米国国際貿易委員会（ITC）がサムスン電子の高帯域幅メモリー（HBM）とDDR5などメモリー半導体を対象に特許侵害の有無の調査に着手した。「特許怪物」と呼ばれる米半導体企業ネットリストが米関税法337条違反を主張して提訴したことによるものだ。
31日、業界によると、ITCは29日（現地時間）にサムスン電子のHBM、DDR5メモリー半導体について米関税法337条違反の有無を調査すると発表した。調査対象にはサムスン電子とサムスン電子米国法人、サムスン電子半導体米国法人に加え、顧客企業であるグーグルも含まれた。
ネットリストは9月30日に訴訟を提起した。被調査対象の法人はサムスン電子とサムスン電子アメリカ、サムスン電子半導体米国法人であり、顧客企業であるグーグルも調査対象名簿に名を連ねた。
ネットリストはサムスン電子のHBMとDDR5メモリー半導体が自社のDRAM関連特許を侵害したとして、ITCに限定的輸入排除命令と特許侵害差止命令を求めた。こうした措置が受け入れられた場合、サムスン電子のメモリー半導体はもちろん、これを搭載したサーバー完成品の米国内輸入・販売が制限される可能性がある。
今回の調査にはメモリーを使用するサーバー・コンピューティングシステムまで含まれる可能性も取り沙汰されている。これにより調査範囲がメモリー単体を超えシステム全般へ拡大するとの観測が出ている。業界では、ネットリストがサムスン電子への圧力の度合いを高めるため、顧客企業であるグーグルまで調査対象に含めたとみている。
業界は今回のITC調査がサムスン電子の次世代HBM事業を巡る不確実性を高める可能性に注目している。サムスン電子はエヌビディアの次世代AIアクセラレーター「ルービン」とグーグルのテンソル処理装置（TPU）にHBM4を供給することを推進中である。
ただし今回の調査でサムスン電子の米国内向けメモリー輸出が実際に遮断される可能性は大きくないとの見方が優勢だ。米国内の主要ビッグテック企業の相当数がサムスン電子からメモリーの供給を受けており、ITCが広範な輸入禁止措置を下すのは容易ではないとの分析だ。
ITCも「調査開始は事件の実体に対する判断を意味しない」と明らかにした。
サムスン電子も「ネットリストとの特許紛争はすでに進行中の訴訟の延長線上にある事案だ」とし「ITCの調査着手は訴訟が提起される際に通例的に行われる手続きだ」と述べた。ただし具体的な見解については言及を控えた。
ネットリストはサムスン電子と2020年から特許侵害を巡る訴訟を続けている。SKハイニックスもネットリストと長期間紛争を繰り広げた末、2021年にロイヤルティ支払い合意で紛争を終結させた経緯がある。