# 米国のテスラが9月8日(以下現地時間)、大容量バッテリーエネルギー貯蔵システム(BESS)である「メガブロック」を公開した。来年から発売されるメガブロックは、5MWh(メガワット時)の電力を供給する20フィートコンテナサイズのバッテリー(メガパック3)を複数連結して作る。会社側は20日ほどで最大1GWh(ギガワット時)の貯蔵容量を確保できると明らかにした。テスラ エナジーおよび充電部門の副社長であるマイク・スナイダーは「1カ月もかからずに40万世帯に電力を供給できる」と述べた。
# 中国の比亜迪(BYD)も同月21日、メガブロックと競合する次世代大容量BESSである「ハオハン(浩瀚)」を公開した。ハオハンは15MWhの電力を供給できる。同社は先に2月、サウジアラビアの電力会社(SEC)と12.5GWh容量のエネルギー貯蔵設備の供給契約を締結した。先行して進めた2.6GWhプロジェクトを加えると総規模は15.1GWhとなり、これまでに構築されたエネルギー貯蔵設備の中で最大である。
電気自動車のキャズム(chasm・革新製品が大衆化する前に一時的に需要が停滞すること)で一時足踏みしていたバッテリー産業が、エネルギー貯蔵システム(ESS)で新たな成長機会を見いだしていることを示す事例である。世界の系統用バッテリー貯蔵容量(累計ベース)は2020〜2024年に12GWhから176GWhへ急増し、年平均成長率(CAGR)95%を記録した。ブルームバーグNEFによると、世界のBESSの今年の新規設置容量は2024年比23%増の92GWhとなり、昨年に続き過去最高を更新する見通しだ。電気自動車用バッテリーに勝負をかけていた韓国のバッテリー3社(LGエナジーソリューション・SKオン・サムスンSDI)は、電気自動車のキャズムと中国の追い上げというリスクが高まる中で、ESS向けバッテリーが新たな機会になると期待している。LGエナジーソリューションが7月にテスラと年間20GWh規模のESS供給契約を結んだのが代表的だ。電気自動車を製造するテスラは、太陽光発電システムとESSを一体で販売する民間発電パッケージの首位事業者でもある。「エコノミーチョソン」は専門家インタビューを通じ、エネルギー貯蔵革命を牽引するBESS市場の高成長の背景と展望を分析した。
トランプでも止められなかったエネルギー貯蔵革命
「2035年に世界のBESS設置容量が累計2TW(テラワット)に到達し、2025年の8倍水準になると予想する。」イシュー・キクマ ブルームバーグNEFアナリストの予測は、「ギガストレージ」「メガバッテリー」と呼ばれるBESS全盛期が到来していることを示す。米国のドナルド・トランプ政権が電気自動車や太陽光発電など再生可能エネルギーの拡大にブレーキをかけているが、エネルギー貯蔵革命は加速すると見込まれる。電気自動車のキャズムと中国発のバッテリー過剰生産がもたらしたバッテリー価格の急落、太陽光・風力発電など変動性の大きい再生可能エネルギーの浸透率急騰、人工知能(AI)データセンター向け電力需要の急増、新エネルギー貯蔵の技術革新などがエネルギー貯蔵革命を牽引する要因である。
リチウムイオンバッテリーパック価格は2013年にkWh(キロワット時)当たり806ドルから2024年に115ドルまで下落した。系統連系で使うバッテリー価格が、歴史的な底値にある電気自動車用バッテリー価格に近づいている。自然の変動が発電量を左右する太陽光・風力発電の比率が上がるにつれ、BESS需要も連動して拡大している。ドイツの環境専門コンサルティング会社アデルフィのソフィア・レアンドラ・ビンツ コンサルタントは「BESSは太陽光・風力発電比率の増加に伴い、電力システムを柔軟で安定的かつレジリエントに運用させる最も適切な装置だ」と語った。実際、国際再生可能エネルギー機関(IRENA)によると、世界のESSが貯蔵する電力のうち再生可能エネルギーの比率が67%を占めた。送電網増強の遅れに伴う発電と送電網の不均衡問題の解決策としてもBESSが浮上する。国際エネルギー機関(IEA)が11月に発表した「世界エネルギー見通し2025」によると、送電網投資は年4000億ドル水準で停滞する一方、太陽光を中心とした発電投資は1兆ドルに達した。
ビッグテック(大手IT企業)のAIデータセンター設立競争もBESS市場拡大に一役買っている。多数のGPU(グラフィックス処理装置)を使用するAIデータセンターは、一般的なデータセンターより2〜3倍多くの電力を消費する。2025年、AIデータセンターの増加により北米だけで8〜12%(15〜20GW)、アジア・太平洋地域では10〜15%(25〜30GW)の追加電力が要求された。マイクロソフト(MS)はスウェーデンにある自社データセンターにBESSを使用している。Meta(メタ)もアリゾナ州にある自社データセンターに太陽光発電とBESSを併設した。
テスラのメガブロックとBYDのハオハンなど、技術革新を遂げた大容量バッテリー製品が設置速度と効率性を大きく高めている。安価で火災リスクが小さいという理由から、リチウム系バッテリーの代替として浮上するナトリウムイオン電池の開発加速もBESSの成長を下支えする。
中国と米国、世界市場の70%
世界のBESS市場は中国と米国が70%を占めている。中国は世界のバッテリー4個のうち3個を生産する世界最大のバッテリー生産国であり、世界最大のBESS市場である。中国政府は再生可能エネルギー転換においてESSの役割を重視する。中国国家発展改革委員会(NDRC)は9月、BESSを活用し国内生産と導入を支援する「2024〜2027年 新電力システム開発加速戦略」を発表した。2027年まで約2500億元(約52兆ウォン)を投資し、BESS容量を180GWに拡大する計画だ。これは現在の貯蔵容量(95GW)のほぼ2倍に達する規模である。米国でもカリフォルニア州・テキサス州などを中心にBESS市場が急成長している。2020年8月に大規模停電を経験したカリフォルニア州のバッテリー貯蔵容量は、その後3倍以上に増え、13GWに達する。2027年までに8.6GWを増設する予定だ。昨年4月30日には数分間で7046MWの電力を生産したが、これは大型原発7基の発電量に匹敵する規模である。S&Pグローバルによると、今年上半期に米国内のバッテリー貯蔵容量が63%急増した。
欧州連合(EU)と英国、オーストラリア、日本、カナダ、サウジアラビアなども、政府の支援政策、公共サービス事業者の調達、電力市場の力学に支えられ、設備導入が大きく伸びている地域である。ファイナンシャル・タイムズ(FT)によると、バッテリーを接続して構成する「ギガ級バッテリー農場」は2022年の世界1件から今年は42件に増えた。今後2年以内に250件が追加される予定だ。中国が多数の案件を主導している。BYDがサウジで建設する12.5GWh規模のエネルギー貯蔵プロジェクトのほか、CATLが2027年稼働を目標にアラブ首長国連邦(UAE)アブダビで19GWhの貯蔵容量を備えた太陽光発電貯蔵プロジェクトを進めている。
韓国のESS、K-バッテリーの新成長の柱に期待
グローバルなバッテリー調査会社ロモーションによると、今年上半期のBESSグローバルトップ5を見ると、2位のテスラ(米国)を除き、サングロー、CATL、CRRC、BYDなどすべて中国企業だ。電気自動車用バッテリーで先頭グループを形成していたが中国企業に押された韓国は、ESS向けバッテリーでも中国企業に追い抜かれた。かつてESSの新規構築で世界1位だったK-バッテリーは、2017〜2019年に火災が相次いで発生すると、ESS建設ブームがしぼみ、萎縮した。
しかし今年、政府が大規模ESS団地を造成する政策を推進し、再び活気づいている。全北・全南・江原・慶北・済州に合計540MW規模のESSを設置する事業で、総額1兆ウォンが投じられる。LGエナジーソリューションとSKオンはエネルギー密度が相対的に低く火災リスクが小さいリン酸鉄リチウム(LFP)を、サムスンSDIはニッケル・コバルト・マンガンの三元系(NCM)方式を掲げて事業に参入している。
米中対立の深刻化も韓国のESSに機会を提供する。テスラはCATLのESS用バッテリーの納入を受けてきたが、米国政府の中国製バッテリー関税引き上げ(今年40.9%から来年58.4%)は、米国内に工場を持つ非中国系企業であるLGエナジーソリューション、サムスンSDIにとって機会になると見込まれる。韓国政府は世界のESSシェアを2025年の15%から2036年に35%へ引き上げる目標を定めた。BESSは火災リスクと使用済みバッテリー処理、中国のような特定国に依存するサプライチェーンリスク、短い寿命など課題も少なくない。長寿命ESS技術と火災安全性、再使用バッテリーの寿命予測技術などが求められる。再生可能エネルギー比率が高まるにつれ、余剰再生エネルギーを貯蔵するには4〜6時間以上の長時間でエネルギーを出力できなければならず、AIデータセンターに電力を供給するには12時間以上の長時間ESSが必要になるとの見方も出ている。