「AI基本法の規制対象である高影響人工知能（AI）を（施行令を通じて）エネルギー、保健・医療など10領域に規定している。政府は高影響AIに対する法条項を厳格に解釈し、最小限の規制にとどめる方針だ。」
科学技術情報通信部は24日、ソウル中区の韓国知能情報社会振興院（NIA）ソウル事務所で開かれた「AI基本法施行令施行対備説明会」でこう明らかにした。韓国は2025年1月22日にAI基本法を施行する予定で、世界初のAI法施行国家となる。
イ・ジンス科学技術情報通信部人工知能政策局長は「最小限の規制のため少なくとも1年以上の規制猶予を行うと繰り返し強調してきた」と述べ、「少なくとも1年は欧州連合（EU）や海外動向、グローバルな技術進展の速度を考慮したものだ。猶予期間を柔軟に延長する案も開いている」と語った。
高影響AI事業者に分類されれば強度の高い規制を受ける。AI基本法第34条により、高影響AI事業者はリスク管理方策の策定、結果導出基準の説明義務、人による管理・監督、関連記録の文書化と保管などの義務履行の対象となる。中小企業やスタートアップの場合、高影響AI事業者に分類されると負担が大きくならざるを得ない。政府が高影響AI事業者に対する解釈を厳格にし、最小限の規制のみを予告した背景である。
キム・グクヒョン科学技術情報通信部人工知能安全信頼政策課長は「高影響AIに対する基準は固定的なものではなく、技術進展や社会的動向・流れに応じて今後検討すべき事項だと考える」とし、「関係省庁と産業界の意見を反映して具体化していき、人工知能安全信頼支援デスク（仮称）を通じて意見を収集し、関連内容を共有していく」と述べた。
人工知能安全信頼支援デスクは、科学技術情報通信部がAI基本法施行後の混乱を抑えるための支援策の一環として設置する予定である。キム課長は「法令制定作業に参加したNIA、韓国情報通信技術協会（TTA）などの機関と法律専門家が合わせてデスクの形で運営する予定だ」とし、「ホームページや質疑応答（FAQ）などを通じて企業からの問い合わせに対応する」と述べた。
これまで業界はAI基本法の施行に関連し、高影響AIに対する曖昧な定義を問題視してきた。AI基本法第2条では高影響AIを「人の生命、身体の安全および基本権に重大な影響を与えるか、または危険を招くおそれのあるAIシステム」と規定している。政府は施行令により、エネルギー、保健・医療、交通、教育など10の特定領域で重大かつ危険な影響を及ぼし得る場合を基準とした。しかし、どこまでが重大な影響なのか、何が危険を招くおそれに当たるのか基準が曖昧だとの批判は少なくない。EUがAIを「低リスク」から「限定的リスク」「高リスク」「受容不可能」の4つに細分し規制する法案を作ったのとは対照的である。
科学技術情報通信部は高影響AI事業者かどうかは事業者からの要請があれば30日以内に回答すると明らかにした。シム・ジソプ科学技術情報通信部人工知能安全信頼政策課書記官は「企業が自社サービスが高影響AIか確認してほしいと政府に要請する場合、科学技術情報通信部は最大30日以内に答える」と述べ、「当該サービスや商品があまりに複雑で判断が難しい場合は30日延長できるが、60日までだと産業界に負担となり得るため、書面で延長理由などについて具体的に回答するようにする」と語った。さらに「高影響AI事業者に分類された場合に負う義務についても案内する」と付け加えた。
高影響AI事業者に分類されたとしても、これに対する最終判断権限は裁判所にあるとの見解も出た。法務法人(有限)和友のヨ・ヒョンドン弁護士は「科学技術情報通信部が高影響AI事業者かどうかについて回答すべき義務はあるが（紛争発生時には）これに対する最終判断は裁判所がすべきだ」と述べた。
また、科学技術情報通信部はAI基本法第32条により、安全性確保義務を負うAIを「累積演算量が10の26乗フロップス（FLOPs）以上のAI」として対象を絞った。国内でこの規模の演算量を記録したAIファウンデーションモデルはないとされる。事実上、韓国企業は安全性確保義務の適用対象から外れる可能性がある。しかし業界では、DeepSeek（ディープシーク）の事例のように技術進展により演算量の少ない中小型AIモデルでも性能が向上し得るため、今後の施行令改正を通じて韓国企業も安全性確保義務の適用対象に指定される可能性を排除していない。
シム・ジソプ書記官は「現時点では累積演算量の数値緩和や対象拡大は考慮していない」としつつ、「ただし累積演算量以外の他の合理的な判断方法が世界的な標準として確定すれば、韓国の法律にも反映することを検討する予定だ」と述べた。