イーロン・マスク、テスラ最高経営責任者(CEO)がスペースXの新規株式公開(IPO)を前に「宇宙人工知能(AI)データセンター」構想を自ら説明した。スペースXが投資説明書で当該事業の技術的不確実性と商業化失敗の可能性を警告した中で、マスクが公開の場で実現可能性を強調し投資家の説得に乗り出した形だ。
マスクは8日(現地時間)、エックス(X・旧ツイッター)にテキサス州バストロップのスターリンク端末工場で撮影した動画を投稿し、太陽光ベースの軌道上AIデータセンター計画を紹介した。マスクは宇宙AI衛星にまったく新しい技術が必要なわけではないとし、次世代スターリンク衛星の開発過程で蓄積した設計・通信・量産技術を相当部分活用できると説明した。
動画にはスペースXのエンジニア、イアン・ダールも出演し、初のAI衛星と呼ばれる「AI1」の初期設計を公開した。AI1は衛星1基当たり最大150kW級の演算性能を目標とし、翼幅は約70mに達する。これはエヌビディアの地上データセンター向け高性能AIラック1台と比較される水準だ。マスクはAI衛星が既存のスターリンク衛星より構造が単純で大量生産に有利であり、衛星間接続はスターリンクで既に使用しているレーザー通信網を活用できると述べた.
マスクが打ち出した中核競争力は電力と冷却である。地上データセンターは電力網の確保と冷却水の使用負担が増しているが、軌道上の衛星は大気や雲の影響を受けない太陽光を直接活用できる。スペースXは太陽電池セルの原価を基準にすれば、電力単価を米国の卸電力価格より大きく引き下げられると見ている。冷却も水を使う代わりに、宇宙空間へ熱を放出する放射冷却方式を活用する構想だ。
マスクは宇宙AIのコンピューティングコストが地上データセンターより低くなる時点が予想より早く来る可能性があると主張した。マスクは2027年末までに年間1GW規模のAI演算インフラを軌道に投入し、その後は毎年10倍ずつ拡大してテラワット(TW)級へ拡張するとの目標も示した。ただし自ら目標時期には不確実性がある点を認めた。
スペースXはこれを支える生産拠点としてバストロップに「ギガサット」工場を整備している。1000エーカーを超える用地で衛星と太陽光素材を垂直統合で生産し、将来的には自社AIチップの生産と大規模な衛星打ち上げまで束ねて宇宙AIインフラのエコシステムを構築する戦略だ。米連邦通信委員会(FCC)には、低軌道AI衛星最大100万基の打ち上げ承認も申請したとされる。
ただし市場の評価は割れる。AIデータセンターが電力逼迫と冷却コストの問題に直面しているのは事実だが、宇宙へサーバーを打ち上げるコストと保守の難易度が依然として過度に高いとの指摘が多い。一部研究者は、汎用AI演算を直ちに宇宙へ移すより、衛星観測データの処理や宇宙網内部のエッジコンピューティングのように地上への伝送負担を減らす限定的な用途が先に現実化する可能性が大きいとみる。
スペースXの投資説明書もこうしたリスクを隠さなかった。会社は宇宙データセンター事業が検証されていない技術と高い複雑性を含んでおり、商業的成果を出せない可能性があると明らかにした。マスクの説明は結局この警告文への正面からの反論である。
スペースXのIPOにおける投資ポイントがロケットとスターリンクを越えてAIインフラへ拡張される中、宇宙データセンターは会社の将来価値を左右する最大の勝負手であり、最も議論を呼ぶ変数として浮上した。