「SKテレコムはAIデータセンター投資を通信本業以降の長期成長インフラとみている」と語った。

◇ ソブリンAI需要を狙い…次の投資もインフラ

SKテレコムは公共機関、金融、通信、研究分野で、国内で統制可能なソブリンAIインフラ需要が拡大するとみている。データがどこに保存され、誰が運用し、セキュリティと統制が可能かがAIインフラ選定の重要な基準になるとの判断だ。

イ副社長は「データ主権、データセンターの位置、セキュリティ、国内運用かどうかに対する信頼が重要だ」とし、「公共機関や金融、通信、研究分野では国内で統制可能なAIインフラ需要が増える」と述べた。

今後の投資方向もインフラに比重がかかる。イ副社長は「今はインフラ側にもう少し集中すべきだ」とし、「データセンターをより効率的に運用できる技術とソフトウエアを持つ会社を検討している」と述べた。

ただし当面は特定の国を定めてAI輸出に乗り出すより、国内でモデルとサービス、インフラの完成度を高めることに優先順位を置いている。イ副社長は「どの国を最初に攻略したという類の輸出実績より、AIモデルをさらに精緻にし多様なサービスを盛り込むことが重要だ」とし、「グローバル進出はこの部分をより精緻化した後に進めるのが良いと考える」と語った。

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