サムスン電子が約2年にわたり性能確保に苦戦してきた第5世代高帯域幅メモリー(HBM)HBM3Eのうち、最も高仕様である12段製品の性能と歩留まりを安定化し、供給量を拡大する見通しだと伝わった。当初、海外の主要投資銀行や市場調査会社は、グーグルの次世代テンソル処理装置(TPU)向けにSKハイニックスがHBM3E 12段を独占供給するか、または主力サプライヤーになると見立てていた。直近で状況が急変し、サムスン電子の比重が拡大する方向で議論が進んでいるとされる。
15日、業界によれば、グーグルのTPU設計を代行しているブロードコムに対し、サムスン電子のHBM3E 12段製品の供給比重が拡大する見通しだ。グーグルは最新の第7世代TPUにサムスン電子、SKハイニックスのHBM3E 8段製品を搭載しており、これより一段性能を高めた改良型第7世代(TPU 7E)にはHBM3E 12段を装着する予定である。現在、量産品のテストを進めており、両社とも性能面ではほぼ同水準に到達したとされる。
サムスン電子のHBM3E 12段製品は、この1年あまり業界最大の買い手であるエヌビディアの品質テストの壁を越えられなかった。これはサムスン電子が世界HBM市場でSKハイニックスにずっと後れを取った要因でもある。サムスン電子はHBM3E製品の性能を引き上げるため、ファン・サンジュンDRAM開発室長の主導でHBMに用いられるDRAM(D1a)を再設計するほどこの分野に注力してきており、今年に入りブロードコムとの協業を通じて性能を安定化したとされる。
HBM3E 8段製品と12段製品は、製品収益性と性能の面で大きな差がある。サムスンの幹部は「過去、サムスン電子がエヌビディアのHBM製品認証に苦労していた時期に、サムスン電子の経営陣がジェンスン・フアン最高経営責任者(CEO)を訪ね、主力サプライヤーの地位を要請したところ、これに対しフアンCEOは『最優先のベンダーを望むなら、最新HBM製品を12段積層構造で実装してほしい』と答えた」と述べ、「それだけHBM3E 12段製品は、グラフィックス処理装置(GPU)の性能向上と大規模言語モデル(LLM)駆動に重要な要素である」と説明した。
サムスン電子がHBM3E 12段の性能と歩留まりを安定化できた背景の一つとして、グーグルのTPU設計を代行しているブロードコムとのパートナーシップが寄与したとの分析がある。ブロードコムはエヌビディアよりもメモリー半導体企業に親和的な姿勢を取っている。AI半導体の性能を極限まで引き上げるため、サムスン電子、SKハイニックスに継続的な再設計と性能改善を求めるエヌビディアとは異なり、ブロードコムは顧客の要求仕様に合わせて自社でシステム・オン・チップ(SoC)を設計するため、品質テストの負担も小さい。
ブロードコムに在籍中のあるエンジニアは「ブロードコムをエヌビディアの対抗馬と見る業界の視線があるが、半分は誤りだ。ブロードコムの企業アイデンティティは『デザインハウス』に近く、グーグルのような顧客が望むスペックのチップを最も合理的なコストで設計しつつ、最大限利益を残すビジネスをする」と語り、「これが、ブロードコムが内部的により安い値段で多くの数量を供給できるサムスンを好む理由であり、同時にSKハイニックスに対する価格交渉力も引き上げられる秘訣だ」と説明した。
エヌビディアのGPU価格と運用コストが天井知らずに高騰し、ビッグテックはエヌビディア依存度を下げる投資により多くの費用を割き始めた。これを受け、ブロードコムは今年からTPUのようなカスタムチップの設計・製造コスト削減のため、営業利益率が70%に達するほど高水準のHBM価格を設定したSKハイニックスの代わりに、サムスン電子を戦略的パートナーとしてきた。
一方、サムスン電子はHBM3E市場でSKハイニックスに対する劣勢を克服するため、性能と価格交渉に柔軟に対応したとされる。特にサムスン電子は、SKハイニックスが納品中のHBM3E製品より供給単価を約20%引き下げたと伝わった。