グラフィック=ChatGPT ダリ

アップルが人工知能(AI)音声アシスタント競争で遅れて反撃カードを切ったが、出足から「半端なAI」というレッテルが付いた。アップルが打ち出したAI戦略が開始直後から二つの壁に阻まれたためだ。

一つは機器仕様で、もう一つは規制である。最新のiPhoneを購入しても一部の高機能は高価格モデルでのみ作動する。欧州連合(EU)ではデジタル市場法(DMA)との衝突を理由に、iPhone・iPad向けSiri AIが当面は提供されない。アップルのAIは「iPhoneユーザーなら誰でも使う機能」ではなく、「高価なiPhoneを使い、規制が比較的緩い地域にいなければ十分に使えない機能」になった形だ。

◇「Siri AI」高機能対応iPhoneも「グレード分け」

アップルは9日、年次開発者会議「WWDC 2026」で次世代AIアシスタント「Siri AI」を公開した。2024年に生成AI機能をSiriに統合すると予告してから2年余りぶりだ。アップルは新しいSiriが、ユーザーの画面内容やメッセージ、メール、写真、予定など個人の文脈を理解し、複数アプリを横断して複雑な作業を実行できると説明した。単に天気を尋ねてアラームをセットする音声アシスタントではなく、iPhone内の情報を読み取り代わりに行動する個人AIアシスタントにする構想だ。

しかし市場の反応はアップルの期待ほど熱くない。アップルの高度なオンデバイス(内蔵型)AI機能が12ギガバイト(GB)の統合メモリを要求するためだ。この条件を満たす機器はiPhone Air、iPhone17 Pro、iPhone17 Pro Maxなど上位モデルが中心だ。iPhone17の基本モデルは最新フラッグシップのラインアップに含まれるが、8GBのRAMを搭載したことを理由に一部の高機能Siriから外れる。

もちろんiPhone17の基本モデルでSiri AIが全く作動しないわけではない。基本的なApple Intelligence機能はより広い機器で提供される。だが、アップルが今回の発表で強調した、より自然なSiriの音声表現や高度化した音声入力(ディクテーション)といった中核体験の一部は高価格モデルに縛られる。同じ年に発売されたiPhoneを買っても、基本モデルとProモデルの間にAI体験の格差が生じる構図だ。

この点で、アップルの従来のハードウエア戦略が弱点として跳ね返ったとの指摘が出る。アップルはこれまで、ハードとソフトを一体設計する強みを前面に出し、競合より少ないRAMでも安定的な性能を実現してきた。しかしオンデバイスAI時代には事情が変わった。クラウドサーバーにのみ依存せず端末内でAIモデルを回すには、演算とパーソナライズデータをリアルタイムに処理するメモリの余力が必要だ。RAMはもはや単なる性能補助装置ではなく、AI機能を分ける敷居になった。

◇ 欧州ではiPhone・iPadのSiri AI提供を保留

より大きな変数は欧州だ。アップルはEU域内のiPhoneとiPadユーザーにSiri AIを当面提供しないことにした。アップルが問題視したのはEUのDMAである。DMAは、アップルのような大規模プラットフォーム事業者が自社サービスにのみ有利な形でエコシステムを運営できないようにし、競合サービスとの相互運用性を強化することを求める規制だ。

アップルはこの規制がSiri AIの個人情報保護構造と衝突すると主張する。新しいSiriが適切に作動するには、ユーザーのテキスト、メール、写真、予定、ファイル、画面内容のような機微情報を理解しなければならない。アップルは、この情報を端末内部または自社のプライバシー保護体制の下で処理するよう設計したと説明する。ところがDMAに従い第三者(他社)のAIアシスタントにも同程度のアクセス権を開放しなければならないとすれば、利用者情報が外部に流出するリスクが高まる可能性があるというのがアップルの論理だ。

EUの問題意識は異なる。アップルが「セキュリティ」と「プライバシー」を掲げて自社エコシステムを閉じたままにすれば、iPhone内でSiriだけが有利な位置を占め得るということだ。SiriにはiPhone内部データとアプリ制御権限を深く許容しつつ、他のAIアシスタントには同水準のアクセスを阻むなら、AI時代のプラットフォーム支配力は一段と強まる。結局今回の衝突は、個人情報保護とプラットフォーム開放という二つの価値がAIアシスタント時代に正面からぶつかった事例である。

◇ 韓国は規制より「機器仕様」が変数

韓国は欧州と状況が異なる。現在の韓国にはEUのDMAのようにビッグテックプラットフォームに強い相互運用性義務を課す規制がない。Siri AIが韓国語と国内サービス環境に合わせて正式に発売されるなら、欧州のように地域規制によって利用自体が遮られる可能性は大きくない。ただし、機器仕様による機能制限は韓国にもそのまま適用される可能性が高い。

市場では、このような制限がiPhone買い替え需要を刺激し得るとの分析と、消費者の反発を強め得るとの見方が同時に出ている。アップルにとってはAIが高価格iPhoneの販売を押し上げる名分になる。逆に消費者にとっては、問題なく使っていたiPhoneがAI時代には一瞬で旧式機になる格好だ。モルガン・スタンレーは、世界のアクティブなiPhoneのうち8億5000万台以上が基本的なApple Intelligence機能を実行できず、13億台以上が高機能Siriを使えないと試算した。

アップルがWWDC 2026で示したのは、完成したAI戦略というよりAI時代のジレンマである。より賢いAIを作るには、より高い機器性能とより深い個人情報アクセスが必要だ。しかし機器性能を理由に機能を制限すれば、消費者は「グレード分け」だと反発する。個人情報保護を理由にエコシステムを閉じれば、規制当局は「独占」だと圧力をかける。

アップルはSiri AIを通じてAI競争で出遅れたとの評価を覆そうとした。だが第一歩から「高価なiPhoneでしか動かないAI」、「欧州では使えないAI」という論争を抱えることになった。アップルが語ってきた「皆のためのAI」が、実際には高価格モデルと一部地域のユーザーにのみ開かれたAIになるのではないかという批判が出る理由だ。

ブルームバーグ通信によると、アップルはカメラを搭載したAirPods、第2世代の折りたたみiPhone、20周年記念iPhoneなどを2027年に投入する案を進めている。20周年記念iPhoneは、ほぼベゼルのないディスプレーと側面を包む曲面ガラスのデザインを採用し、2ナノ工程のA21チップを搭載する可能性が取り沙汰される。アップルがAI競争で出遅れたとの評価をハードウエアの革新で挽回できるかが次の注目点だ。

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