「ファウンドリー(半導体受託生産)の復活」を進めるインテルが、先端パッケージング技術であるEMIB(Embedded Multi-die Interconnect Bridge)関連の装置発注を本格化し、生産能力の拡大に乗り出した。通常、半導体装置の発注は顧客の確保を前提とする場合が多く、半導体業界ではインテルがEMIBベースのファウンドリー工程で大型顧客を確保したとの評価が出ている。
8日、台湾の財訊快報などの海外報道と業界情報を総合すると、インテルは最近、米国オレゴンとベトナム工場のEMIB生産能力拡大に向けて台湾企業に相当規模の装置を発注した。オレゴン工場は中核の工程開発・製造拠点とされ、ベトナム工場は組立・テスト中心の後工程生産施設として運営されている。
インテルが装置を発注した先としては、▲レーザー・プラズマ装置メーカーのE&Rエンジニアリング(E&R Engineering)▲先端パッケージング・プリント配線板(PCB)工程装置メーカーのCサン・マニュファクチャリング(C Sun Manufacturing)▲熱・空圧工程装置メーカーのエイブルプリント・テクノロジー(AblePrint Technology)などが取り沙汰されている。これらの企業は今下半期からインテルに装置を本格的に供給する見通しだという。
インテル・ファウンドリーが確保したEMIBベースのパッケージング大型顧客としては、グーグルとMeta(メタ)が挙げられる。グーグルは2027年下半期の投入を目標に開発中の自社人工知能(AI)チップ、テンソル処理装置(TPU)v8eにEMIBを適用する方針を事実上確定したとの分析が出ている。Meta(メタ)もAI学習・推論アクセラレーターMTIAの一部次世代製品でEMIB導入を検討しているとされる。このほか、マーベルやメディアテックなどもEMIB採用を検討している。
EMIBはインテルが開発した2.5次元(D)パッケージング技術である。中央処理装置(CPU)・グラフィックス処理装置(GPU)・高帯域幅メモリー(HBM)など、異なる工程で生産された複数のチップを1つのパッケージとして高速接続する工程を指す。インテルは2017年から自社のサーバー・ネットワーク・高性能コンピューティング(HPC)製品にEMIBを適用してきた。多様な最適化ノウハウを積み上げたという意味である。ジェフ・フーGF証券アナリストは最近のリポートで、インテルのEMIBパッケージング歩留まりが最大90%水準に達したと推定した。
AIチップメーカーがインテルのEMIB工程に注目している背景として「TSMCのボトルネック」が挙げられる。TSMCはCoWoS(Chip on Wafer on Substrate)など先端パッケージング生産ラインの相当部分をエヌビディアのGPUに優先配分している。自社AIチップを開発中のビッグテックは代替パッケージングのサプライチェーンを探しており、この過程でCoWoSに対応する技術であるインテルのEMIBが候補として浮上しているとの分析が出ている。
TSMCのCoWoSは、複数のチップを接続するためにチップの下に広いシリコン板(インターポーザー)を敷く方式である。これに対しインテルのEMIBは、全体の板を使わず、チップ間の必要な部分だけを小さなシリコンの橋で接続する。構造が比較的単純で、大型パッケージでコストとスペースの負担を抑えられる利点がある。
デイブ・ジンスナーインテル最高財務責任者(CFO)は今期の決算カンファレンスコールで「インテル・ファウンドリーが今四半期中に先端パッケージング・サービスの受注残(Backlog)を追加で確保した」と述べ、「マレーシア後工程施設の多年にわたる拡張は、2027年から売上に転換し始める確定需要を支えるためだ」と語った。今年の設備投資見通しを従来より引き上げたことについては「確定需要を支えるための生産能力投資が増えた点を反映した」と説明した。先にインテルは3月のモルガン・スタンレー技術・メディア・通信(TMT)カンファレンスで先端パッケージング事業に関し、当初は数億ドル規模の受注を見込んでいたが、現在は年間数十億ドル規模の売上につながり得る契約の締結に近づいていると明らかにした経緯がある。
インテルは次世代AIパッケージングの競争力を高めるため、EMIBにガラス基板を組み合わせる技術開発にも注力している。現在広く使用されているプラスチック材(有機)のパッケージング基板は、大型化するほど反りが生じ、半導体の性能低下を招く。ガラス基板は既存の有機素材に比べヤング率(modulus・材料の強度と弾性を示す物理量)が高く、サイズをより拡大できる。さらに表面平坦度が高く、低い熱膨張係数を持つため、冷却と加熱を繰り返すAIサーバーに搭載されても変形しない。ガラス基板とEMIB技術が結合すれば、超大型AIパッケージへの対応力を高められる。
インテルは2021年、設計と製造を網羅する往年の総合半導体企業(IDM)の地位を取り戻すとして「IDM 2.0」戦略を発表した。2024年2月には「インテル・ファウンドリー」を前面に掲げ、単なるウエハー受託生産ではなく、工程・パッケージング・チップレット・ソフトウエア生態系を束ねた「システム・ファウンドリー」事業で成果を上げると発表した。
先月、イーロン・マスクテスラ最高経営責任者(CEO)がAI半導体生産拠点「テラファブ」プロジェクトにインテルの14A(1.4ナノ級)工程導入を正式発表した。アップルもインテルとのファウンドリー協業を協議したと伝わり、「IDM 2.0」戦略が具体化しているとの分析が出ている。
インテルは先月、ハン・スンフンサムスン電子副社長をファウンドリー部門上級副社長(SVP)兼ゼネラルマネジャーとして迎えるなど、人材面の競争力強化も進めている。インテルに移ったハン前副社長はサムスン電子に30年間在籍した人物で、直近までファウンドリー営業業務を総括した。
半導体業界関係者は「先端パッケージングのラインは、チップの構成、メモリーの接続方式、基板設計などと連動しており、顧客ボリュームと製品仕様が明確でなければ大規模な装置発注や設備拡張を確定しにくい構造だ」と述べ、「インテルがEMIB装置の発注を入れたのは、ファウンドリー顧客の確保に加え、足元で需要が急増した自社チップ生産に対応する狙いがあると解釈される」と語った。